9話
調子に乗って、連続投稿してみました。よろしくお願いします
祠の洞窟から出ると異様な騒音が俺の耳に流れ込む
(うん?)
「どうしたのですか?」
洞窟内で拾った布を俺が身に纏う事で俺の声を聞けるようになったシャールが反応する
(なんか騒がしくない?)
「え? 私は何も聞こえませんが…… エルロッテは何か聞こえますか?」
「いえ、私も何も聞こえませんがどうかされましたか?」
どうやらシャールとエルロッテには聞こえていないようだ。だが、俺の耳にはなにやら騒めく人の声が聞こえる
(なんだろう?)
「なにかあったのかもしれません。急ぎましょう!」
一つの良くない考えが頭を駆け抜ける。レーナに何かあったのだろうか?
俺達は神木を抜け、屋敷へと急いだ
懸念は良い意味でも悪い意味でも外れた
レーナは無事だった。変わらず熱にうなされて入るので無事ではないのだが。
「シャール! 戻ったか! 何かわかったか?」
父親がこちらに近づき朗報を期待するが、こちらに進展はない
「そうか。こちらはまずいことになった。レーナが倒れたことが周囲に漏れたのだ」
隠していたレーナの件がバレたのだ。それを知ったエルフの民が真実を確かめようと屋敷に押し寄せているらしい
「そんな。今はどんな状況なのですか?」
「数名で押しとどめているが、このままでは暴動になるかもしれん」
それを聞いたシャールは俯き何かを考え込む。すると顔を上げエルフの民が押し寄せる玄関へと走り出した
「シャール!? なにをするのだ!」
慌てて俺達も追いかける
「レーナ様を出せ!」
「そうだ! 守人様の跡継ぎ様を出せ!」
「病に伏せていると聞いたぞ! 次代の守人様はどうなるのだ!」
跡継ぎが倒れた。そしてその事実が隠されていたと知ったエルフの民が集まり大声で騒いでいる
それほどまでにエルフの民にとって守人という存在は大きいのだ。神木、ユグラシルの加護を得られていたからこその生活だ。それが崩されるわけにはいかない
「落ち着きなさい! レーナ様は今お休みになられている!」
「嘘をつくな! 病で倒れていると聞いたぞ! 本当は死んでいるのではないだろうな!」
「なっ!?無礼な事をいうな!」
もはや一触即発という状況だ
「静まりなさい!」
そんな状況を凛とした声が制止する
先ほどまで騒いでいたエルフの民が声のする屋敷の玄関を一斉に見つめると、そこには家を出たと聞いていたシャールが立っていた。その姿は変わらず美しかった
「おお、シャール様」
「シャール様だ。シャール様がお戻りになられたのか!?」
「おお、ならば守人様はシャール様が? それであれば安泰だ!」
エルフの民は先ほどまでの暴動はどこへやらという感じで手のひらを反す
「皆さん! お騒がせをして申し訳ありません。妹は…… レーナは無事です。病に伏せておりますが、それも皆さまに混乱をさせないためとの配慮でした。ですが、私が付いていますので、安心してください。この度は混乱を招かせないとはいえ、隠し事をしてしまい申し訳ありませんでした。しばらくの間は私が変わってレーナの対応を致します。どうか安心してください」
シャールはエルフの民たちに今回の件について謝罪すると、深々と頭を下げる
「そうだったのか。まあ隠し事をされたのは許せないが、シャール様が戻られたのであれば心配することはないな」
「ああ、だが、シャール様が戻られたとなると、跡継ぎもシャール様になるのか?」
「どうなんだろうな? シャール様が戻られたとなれば北の長が黙ってはいないだろうしな」
蜘蛛の子を散らすように人々は噂話をしながら帰路についていった
「ふぅ…… 一時はどうなる事かと思いました」
戻ってきたシャールはコップに注がれた水を口に運びながらため息を吐く
「だが、まずいことになってしまったな」
父親は困ったように唇を噛む
「これで私は身動きが取れなくなりますね」
「それだけではない。北と西の長達が乗り込んでくるだろう」
「申し訳ありません。お父様」
「いや、謝る必要はない。遅かれ早かれこうなる事は予想はしていた。だが、相変わらず私が不甲斐ないばかりだ」
「お父様……」
隠していたシャールの帰郷までバレたのだ。かつての内戦状態の混乱に陥る事は想像がつく
「レーナの事はガルドウィンに任せるとしよう。すまないがこうなってしまった以上、シャールは私に協力してほしい」
エルフの民達に存在がバレてしまった以上、今までの様に隠れて行動するわけにはいかない。ましてや先ほどレーナの代わりに対応すると言ってしまったのだ
「分かりました。エルロッテ」
「はい」
「あなたはガルドウィンと一緒にレーナの事をお願い」
「ですが……」
「私の事なら大丈夫よ」
「わかりました」
「カール。エルロッテを助けてくださる?」
(いいけど、そっちはいいの?)
