2-60 今後の予定
その後も、とにかく宝箱は湧いてきた。
夕食まで、見事なまでの宝箱拾いの時間だ。
先輩は珍しくセンチになっていたようなので、狩りがなくても文句を言っていなかった。
「いやあ、宝箱が湧きに湧きましたね」
俺は他人事のように軽い感想を述べておいた。
あたりには、まだダンジョンに吸収され終わっていない宝箱の残骸がびっしりだった。
あれからまたお宝も良く湧いた。
リナの大好きな収納もいくつか出たが、全部見事なまでに無限収納なのであげるわけにもいかない。
これはやたらと出せないため、特別に大神殿を通して販売に回す事になった。
さぞかし、オークションが賑わう事だろう。
マイアなどは、大司祭からそれを一つ賜っていた。
だから何者なのだ、あのお姉さんは。
大司祭からの信頼が半端ないぞ。
案外と親子だったりして。
そして何故か精霊用の装備まで出てきてしまったので、連中が大喜びだ。
殆どステージ衣装みたいなデザインなのに、かなりの防御力を誇っていたし、精霊が使える魔法の武器まで付属していた。
「まったく有り得ん事態だ。
なんというか、このダンジョンが異様に活性化しておるようだな」
「その割に魔物と、あまりエンカウントしないのよね。
蜘蛛と出会う方が多いくらいだし」
そう、特に上の方にいるから出て来た魔物も雑魚ばっかりだし、俺は宝箱を沸かせる係なので、相変わらず一回も魔物と戦っていなかった。
まあアンデッド系って俺もあまり好きじゃないんですけど。
よく出るのが歩くミイラに骸骨にレイスとかだな。
魔物の魔道士であるレイスの放つ魔法はコピーさせてもらったのだが、それをスキルとして習得するために試し打ちしようとすると何故か魔物が出てこないので、その都度通路に向けてぶっぱなして無理やりに習得した。
「もしかしたら蜘蛛が魔物を食っているのかもしれんなあ」
「それにマイアが強烈に邪気を祓っていたからな。
あれは只者ではなかったぞ」
マロウスったら、またそういう事を言って。
確かにあの人は強者だったけどなあ。
それよりも、へたすると俺のそっち系のスキルがまた勝手に湧きそう!
「いや、むしろ魔物が湧くためのエネルギーを、宝箱・扉・蜘蛛なんかが食ってしまっているんじゃないのかな。
俺が宝箱を沸かせまくっているから、余計に魔物が出ないんじゃ」
「なるほど、リソースの問題という事か」
「へえ、リクルが宝箱を沸かしまくったら蜘蛛まで湧かなくなったりして」
「いや、さすがにそれはなかろう。
そうなると、さらにダンジョンが活性化して、ラスターが湧くだけだろうからな」
まあ、今欲しいのは魔物じゃなくて金目の物なので、それでもいいのかな。
「そういや、邪神が復活する前の予兆は混沌のようで、何が起こるかわからないような事を言っていたよね」
「そうじゃ。
今のところは、さほど報告はない。
遺跡で発見される武具・溢れる宝箱・扉・蜘蛛、コントンと不安要素には事欠かぬし、他にも何かが起きておるやしれぬのだがな」
「邪神の信奉者は?」
いるという触れ込みのそいつらの姿が、まったく見えないんだよなあ。
今のところそれっぽいような、はっきりとした騒ぎは最初の時のドラゴン襲来くらいなのか。
「奴らは地下に潜って活動しておる。
はっきりとした予兆があれば動き出すのだろうが、連中も我々同様に測りかねておるのだろう。
まあドラゴンの騒ぎなどはあった訳なのだが」
そしてバニッシュが言いにくそうに伝えてくれる。
「ああ、リクル。
あれも当局が捜索中じゃ。
これは言い辛い話なのじゃが、後ろ暗い連中をここの街に入れてしまっておるのも、そうしておくと連中の尻尾を掴みやすいという事もあってな。
たまに他所の弁えておらん治安当局の連中が潜入してきてのう」
「マジかよ。
あれって、そういう話だったの⁉
ねえ姐御、ところで、これから俺達どうするの」
「そうだな。
まだ異変が収まった訳ではないので、様子見というかいろいろと見届けねばならん」
当分、ここに居座る事になるわけか。
村にはいつ里帰り出来るのか。
「うわあ、長丁場になりそうだなあ」
「ああ。
それに今は聖教国も大変な時期だ。
出来れば民を安心させるために封印の大祭をやってしまっておきたいのだが、さすがに準備的に難しいかとも思う。
まあ、しばらくはここから動けぬ。
バニッシュ導師も聖教国から頼まれた仕事が山積みだしのう」




