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どうしてこうなった!?  作者: ねこまたのしっぽ
10/17

◇10◇◇建前って大事だよね!

◇◇◇◇





気分はウキウキ!

だってカレー祭りだよ!!

何種類作ろうかなぁ?

好みも有るし。

グリーンカレー1種類は作りたいな。

後今ムルギーカレー作りたい気分。

他に何作ろうかなぁ?

残念ながら、ライスはいまだに米を発見出来ないから無理だけどさ。

うん、麺類作るか?

カレーうどんでも良いかな?

スパ系……いや、いっその事ニョッキもどきでも作るか?

夢が広がるね!!

厨房で貰ったハーブ類に輸入品の香辛料はまだまだ実験料理の製作中だけど。

粗方のモノが、代替品を確保出来たし。

食生活が大分レベルアップ出来そうだよね!


城に勤めてる人達全員分でも足りる位の大量の薬草。


種類ごとにわかるように篭に大量に盛って、思わずニマニマしちゃう。


だって嬉しいんだもん!



「……1つお訊きしたいのだが……その薬草、一体何の為に…ご所望されたのか……?」


僕の様子を不審に感じたのか、薬草の使用法をグラムに尋ねらた!

うぅ~っ!

まさか『カレー作りたいから』とは言えない、よね~。

しょうがないから、ぼかして説明するか。

『薬草類を使って新しい料理を作る』

そう聞いて、グラムは超絶珍妙な顔をした。

そして一瞬後に意味を飲み込めたのか……大魔王降臨キターッ!


「何故料理風情に貴重な薬草を使おう等と愚かな事を考えるのですか!?理解出来ません!有り得ない!!貴女はその薬草の価値を理解出来ていないのですか!?貴女はそんな子供の思い付きのお遊びで全てをムダに消費する気ですか!如何に公爵家の御方とはいえ、このような暴挙が赦されると!?」


う~ん、機関銃炸裂!

説得の道は激しく険しいなぁ~。

これ、絶対僕の話聞く気無いよね~?

口を挟む隙が全く無いもん。

グラムはこれでもかと、親の仇相手みたいに厳しい顔で捲し立ててくる。

下手うてば、薬草類を取り上げられちゃうのかな!?

それだけはイヤだ!!


唾を飛ばす勢いで……あぁ、顔恐いよ。

暫く好きなように言わせとこう。


その間に理論武装しっかり考えとこう。

そうしよう!!


大体さ、この世界ってヘタに便利に魔法とかに頼りきっているから。

色々な部分が中々発展出来ないんだろうな。


保存食もそうだった。

無いと困るのは平民の中でも最下層辺りしかいないしね。

いざ作り始めたら利便性や味を知って、みんな喜んで協力してくれる様になったけどね。


それにしても便利と不便は表裏一体。

魔法だってそうだよ。


『治癒術』や『魔法薬』は、患者に基礎体力が残っていないと効果がないから使えないらしい。

僕の時もそうだったんだよね~。

他の家族には使えたんだけど。

だからサックリ治ったんだよ、みんなはさ。


僕は、元から体力が全然足りなくて。

普通に生薬を配合した薬湯飲まされてた。

メチャクチャ苦かったんだよね。


身体の基礎体力や栄養状態が良ければ、『魔法薬』と『治癒術』のコンボで直ぐ治った筈。


その最低限の基礎体力維持の為にはやっぱり漢方の思想が1番理解り易く体現してるよね。

『医食同源』

この概念をまず、グラムに知って貰わないと!

これからも定期的に薬草を提供して貰う為にも!さぁて、論戦の準備は良いかな?

そろそろ反撃させて貰うよ!!

伊達に前世で家族の女性陣に口論ガッツリ鍛えられた訳じゃない!




「……私は『医食同源』という思想に基づいて考えているのです。」


僕はまず深呼吸を一呼吸して気分を落ち着けてから、グラムに静かに話しかけた。

捲し立てて、息を乱していた彼が呼吸を整えている間にね。

彼は僕の言葉を聞いて、鳩が豆鉄砲をくらった様な顔になった。

うん、何とか僕の言葉は届いているみたい。


しっかり真剣に彼と視線を合わせる。

まっすぐに眼を見詰めて僕は説明を続ける。




はい、『未病』やら『病気予防』なんかの、漢方の基本的概念もしっかり聴いて納得して貰わないとね!


ふふふ……。

こういう時は情けをかけたら敗けるからね!

相手の反応に心を揺らさない。

感情は鍵かけてキッチリロックだね!

ぜ~~~ったいに手は抜かないよ!





温室の前で淡々と解説してます。

冷静に話を続ける。

そっちも『機関銃』したんだから、こっちだって対抗して『立て板に水』だよ!

ついでにハーブの有用性もレクチャーかな?

アロマが精神に及ぼすであろう効能迄ガッツリとね。




ワリと長い時間を一気に説明に費やしていた。

それでもかなりザックリはしょって終える。

真剣に漢方の討論したら何年有っても時間が足りないもん。

そして、暫しの沈黙。

どうかな?

グラムの表情をそぉ~っと伺う。

内心で色々葛藤してたみたいだけど、最終的には憑き物が落ちたみたいに凶悪な表情が抜けた。



―――勝った!!




あ~恐かった!

