表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒犬譚  作者: さくら
星に願いを
25/126

2話

よろしくお願いします。

 シャールは犬の両脇を抱えジッと目を見つめていた。もうこの状態になって数分が過ぎている


「はぁ…… 駄目ね…… やっぱりわからない」


「シャール様ですら心がわからないとは、この犬は一体なんなのでしょうか?」


俺を抱きかかえ先ほどから見つめる女性はシャールと言うらしい。エルフの女性で白百合の花のような透き通る肌と輝く金髪の美しい少女だった。一方、剣を振るっていたのはエルロッテと言うらしく、こちらもエルフの女性で顔立ちの整った切れ目の美人だ


先ほどからなぜ見つめ合っているのかと言うと、なんでもエルフは動物と心を通わせることができるらしいのだ。魔法に巻き込まれても傷一つ追わない俺が何者なのかを知るためにこうして心を通わせようとしてくれているらしい


その話を聞いた俺は先ほどから何度もシャールに話しかけているのだが、まったくと言っていいほど伝わる気配がない。この世界に来て初めて意思の疎通ができると喜んだのだが、そううまくはいかないのだろうか


「それにしても不思議な子ね。なぜあの状況で無事だったのかしら?」


「案外、間一髪で避けていたのかもしれませんね」


「うーん、完全に巻き込んでしまったと思ってたのだけれど見間違いだったのかしら?」


「魔法を受けて無傷な者など…… ましてやシャール様ほどの魔素をお持ちの方の魔法。無傷でいられるわけがありません。きっと見間違いでは?」


「そうなのかしら? ねぇ?」


三度、俺は持ち上げられてシャールの透き通った目線を向けられる


俺に聞かれてもわからないんだが…… なんでもいいけど、降ろしてもらえませんかね?


抱きかかえられるのは好きだが、このぶら下がってる感はどうも落ち着かない


大事なとこも見えてますから! 恥ずかしい!


「そういえば、あなたの名前を決めないとね」


「え!? シャール様!? まさか連れて行くのですか?」


「え? ダメ?」


「い、いえ、ダメではありませんが……」


「この子は私達を助けてくれようとしていたのよ。きっと賢い子よ」


おおお、渡りに船とはこの事か?なんか違う気もするが、まさかこんな美少女に拾ってもらえるとは何という幸運


ゆう…… カールっていうんだけど…… また別の名前つけられちゃったりするのかな?

「あおぉん」


「え?」


俺の声にシャールが怪訝そうな目で見つめる


「カール……?」


は? え? 通じた!? そう! カール!

「ワン!」


「シャール様! 心を通わせられたのですか!?」


「い、いえ。そういうわけでは…… ただ、ふとそう聞こえたような気がして」


「そうでしたか。ですが、この顔を見るとどうやらその名前を気に入っているようですね」


「そうね。じゃあ、今日からよろしくね! カール」


俺を抱きかかえながら花が咲いたような笑顔でシャールは微笑んだ



*********************************************



 汚れた土を払い落とし二人は歩き始めた。俺は踏まれないように一歩下がったところを歩いている


単にくっ付いて行けばいいというわけではない、ここで重要なのが二人の会話から以下に情報を集められるかだ


会話ができない以上、何気ない会話に出てくる単語を自分なりに解釈・紡ぎ合わせて状況と知識を増やしていくしかないのだ


その人が何者なのか、名前は? 種族は? 生い立ちは? 目的は? そういったことを直接的に聞けない以上、自分で理解していくしかない


「ドナーコニスはもうすぐでしょうか? もうずいぶんと歩いていますが……」


「はい、皇都(こうと)はまだですが、ブロケンタスという町がそろそろ見えてくる頃です」


ほう、皇都か。本来、そこに連れてかれるはずだったんだよな。というか、俺が到着しないことでセレナに迷惑かかったりしないだろうか?


「プロケンタスから皇都までは距離があるのですか?」


「そうですね、プロケンタスで一泊してからのが良いかと思います」


ほう、プロケンタスという町で泊まるのか


「皇都に着いたら少し旅銭を稼がれた方がよろしいかと」


「あら、もう尽きてしまったの?」


「い、いえ! まだ十分には御座いますが、収入が全くないのは……」


「それもそうね。私も頑張るから遠慮なく言ってね。前みたいに私に何も言わずにエルロッテだけが仕事をするのは駄目よ?」


「は、はい! で、ですが……」


「もう…… 今はあなたと私は同じ旅の仲間よ?」


「はい……」


シャールはどこぞのお嬢様っぽいな。エルロッテの態度からわかってはいたことだが…… どうでもいいけど大した情報得られてないな


その後も二人の他愛もない話を聞いていると前方に大きな石造りの門と橋が見えてくる。眼下には綺麗な川が流れており、その橋を渡ると複数の家が建ち並んでいた。ここがプロケンタスか


Lの字に曲がる通りを進むとひと際大きな家が見えてくる。どうやらここが宿屋兼酒場のようだ


二人と一匹で宿屋に入るとカウンターで座っている中年女性がにこやかに声をかけてきた


「いらっしゃい」


「部屋はありますか?」


「同室でいいのかい?」


「はい、構いません」


「動物連れかい?」


「え……と、だめですか? 賢い犬なので粗相はしませんが」


「まあ、綺麗に使ってくれりゃ文句はないよ。珍しい犬だね」


おばさんに撫でられながら、二階の部屋へと案内される


結構広めな部屋だ。ベッドが二つ。奥のはクローゼットだろうか? 手前にも扉があるがこれは何だろう?


「そこはお手洗いよ」


よくわからない扉を見ているとシャールが教えてくれた


というか、俺の疑問がよくわかったな。意思の疎通できてるんじゃね? まあ、見つめてる姿見れば察することぐらいできるか


シャールは俺の行動をちゃんと見てくれてるってことかな。美人だし、気が利くしめっちゃいい子だな


「褒めても何もでないわよ?」


「え?」


「え?」


エルロッテが驚いた顔でシャールを見ると、シャールが何事かとエルロッテを見る


「え……と、シャール様? どうされました?」


「え? エルロッテが言ったのではないの?」


「わ、私がなにか言いましたでしょうか?」


「あ…… いえ、ごめんなさい。空耳かもしれないわ」


これは、もしかするともしかするのではないだろうか?


今はまだうまく意思の疎通ができていないようだが、うまくすればいつかは通じるんじゃないだろうか?


だがどうすればいいのかまでは分からない。ひたすら声をかけまくればいいのだろうか?


一時はどうなる事かと思ったが、こうして美人の二人に拾われ、諦めていた言葉が通じるかもしれない可能性


そんな明るい未来を思い浮かべ自然と浮かれる俺がいた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