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異世界冒犬譚  作者: さくら
君を照らす闇
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閑話 シグル、リプシー、オミロの想い

閑話になります

 暗殺団の襲撃から一夜明けた。屋敷では騒動を聞きつけた皇帝達が視察に来ており、レオン達はその対応で追われていた。その為、子供達はゆっくりしていていいと言われていたのだが、シグル達は体を動かしたかったらしく、少し離れた森へとやってきていた


いつもなら、シュナイダーかエルロッテが同行してくれるのだが、今日はホグツが一緒に来ていた





 シグルは目の前で飛び跳ねるゴブリンの一挙手一投足を見逃さないようにじっと見つめる。ゴブリンは知能が低い、なので行動も単一的になりがちなので弱い。だが、知能低さゆえの思い切りが怖い


シグルは相手を見下す傾向がある


(対等だ。気を抜いちゃダメだ。脇を締めてコンパクトに)


何度もシュナイダーに注意された言葉を繰り返した



一方、リプシーは狼の動きに翻弄されていた。森で出会ったモンスターはゴブリンと狼の混成パーティーだった。敵と対峙するや、リプシーはすぐに敵の種類を判断し、自分が狼を引き受けるように立ち回った。ゴブリンは力が強いが動きは遅い、逆をいえば力で負けてしまう。一方の狼はスピードが早い、シグルでは翻弄されてしまうだろう。で、あれば魔法も使える自分が対応した方が良いのだ


だが、リプシーは魔法を使う気はなかった。おそらく魔法を使えばすぐに決着はつくだろう。だがそうしない理由があった


リプシーは良くも悪くも中途半端なのだ。剣で敵わないと判断すれば魔法に逃げ、魔法で敵わないと見れば剣に逃げる。それは決して悪いことではない。むしろバリエーションが豊富な事は戦闘では大きなアドバンテージになる


リプシーを器用貧乏にさせない為にシュナイダーとエルロッテは示し合わせてリプシーに指導していた


剣に逃げるな。魔法に逃げるなと


リプシーは今回、その指導を間違って受け止めている。狼相手であれば魔法で対応すべきなのだ。だが、魔法には逃げないと意固地になっていた



二人を見守るようにオミロは後方から戦況を見守っていた。自分の役目をしっかりと見極め行動する為だ。シャールから魔法を習ったオミロだが、決して才能があったわけでも、なかったわけでもなかった。よく言えばそつなくこなす、悪く言えば平凡なのだ


だからこそ焦りがあった。シグルとリプシーが敵を倒すのを見て、いつか自分もと行動が大雑把になりがちだった


(全体を観るんだ。敵だけじゃなく、みんなも)


シャールに教わった魔法は敵を倒す為だけじゃない。味方を護るものだとネフティ達に教わったのだ




戦況は一気に動いた。奇声を発していたゴブリンが走り出すと、それに反応した狼もリプシーに飛びかかる


ゴブリンの動きを冷静に見ていたシグルは最小限の動きでそれを(かわ)した。一方のリプシーは狼のフェイントに体勢を崩されかけてしまう。剣に(こだわ)りすぎたのだ


オミロはその瞬間を見逃さなかった。リプシーが体勢を崩したその時、まるで時間が止まったかのように全員の動きが、行動が観えた


まさに飛びかかろうとする狼、シグルにいなされたゴブリン


以前のオミロであれば、この時点で行動していた。狼に魔法を放っていたのだ。だが、今日のオミロは違った


リプシーの苦戦に気がついたシグルと、諦めていないリプシーをしっかりと観ていた


風の壁(ウィンドウォール)!!」


右手でリプシーの周りに風で壁を作る


大した効果はないが、目くらましには十分だった。リプシーは諦めていないので時間を稼ぐだけで大丈夫と判断したのだ。すぐさま仲間の窮地を潰すと、続けてゴブリンに左手を向ける。「炎の玉(ファイアーボール)!!」


既にシグルがリプシーをカバーする動きを取っていたのだ、オミロがやるべきはそのフォローだ


——敵を倒すのが僕の役目じゃない。みんなの手助けをするんだ


オミロのその動きは戦況の流れを支配する。シグルは背後を気にする事なくリプシーの元へと走しる


風の壁により、体勢を崩されかけた狼は身を翻し再度体勢を整える。その隙にリプシーは体勢を立て直していた。千載一遇のチャンスが潰された狼は不快感を(あら)わにし唸る。だが、その一瞬の時間が命取りとなった


「はぁっ!!」


シグルの一撃が狼の首を跳ね飛ばした





 「嬢ちゃんは(こだわ)りすぎたな」


ホグツの一言がグサリとリプシーの胸に突き刺さる


「でも、魔法に逃げるなって……」

そう、教えられたのだ。


「逃げないのと、選択肢から外すってのは違うだろう。嬢ちゃんの持ち味はその技の豊富さだ。何でもかんでも使えばいいもんじゃねぇって事を教えたかったんだろ。正しく選択しろってことだ」


「……はい」


その通りだと気づいたリプシーはしゅんとなる


「坊主はいい動きだったな」


「へへっ!」


褒められてシグルは素直に喜ぶが続けてホグツは言う。「まぁ。オミロのおかげだけどな」


「ちぇーっ……」


口を尖らせながらも、それが事実である事はシグルもわかっていた。あの戦いでシグルが思い通りに動けたのは、他でもないオミロのフォローがあったからこそなのだ


「坊主、良い動きだったな」


「へへへ」


照れ臭そうに笑うオミロだったが、すぐに(うつむ)


「でも……」

こんなんじゃカールと一緒に戦えない。もっと強くならないと隣に立つことなんてできないのだ


ぐっと手に持つ杖を握りしめる


「焦るこたぁねぇよ。お前らまだまだガキなんだし。ガキにしては良い動きしてると思うぜ?」


ホグツは何かを察しフォローする


「ホグツさん! ガキって言わないでって言ったでしょ!」


「うお!? なんだよ! 落ち込んでたんじゃないのかよ!」


リプシーに怒られて戸惑うホグツ


「ふーんだ! 反省はしたけど落ち込んでなんかいません! ……落ち込んでる暇なんてないもん」


先日見せつけられたカールの力。その差に愕然としつつも立ち止まる気はなかった


「よし! 次いこうぜ!」


「元気だな。おっさんの体力も考えてくれよ」


頭を掻きながら前を走る子供達を見る


「ホグツさん! 早く!」


「わーってるよ!! にしても、先が楽しみだな」


ホグツは子供達の声に一人苦笑しながらも後を追いかけた



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