顔めちゃくちゃ恐かったんだもん。

ホント、マジで。

チビるかと思ったよ?

思わずひきつっちゃったもんね!


ここでトドメだ!

ダメ押しダメ押し!!



「……私の考え方は間違っているでしょうか?今回の流行り病でも、庶民の皆さんは余程でない限り薬草さえ使えなかったでしょう?薬草の所蔵量が圧倒的に不足していたのですよね。薬草の栽培量は万一の事態に於いては絶対的に足りません。かといって、薬草としての名目だけで増産も出来ません。古くなり薬効が切れて大半がムダになるでしょう。でも、こうして薬草が料理に使える事が広く認知されれば……!栽培しても無駄にならないなら、他の貴族の領地でも大量栽培が始まる可能性があります。そうすれば、いざという時の備えにもなるでしょう。現在とは比較にならない量が流通する事になるのですから。もし疫病が流行した時、直ぐに安価な薬に早変わりして多くの庶民の命を救う希望になります。その状況を創り出す為に、試作品の料理を考えて提案したいのです。最初の試行段階として、私は身体を健康に保てる滋養強壮に効能を持つ料理を考えています……」


「さすがはお嬢様、素晴らしいお考えです!」


あ~、エレナも居たんだよね~。

相変わらずの全肯定乙です。

何だろう、エレナの言葉を聞いたらガッツリ何かが削れてしまった気がする……主に精神的な何かが大きく。

エレナの大感激が大袈裟過ぎてるよ。

涙が滝だよ?

そんなキラキラの瞳で見ないで~。

本音は私欲!

半分以上私欲だからぁ!


それよりもだよ!!

グラムの反応の方が気になる。

薬草の安定供給源を失くしたく無いもん。

エレナが延々と僕の讚美を続けている。

その間、グラムはじっと俯いて考え込んでいる。


何考えてる?

表情が読めない~!

最初の協力者になって欲しいけど……。

無理なのかな?


くそぅ、泣くぞ!

ここまで頭フル回転だったのに!

もう泣いてワガママ発動してやろうか!!

最終手段だって残してるんだい!

ヤケクソっていうヤツだけどね!!


「…貴女は……療養しながら、そんな事を…ずっと…考えて……いたのですか……?」


「私は仮にも公爵家の人間です。それ故に私にとって領民の生命と生活を守る事は義務なのです。今は何の権力も持たない子供でしかありませんが……。それでも、それでも……何かしら問題が起きた時に備えてより良い解決策を考えるのは、私にとって絶対に譲ってはいけない義務であり権利でもあるのです!」


よし、言い切った!

誤魔化し切れたかな?

だってカレー食べたいんだもん!

悪いか!!

絶好調で喋り尽くしたよ!

イイコト言ったっぽくなった!!

本音と建前はキッチリ使い分けないとね?





ガクリとグラムの膝が崩れる。

そのまま俯いて無言だ……。


あれ?

やり過ぎちゃった?

やっっっばぁい!!

う~~~ん……。

だ、大丈夫だよね?

ね?






「……グラム?どうかしたのですか?」


グラムは体勢を崩して黙ってしまった。

僕は慌てて呼びかける。


もしもし?

お~い!?


「……申し訳…ありません……私は…何と傲慢な…考えを……」


あれ?

泣いてる?

もしかして、泣かしちゃった??

ちょっとぉ!

勘弁してよ!!

大の男が幼女に論破されて泣かされるなよ!



ま、イイや。

締めよう。

見なかった!

僕は何も見てないからね!!

ソッコー終わらせよう!

罪悪感に口が滑る前に!


「私の考え方はまだまだ先鋭的過ぎて、理解を得るのは難しいかもしれません。だからこそ、こうして1人づつ真摯に向き合って理解を得ていくしか無いのだと思います。もし良ろしければ薬師である貴方にも是非協力して欲しいのですが……。」



グラムの前にひざまづいて、しっかり眼を見詰める。

地についているその右手をぼくの両手で握り、包み込む。

だってグラムの協力を取り付けられれば薬草採取の難関はクリアするからね。

殆どの場合は不問になるかもでしょ?




どうせ黒いよ!

真っ黒に染まっているよ!!

僕の心なんて5歳児ではあり得ない位汚れてるよ!!

私欲まみれだよ!


うぅ~っ、ちょっと涙滲んじゃった。




「……お嬢様…!私も…誠心誠意……協力させて…頂きます……!」


…恐いよ、顔。

本当に恐いよ。

涙と鼻水とズルズル。

眉間のクッキリ深い厳つい皺!

何度でもいうけどさ、顔が恐いんだよね……。


どうやら落ち着いたみたいだし、もう良いかな?

お願いしてみよう。


「……それでは、温室も案内もお願いできますか?」


「…はい……喜んで……!」



どっかの居酒屋のテンプレな応答だね!

ははは……。

キラキラした瞳で大人2人に見詰められる。


あ~、心が痛い……。




でもやっと、温室に辿り着けるか。




うん、細かい事は気にしない!

ふぅ~~っ、イイ仕事したな!!











温室まで辿り着けず……!

イクイク詐欺しちゃいましたね。



私欲にまみれた主人公……暴走が止まらない!





暇潰しに笑って貰えれば嬉しいです。






12/31第10話まで改稿しました。







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