猫にとっても非常口
子猫を見つけた瞬間、
俺様が黒猫の姿のまま、ゆっくり近寄って、
一匹ずつ鼻をくっつける。
「みぃ!」
安心したのか、嬉しそうに鳴き出した。
子猫たちは短い足をヨチヨチと動かして、
俺様黒猫のしがみつこうとしている。
「俺様…知ってる子なの?」
『……いや』
『……捨てられたな。』
…非常口は非常口たるもの…。
「俺様…連れて帰るわよ。」
こんな動くぬいぐるみ…放置なんか出来っこない。
郁は一気に3匹を抱き上げた。
まだしっかり目も開いてないような子猫達。
腕の中で必死に郁に捕まりか細い声で鳴く子猫を、
俺様黒猫は優しく見上げていた。
「猫は寝室に入れない!」
などと無駄な足掻きを郁はしていた。
でも可愛さには負ける。
一番静かで暖かい部屋
やっぱり寝室かあ
不安で仕方ないせいなのか、郁がクッションを敷いた箱に
そっと3匹を入れると、
すぐに出てこようとする。
『腹が減ってる』
…自分もだが…と思うがそれを言うほどヤボではない黒猫だった。
「まだミルクだよね?」
『そうだな』
郁は少し考え、「待ってて!!」
財布を掴むとキッチンのドアから飛び出した。
『やれやれ』
俺様は子猫と一緒にクッションに丸くなる。
子猫達は親猫を…お乳を求めて黒猫に突進する。
『おい、こらやめろ!!』
身を捩って避ける黒猫。
郁が戻ってくるまで攻防戦が続いたが、
さすがに子猫も疲れたようで大人しくなった。
俺様黒猫もウトウトしていると上から低音の声が…
「まさか隠し子猫じゃないわよね?」
『んなわけあるか!お前一筋だぞ』
…互いに真っ赤になってしまった。
郁は子猫用の哺乳瓶を取り出し
紙パックのミルクを人肌に温めて
1匹ずつ与えていく。
「俺様も手伝って」
ボヨンと音がして人型になった俺様も、
子猫にミルクを与える。
お腹がまんまるになっていく。
「可愛い~このお腹」
「少し濡れてティッシュで、肛門に刺激を与えるんだ」
「え?なんで?」
「子猫のウチは自力で排便できない」
「えーっーっ!」
言われたように刺激をすると、
「な、生暖かいのは…まさか?」
「おしっこだな」
「3、4時間おきに、ミルクと刺激を繰り返すんだ」
…人の母も偉大だが、猫の母も偉大だ。
お腹いっぱいになり、気分の安定したのか
クッションの中では、
三匹が俺様の尻尾に顔を埋めて眠っていた。
『……離れねぇな。』
「刷り込みだね。」
郁は笑った。
3匹はクッションで寄り添うように眠っている。
俺様黒猫もそっとクッションから抜け出した。
『腹減ったな』
寝る子を横に、やっと朝食にありつく二人だった。
冷めた朝食だったが、満足だった。




