第69話 忍者 VS ニンジャ
「「!?」」
「「プッ!?」」
必殺の魔力を帯びた棒手裏剣が、後衛の「魔法使い」と「破戒僧」合わせて4人の首から上を吹き飛ばした。
魔力を帯びていない棒手裏剣の方は、ダメ元で2本ともニンジャ迷人を標的としたが躱される。
俺は両手に小太刀と槌鉾を構えながら、脳内では戦局情報の修正を高速で進めていた。
…ニンジャ迷人の脅威度が想定より高い!
後衛の迷人を全滅させたことは想定通りなのだが、ニンジャ迷人は俺の奇襲に感づいたのではなく、棒手裏剣の飛来を見てから難なく躱した。
その身のこなし、見切り、いずれもただ事ではない。
今も「重戦士」どもが盾を掲げて突き進んでくる後ろで、ニンジャ迷人は俺の視界の中央にいるにも関わらず意識から外れそうになる。
幻惑歩方だろうか、信じがたい技量だ。
さりとて、今さら背を見せて生きて帰れるものでもない。
俺が必ず生きて帰る以上、死ぬのは貴様だ。
「おああああああ!」
俺は雄叫びを上げて体内の魔力を最高潮まで高め、前へと一気に飛び出す。
人数で劣る以上、時間をかけてはジリ貧になるしかない。
左の「重戦士」の盾に槌鉾を叩きつけながら、右の「重戦士」の盾を蹴り飛ばし…、慌てて身を屈め剣刃を躱す!
どうやったのか分からないが、すでに俺の背後に回り込んでいたニンジャ迷人が首筋を狙っていたのだ。
前転して背後に向き直った俺は、早くも意識から外れ始めるニンジャ迷人の影を必死で追う。
…なるほど、そうやっているのか。
そんな事が可能だとは夢にも思っていなかった。
これは「重戦士」を相手にしている場合じゃないぞ。
全神経をニンジャ迷人の追跡に動員する。
ときおり襲い掛かって来る「重戦士」の戦斧は、風切り音を聞いてから最小限の身の躱しで対処していく。
ガキッ、という音がして小太刀と直刀の刃が喰い合った。
なんとか受け太刀が間に合ったが、攻撃の起こりがどうのというレベルの話ではないぞ。
踏み込みにすら気付くのが遅れそうになった。
こんな手練れが存在するとは。
人の域にある業ではない…!
左右から迫る「重戦士」に合わせて後退するニンジャ迷人、3対1の状況をとことん利用しようという肚か。
人数差を考えれば当然の戦術だろう。
…だからこそ、その動きは読めていた。
想定よりも高いレベルの動きに振り回されたが、戦術においては俺の想定を超えなかったようだ。
ヤツの動きは捉えきれないが、必ず俺と「重戦士」の延長線上に位置取るのだから、こちらから捉える必要は無い。
「!?」
突如、ニンジャ迷人がバランスを崩す。
その左足が踏みつけている物は、俺が鍛冶屋に特注で作らせた鋼の棘4本による構造体。
つまりは、撒き菱だ。
「もらったああああ!」
この機で必ず仕留める。
俺は2本の戦斧の合間をスレスレで駆け抜けながら、身体ごと小太刀を突き出す。
ニンジャ迷人は仰け反りながらも、直刀で迎えて俺の突きを払わんとする、が。
小太刀と直刀が接触した刹那、俺は手首の力を抜いて蛇のようにくねらせた。
刀の峰同士を擦り合わせ、巻き付けて、下に払い落し、手首の返しで右小手を斬り飛ばす。
ボドワン、技を無断で借りたぞ。
「ヌアッ!?」
ニンジャ迷人は左手に握られた苦無を投擲してくるが、コイツの技量に鑑みれば苦し紛れにしてもお粗末な攻撃だ。
闘いは、技量だけでは無いということだな。
首を傾けて苦無を躱した俺は稲妻の迅さでさらに踏み込み、ニンジャ迷人に姿勢回復の時間を与えない。
ニンジャ迷人が差し伸ばしてきた左腕を槌鉾で払いのけ、がら空きとなったその首を、刎ね飛ばした。
…俺の勝ちだ。
おっと。
風切り音を立てて迫る戦斧を、石畳に転がってかわす。
まだこいつらがいたのを忘れてたぞ。
俺は槌鉾でもって「重戦士」どもの盾をまず砕き、戦斧も弾き飛ばして無防備にする。
それでも拳で掛かって来る戦意に敬意を払って、それぞれ一撃で兜を叩き割った。
すべての迷人が塵となって消え去った部屋には、荒い息をつく俺だけが残されている。
そのあまりの静寂に、本当に今の闘いがあったのかという疑念すら湧き上がってくる。
石畳に目を転じると、迷人たちの武具が散乱していて、たしかに戦闘の実在性を証明していた。
俺はニンジャ迷人の直刀を拾い上げて観察する。
その刃にはわずかに黄味がかった透明の液体が塗布されているのが見えた。
附子の毒か。
一筋でも傷をつけられていたら、危なかったな。
俺はやっと戦闘の実感を得られた気がして、改めて部屋を見渡してみる。
そこには、戦闘が終わると同時に出現した宝箱と、さらに奥に続く扉があった。
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