「ええ、それにこちらだと堅苦しい思いをすることになりますよ?」
(あ、じゃあ、エルロッテのほうで)
「ふふっ。よろしくお願いしますね」
俺とシャールのやりとりを両親とエルロッテが不思議そうに見守っていた
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俺とエルロッテはガルドウィンの部屋と行き、洞窟でのあらましを説明した
「ううむ。やはりそんなに都合よくは行かないか」
「ええ。他に手がかりはないのでしょうか?」
「こちらも調べてはみたが、とくには何もない。危険ではあるが、試しに召喚術で試してみるしかないかのう」
手詰まりのようだった。何もしないよりはマシという事で、今ある情報で神託を受ける魔法を試すという事になった
大丈夫だろうか? 変な魔法発動して魔王とか呼んじゃったりしないだろうな?
一抹の不安を胸に二人の後についていった
集落から少し離れた場所にある池のところまでやってきたガルドウィンは早速準備へと取り掛かり、地面に木の枝で魔法陣を書き始めた。
俺はそれを眺めながら周りを見渡す。そこはとてもきれいで心が穏やかになる風景が広がっていた
池の水は澄んでおり、時折魚が跳ねる音が聞こえ、池にはハスの花のようなきれいな花が浮いており色鮮やかだった
2人の準備はなおも続くがやる事のない俺はその場に寝そべる。暖かい日差しと程よく聞こえる森の雑音が心地よい
「できたぞ!」
うとうととしているとガルドウィンの言葉が響き渡った
突然の出来事で飛び起きた俺は何事かと周りを警戒してしまった
「くすくす…… ずいぶんと気持ちよさそうに寝てましたね? カール」
エルロッテが俺を見て笑ってきた
くそ、恥ずかしい!
「何をしておる! さっさとこっちへ来んか!」
魔法陣に近づくと、円の中にはなにやら見たことの内容な文字がびっしりと書かれており、中央には木でできた杯が置いてある
「よく、杯をお借りできましたね。聖祭の時以外は持ち出し禁止では?」
「心配するな。バレなければいいんじゃ」
良くはないだろう
「それでは始めるぞ?」
「は、はい。大丈夫ですか?」
「わからん」
きっぱりと言い切ったガルドウィンは魔法陣の縁に跪き両手の平を空へと向けた
「見えざる大いなる神々よ。我が呼び声に応じ給え。大いなる自然と瞬く星々を司る神よ。今ここに我は彼の神ユグラシルを呼び出さん…… 召喚!」
その言葉と共に魔法陣が淡く光り輝く
「おお……」
その光景にエルロッテが感嘆の溜息をつく
おおぉ…… あれ? もしかして成功しちゃったりするの?
