表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
9/126

6話

火曜、金曜には一話更新を目標に頑張っていこうと思います。宜しくお願いします

※タイトルの数字が全角で他と違った為に直しました

 「売らないの!?」


ネリーはデルフィンの突然の提案に驚愕し声が大きくなってしまった


遺跡から戻った三人は報酬を貰った後に酒場で話をしていた。報酬の配分と遺跡で手に入れた剣をどうするかの話し合いをするためだ


だが、デルフィンが突然売るのを止めようと言ってきたのだ。売れば相当な金額になるであろう剣を売らずにどうするのだと言わんばかりにネリーは食い掛る。剣は布で包んである。剣を晒すことで横取りしようなどと考える輩への対処だ


「でも、遺跡では売ってみんなで山分けするってデルフィンさんも言ってましたよね?」


帰ってくるまではデルフィンも売る事に賛成してたのだ。マニーズが思い出しながら首を傾ける


「ああ、たしかにそうなんだがこれは売ってはいけない気がするんだ」


「どうしたの? 突然?」


「それに、こんなすごい剣だ。きっと私たちの冒険に役にたつだろう?」


「もしかして、デルフィンが使うの?」


「ああ、そうしようかと思ってる」


「……」


どことなく気まずい雰囲気になっていく


それにしてもデルフィンはどうしたのだろうか? 遺跡から帰ってからどこか変だ。今も話をしている二人に目を向けないでいる。剣が包まっている布を見つめじっと動かない


「はぁ、わかった。デルフィンがそういうなら……でも、決定じゃないからね様子を見てまた話し合おう」


「あ、ああ」


ひとまずその場は解散となった



*********************************************



 どこかデルフィンの様子がおかしい


ネリーは納得がいかないまま宿へと帰った。マニーズはカールと一緒に装備を直しに行ったのでもうじき帰ってくるだろう。デルフィンはどこかに行ってしまった


デルフィンとは小さいころから一緒に過ごしていた。今まででこんなデルフィンを見たことはなかったのに……まるで恋をしているかのような目で剣を見るデルフィン。そんな彼女を見たネリーはぐらつくような不安を感じながらもベットに倒れ込んでいた


三人と一匹は同じ宿の同じ部屋で寝泊まりしている。元々は別々だったが、やはり女性同士気が合うもので、すぐに一緒の部屋で寝泊まりするようになった


日が暮れる前にマニーズとカールが部屋に戻り、その後でデルフィンが戻った


三人は気まずい雰囲気のまま、特に話をするでもなくベッドに潜り込んでしまった


今までにない冒険を経験した三人は疲れも重なり泥の様に眠りへと落ちていった






 視界がぼやける


ここはどこだろうか


「デリン! どうしたの? ぼーっとして」


デリン? 誰の事だろうか? いや、デリンは私だ


「ああ、ごめんよ。ベレッタ。ちょっと考え事をしていてね」


そう彼女はベレッタだ。私の好きな人だ


「もう。いくら依頼は終わったからって気を抜いちゃだめよ?」


「ははは。いいじゃないかベレッタ。依頼もうまくいったんだし。なあ? ウーリー」


「そうね……思ったほど大変じゃなかったわね」


ワルドとウーリーは俺の大切な仲間だ。俺? 私?


「さっさと報酬もらって酒場で一杯やろうぜ」


「そうだな……そうしよう」


ワルドのいつものノリに俺はいつものように答えた






 視界がぼやける


ここはどこだろうか


ベレッタが私の目の前で顔を伏せている


「私……嬉しい……私もデリンの事がずっと好きだった」


良かった。想いを伝えて……ベレッタは俺の好意を受け入れてくれた


「ベレッタ。幸せな家族を築こう」


俺は幸せを噛み締めるように目の前の愛する人を抱きしめる


そう、私はずっとベレッタの事が好きだった。小さい頃から一緒に居てくれたこの女性の事が大好きだった。家を飛び出した時も彼女は俺についてきてくれた。それからも彼女は俺の事をずっと気にかけてくれた。その恩を返したい。ずっと一緒に居たい。


……私は……俺は……





目の前のワルドとウーリーは真剣な眼差しで俺たちを交互に見る


「はぁ、まあ、何となくはわかってはいたけどな」


「ワルド……」


「なに辛気臭い顔してんだよ! めでたい話じゃねえか! まぁ、パーティ解散は寂しいけどな」


「すまない……」


「家庭持ってまでやる事じゃねえだろ。冒険者なんてよ。そんなことより、住む場所とか考えてあんのか?」


「ああ、家を買おうと思ってるんだ。 #$% 辺りがいいかなってベレッタと話をして決めたんだ」


「なるほどなぁ。たしかにあそこは良い場所だな! よし! 今日は俺の奢りだ! みんなで飲もうぜ!」


ワルド。こいつは良い奴だ。冒険者になった日に声を掛けられてからずっとこいつと旅をしている。ウーリーもそうだ。かけがえのない仲間……そんな二人に祝福されて俺は幸せな男だな





*********************************************



 天井が見える。見慣れた宿屋の天井だ


ぼーっとして焦点が定まらず、頭の中がぐちゃぐちゃな感覚を受けながらもネリーは目覚めた


ふとほかの二人に目を向けるとまだ寝ているようで、小さな寝息が聞こえる


上半身を起こし、ベッドの木枠に背中を預けるとネリーは頭の中を整理する様にこめかみを抑える


あれは夢だったんだろうか?


だが、デリンなんて人は知らない……


ふと顔を上げると暗闇に光る二つの光にぎょっとする


カールが顔を持ち上げこちらを見ていた


ネリーの瞳のその奥にある何かを見つめる様にカールは視線を縫い付けたままでいた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