60【最終話】婚約者はお義母様!
「御主人様は今日はどちらにご出勤ですか?」
お馴染みのメイドがイリーナの髪にブラシをかけながら首を傾げる。
「今日は、本当はお休みなんだけど新聞社の仕事で登城らしいわ」
それでご機嫌なんですね、とメイドが手を動かしながら笑う。
「一緒にいられる時間が増えて嬉しいもの」
ウフフと笑いながら、頬を薄っすらバラ色に染めるイリーナ。
「イリーナ、準備は出来た?」
ノックの音と共にジュリアンが現れる。
彼は何時もの青い騎士服では無く黒いウェストコートにトラウザーズ。
腕にはフロックコートを掛けている。
「あら、私の騎士様は何処かしら?」
「イリーナ。意地悪を言うなよ。今日は騎士としてじゃなくて、新聞社の取材で王宮に向かうんだから」
困った顔で眉を下げてもジュリアンの秀麗な顔は健在だ。
クスリと笑って、彼の前に立つと
「意地悪言ってごめんなさい。私も今日からはコレだから、2人でお揃いになるかなって本当は期待してたの」
イリーナは自分の姿が彼に見えるように、少し離れた所でクルリと回って見せた。
「似合ってる。やっぱり俺のイリーナはカッコいいな」
今日のイリーナは白い騎士服――王国の女性近衛騎士の見習い制服だ。彼女は、卒業を待たずに王国の女性騎士に志願した。
それは、彼女の正義感溢れる気質を見抜いたエリザベスの勧めでもあった。
その為昨日までは訓練生だったのだが今日からは、騎士見習いとなるのだ。
だがエリザベスの徹底的な英才教育を2年間近く受けた彼女なら、直ぐに王族付き女性近衛騎士に昇格するだろう――
「カッコいい?」
「うん」
首を傾げるイリーナにウィンクするジュリアン。
「俺はトーマスから義母の手を取り返そうと空手チョップをして啖呵を切るイリーナ嬢に猛烈に恋をしたんだ」
そう言ってから彼女の額にそっとキスをした。
「え! あれ? あれで!?」
「うん。最初に一目惚れして、貴族街で惚れ直して、翌日には閣下に嫁に欲しいって土下座した」
それを聞いて真っ赤に染まるイリーナと――ニンマリ笑ういつものメイド。
「最初って・・・」
「食料の買い出しの箱を並べてた時だよ。森の妖精だと思ったんだ。その日からもうずっと君が俺の胸の中に住み着いてた。虜って言ってもいい位さ。だけど君は、気が付かなかったろ? 俺の性別を疑いもせず毎晩部屋に現れてさ・・・」
その時のことを思い出して苦く笑うジュリアン。
「え。だって皆がお義母様と仲良くなりに行ってこいって・・・」
「皆? って、え?」
その時、メイドが咳払いをして
「旦那様、お嬢様、登城のお時間をお忘れでは?」
ドアから執事が現れ恭しくお辞儀をすると
「馬丁が焦っておりますのでお早めに」
ニンマリ笑い顔でそう言ったのだ・・・
「みんな、グルかっ!!」
「え、え、え?」
訳が分からず周りを見回すイリーナと、大笑いで額を押さえるジュリアン。
「お嬢様が幸せなら、私共はお義母様が婚約者でも一向に構いませんので」
メイドが澄ました顔で2人の為にドアを大きく開けると、
「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」
執事もメイドも料理長も、そして玄関から覗く馬丁までもが・・・
全員笑顔でサムズ・アップしていたのだった。
ジュリアンの笑い声が、朝の清々しい青空に響き渡った――
―了ー
『婚約者は・・・お義母様!?』
by. hazuki.mikado
○ろシーン2頁は大幅に改稿してなろう仕様です・・・。スイマセン
なろうは作品を選ぶのすっかり忘れて慌てましたが、無事ギリギリセーフ?
(´・(oo)・`)になってる筈だ。ウン。
本編中最終話まで読み頂き誠にありがとう御座いました。
次はおまけページで終了です!
( ̄(エ) ̄)ノ
hazuki.mikado




