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異世界冒犬譚  作者: さくら
少女との約束
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2話

2話になります。宜しくお願いします

 袋から出された所は色とりどりに飾り付けがされた豪華な応接間のような場所だった。目の前には恰幅が良く、気立ての良さそうなおっさんがにこにことこちらを見ていた


袋の中で声を聞いているので、このおっさんに吠えたところで意味がないことはよくわかっている。男達は俺を攫うと別の男に売り払った。金貨四枚とか言ってたな。高いのか安いのかわからないが、金貨だからきっと高いんだろう。さすがは俺。いやそうでなく。で、俺を買い取った男はその後に目の前の男に売りやがったのだ


金貨十枚で


なので、交渉時の話から推測すると目の前にいるこのおっさんは俺が攫われたという事は知らない


むぅ。この怒りをどこに向けたものか……まぁ、檻に入れられてるのでどうしようもないのだが……そんなことよりラティが心配だ


「旦那様ご機嫌がよろしいようで」


「うむ。アウフヴィタの貴族様から珍しい動物を用意する様に依頼されておったからな。まさにこの獣は丁度よいではないか」


「たしかに珍しい犬でございますな。貴族とはオーチュア家のことでございますか?」


「そうだ」


「失礼かとは存じますが、オーチュア家は……」


「その心配はいらん。先を見据えた上での取引だ」


「左様でございましたが、余計な詮索失礼いたしました」


「構わぬよ」


商人風の男と使用人の話からすると俺はさらに売られてしまうようだ。これ帰れるのかな……




 俺が攫われて数日経つが俺への扱いはかなり良い物だった。寝床は上等な毛布だし、食事も日に二回ほど良い肉を出してくれている。商品は丁重に扱えって事なのだろうか


不満があるとすればここにきてすぐにつけられたこの首輪だ。まあ、犬なんだからつけるのが普通なのかもしれないのだが、息苦しくてなんとかしてほしい。当初は外そうかと思ったが、よく考えたらまた着けられるだけだと観念して気にしないようにはしている


その日は朝から周りが慌ただしく、どうやら旅の準備をしているようだった。部屋からは荷物が運び出され、俺も運び出されて馬車の荷台に乗せられた


あんまり遠くにいかれると帰るのが大変になるのだが、悩んでもどうにもならないので寝ることにした



*********************************************



 「こちらがお求めの商品となります」


あえて最初から商品を見せない事で期待感と購買意欲を沸かせているのだろうか。俺の檻は大きな布が掛けられており、中から外の様子をうかがう事は出来ない。恐らく外からも同様だろう


商人がセリフを言い終わると、待ってましたとばかりにシーツが剝ぎ取られる


ここまで来たら逃げも隠れもしねぇ。俺はどや顔で座っていた


「おぉ……なるほど、たしかに見たことのない珍しい犬だな」


「この犬は珍しい犬種でございます。マーチル様にもさぞお気に召してもらえるかと……」


「うむ。カノン。どうだろうか?」


「はい、とても可愛らしい顔をした犬です。セレナもきっと喜びますわ」


俺を品定めしているのは如何にもと言った貴族の夫婦だった。男は穏やかな顔立ちで背筋を伸ばし紳士的な印象を受ける。一方女性は煌びやかなドレスを着ているが、程よいフックリした輪郭で優しそうな女性だった


「それではお買い上げいただけるという事で……」


「うむ。金額はそちらのものと話せ」


「おありがとうございます」


貴族の夫婦はそういうと満足げな顔をし部屋を去っていった


「それでは金額ですが……」


残された執事の男と商人が金額の交渉をし始めた


俺はどうやらあの貴族に飼われることになったようだ。どうしてこうなった



 「お嬢様、旦那様と奥様からの贈り物でございます」


その後、馬車に乗せられた俺は高い塀のある大きな屋敷の一室へと運び込まれた


メイド姿の女性が部屋の主である少女に説明をしているのだが、少女は窓の外を見るばかりで一向にこちらを見ようとしない


「あの、お嬢様?」


困り果てたメイドがどうしたものかと思案していると、ふと少女がこちらを見る。黒髪の美少女。その姿はまるで物語に出てくる可憐な少女そのものだった


美少女は無言でこちらに近づくとしゃがみこんで俺を見つめる


「……変な犬」


ちくしょう。ちょっとでも可愛いと思った俺が馬鹿だった


「檻。邪魔」


「え? あ、はい」


メイドは檻の扉を開けると恐る恐る俺の首元に手を伸ばす。縄で繋ぐのか? そんなに怖がらなくても噛まないのに……


首輪に縄を付けられた俺はようやく檻から出して貰えた。檻そのものは狭くはなかったのだがやはり圧迫感がある。久しぶりにその圧迫感から解放された俺は前足を伸ばし大きく体を伸ばす


「そ、それでは、何かございましたらお呼びください」


数人の男が檻を下げ、それと同時にメイドも部屋から立ち去った


美少女はそれを見届けるとまた窓際の椅子に腰かけ外を眺める



俺はどうしたらいいのだろうか?



「名前……」


暫くの沈黙の後、思い出したかのように美少女が呟く


「私はセレナ。あなたの名前は……」


ああ、名前か。カールっていうんだよろしくな

「あぉん」


「……ノクト。ノクトにするわ」


おぅ……まあ、喋れないからそうなるか


こうして俺は新しい名前を手に入れた


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