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2-69 おや?

 その『何もないような空間』にドデンっと、巨大な、いつも湧くような感じの木製の扉が鎮座ましていた。


 山肌の雪原に聳える扉が単体で存在しているのだ。

 この扉め、とうとう張り付ける背景すら必要としなくなったか。


 そもそも、このサイズだと設置場所にも困るしな。


「マジかよ、こりゃあ一人で来ちゃまずかったかな。

 シリウス達よ、全員散開しろ」


 狼達は言われるか言われないかの刹那に散らばった。

 おそらく中から出てくるのは。


 それは、とてつもなく邪悪な何かを発していた。

 あれで本人は哭いているつもりなのかもしれない。


 それは、なんていうか、あの先輩の邪気に満ちた作品を聴覚で受け止めているかのような、そのような不快感。


 霊獣たる狼達は皆、無茶苦茶に不快そうな顔をしていた。

 俺は先輩の作品である『アレ』で慣れていたせいなのか、唇の端を歪めるに留めた。


 こいつの波動なんか、大神殿にいる姐御のところまで届いているのじゃないか。


 へたすると大神殿あたりでもこいつのせいで騒ぎになっているのかもしれない。

 まだ奴は扉から出きってはいない。


「シリウス20、あの扉の中へ入れるか?」

「グルウ」


「ちゃんと自力で出てこられそう?」

「ウォン」


「行け、様子を見てこい。

 もし敵がいなくて子供達がいるようなら一緒にいてやってくれ。


 敵がいれば、無理をせずに脱出してこい。

 子供を攫った奴とは別の敵が、中にいるかもしれん」


「ウォン」


 もし、子供達が中にいるのなら、こいつを倒せば出てこられるかも。


 だが様子がさっぱりわからん。

 少なくとも、こいつが攫ったのではあるまい。

 その図体では、さすがに無理がある。


「リクル、あの中に攫われた人達がいるみたいよ。

 他に何かが複数いる。

 かなりの数」


 ルミナスが扉の中の気配を教えてくれる。

 いたか。


 しかし、この聖山の天辺近くにこのような物が巣食っているなど、世も末だぜ。


「わかった。

 ではシリウス隊、14から28の十五頭は扉の中へ。


 中に敵がいて倒せるようなら倒して人質を救え。

 残りは俺と一緒にあれと戦う」


「ああ、あちきもちょっと行ってくるわいな。

 あちきらは割と自由に出入りできそう。

 あれ、大きいけど他の扉とそう性質は変わらない感じだわね」


「そうか。

 じゃあグランディア、頼んだ。


 折を見て様子を報せてくれ。

 もし危険なようだったら、あの子達も一旦外へ」


「任しときー」


 うちの面子がひょいひょいと中へ入っていくが、奴は気にした様子もない。

 まあ気にしたって、あいつらを止めるには図体がでかすぎるだろうな。


「なあ、ルミナス。

 あいつってさ、親蜘蛛?」


「さあ、どうなのかなあ。

 昔、セラシアと一緒に戦った時には、こんな凄い奴は見た事がないかなあ。


 本命現る?

 帰ったらセラシアにでも訊いてみれば」


「やれやれ。

 もう一頭、姐御のところへお使いに出すか?」


「どうだろう。

 リナが行ってくれているから、そのうち応援が来るんじゃないの」


「今ならリクルが一人でも結構やれるんじゃない」


「だといいがなあ」


 そもそも姐御達なんか、修行だからそれくらい一人でやれとか言われかねんしなあ。

 先輩は喜んで飛んでくると思うのだがね。


 目の前にいた奴は、図体がでかすぎるので自分の扉から出てくるのも苦労している、超LLサイズのラスターだった。


 LLLLLLLLLLサイズくらいかなあ。


 いわゆる10Lサイズって奴だ。

 人間でそんな奴がいたら怖いわ。


 もうちょっと大きめに扉を作ればいいのに、もしかしてこの扉って規格ごとにサイズが決まっているのか⁇


 こいつは普通に出入りしようとすると、あのドラゴナイトがいたコンロンの扉に入った時のターワンみたいな感じになるよな。


 こいつは足まで入れるならざっと四十メートルサイズっていうところか。

 ノーマルラスターの十倍見当だな。


「やるか。

 足止めを考えるとグランディアがいないのが痛いが、せっかくの雪と氷の舞台なんだ。


『氷雪のアイドル・クールビューティ・フリージア』様、奴の足を止めてくれ。


『蒼穹のアイドル・ライトリー・ウインディア』様、俺の飛行支援と呼吸関係を頼む。


『精霊界のアイドル・グレイテスト・フレイア』様は俺の暖房を頼んだ。

 飛び回ると滅茶苦茶に寒そうだ」



「「「オッケー!」」」


「あたしは?」


「世界のアイドル、スパークル・ルミナス様は遊撃で頼む。

 あいつらは精霊光に弱いみたいからな。

 光の精霊の真骨頂を見せてやってくれよ。


 あと場合によっては扉方面を支援してやってくれ。

 判断は任す」


「了解」


「では雪山パーティと洒落込むか。

 パーティはパーティでも、登山パーティだけどな。


 残念だけど先輩は間に合いそうもないな。

 こんな奴は先輩に押し付けたい気持ちでいっぱいだぜ。


 この蜘蛛をこの山から下に降ろす訳にはいかんのだし」



 俺はスキルを発動していく。

 スキル発動数制限外スキル【マグナム・ルーレット】は六の出目。


【祈りの力×Ⅹ】【神々の祝福】【スキル封印】【斬撃強化百倍】と続く。


「他の人のスキルは借りられないの」


「この雪山だと、それもどうかと思ってなあ。

 あんまり派手な事をやると、雪崩の心配がな。


 まずは俺の斬撃を試す。

 新装備スキル・マグマムブースターもあるし」



 鍛えに鍛えた今の俺の身体に加え、【マグナム・ルーレット出目6】【攻撃力補正×2】【全能力×10】【斬撃強化百倍】、そしてレバレッジ15.0とスキル・マグナムブースターで二倍の、しめて三十六万倍の斬撃力、それがブースト二倍とインパクト二倍の槍の効果で百四十四万倍の斬撃効果となる。


「超強烈な斬撃の方がまずくない……⁇」


「どれを選んでも結局は難しいんだよなあ。

 よし、一通り攻めてから駄目だったら、切れるようならそっと切ろう」


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