光は次第に強く輝きを放ち、そして消えた
「……」
静寂が響きわたる
——ッチャポン
魚が跳ねたようだ
「ええと、成功したのですか?」
エルロッテが静寂を破った
「そう見えるか? 失敗じゃ」
「そ、そうですか」
「まあ、うまくいくとは思っていなかったがやはり無理か」
でしょうね
その後もいくつかの詠唱を試したが、何も起こる事はなかった。最初の詠唱こそ魔法陣は光ったが、その後の詠唱では微動だすらせず、魔法陣の脇で痛い事言っている爺さんがいるだけの光景が続いた
「ううむ。やはり難しいか……」
ようやく諦めたようだ
「やはり何かの手がかりを見つけないとでしょうか」
「そうだのう。だが、本はすべて目を通したつもりだ。これ以上の物は出てこないと思うが……」
「一度かえって調べなおしましょう」
「そうだな。そうするとしようか」
なんの成果もあげられないまま、聖杯を回収し帰路へとついた
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夜ふと目が覚めてしまった俺は部屋で寝息を立てているシャールを起こさないようにそっと部屋を出た
普段の宿屋では俺が扉を開ける事はもちろんできないのだが、この家は押せば開くのだ。廊下では見回りの護衛が巡回をしているのでそれだけ安全ということだろうか?
一応、中を覗かれないように扉を閉めておく
あれ?これ戻る時引かないとなんじゃ。開けられないな。まあいいかと深く考えずに外へと出る
なぜか目が冴えて眠れない俺は少し外を歩こうと思ったのだ
特に目的地も決めずに歩いていると、見覚えのある場所にでた。昼間に魔法を試した池だ。その証拠に地面にはまだ魔法陣が残っている
ふと目を池にやると、どうやら先客がいたようだった
先客? だれだ?
淡い光を放つ何かが見える。よく見ると小さな子供が光を手に池の畔で跪いて祈っているようだった
なんで子供がこんな時間に?
相変わらずこの世界の子供は非行に走る傾向なのだろうか?
この辺りはモンスターなどは出ないから安全だとエルロッテが言っていたが、いくら安全とは言えこんな夜中に子供が一人でこんなところにいるのは危険だろう
「っ!? だ、誰?」
心配になった俺が近づくと、それに気づいた少女が驚きこちらを不安げに見つめてきた
おっと、不安にさせちゃったかな? 大丈夫だよー俺は噛まないよー
おびえる少女の警戒心を解くべく、その場で寝そべり腹を見せてみた
「? あ! お屋敷で飼われている犬……?」
お? どうやら知っているようだ? なんで知ってんだ?
「シャール様の近くにいたワンちゃんだよね?」
おお、なんで知ってんの?まあいいか
警戒心がなくなり屈託のない笑顔を見せる少女に近づくと恐る恐る俺に手を伸ばす
「へへへ。可愛いねぇ」
君も可愛いねえ。ぐへへ
エルフと言うのはどうしてこうも美形揃いなのか
年端も行かない少女ですら結構な美少女だ
「ここにいるのは誰にも内緒だよ?」
少女は人差し指を唇に当て、突然の内緒話が始まった
「あのね、今ね。ユグラシル様にお祈りしてたんだよ? レーナ様が元気になりますようにって。ユグラシル様はね。お星さまなんだよ?」
なんで疑問形? まあいいや。星なの? ああ、そういえばガルドウィンが魔法唱える時に自然と星々を司る…… とか言ってたな
「ユグラシル様はね。すっっっっごく優しいんだよ? だからレーナ様の事もきっと治してくれるんだ!」
ほうほう、そうかそうか。そんなことよりここは危ないぞ? おじさんがなんか買ってあげるから一緒に帰ろうか? ん?
流石にこんな所に子供を一人にしておくわけにはいかず、服の裾を引っ張り家へと送ってあげた
ああやって子供にあそこまでしてもらえるって…… レーナちゃんもきっと良い子なんだろうな。治るといいんだが
夜の散歩と突然のイベントで眠くなった俺はシャールが寝る部屋へと帰ったが、途中で見つかり怒られてしまった




