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異世界冒犬譚  作者: さくら
君が居る意味
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終話

 ドナーコニスの町は多くの人で賑わっていた。まるで騒音が津波のように押し寄せる。普段のドナーコニスもそれなりに賑わい、露店が出ているのだが、今日はその比ではない。遠くの町から来たであろう、見慣れない商人達も露店を出しており、行き交う人達に少しでも立ち寄ってもらおうと声を振り絞るように呼びかけていた


露店の種類は様々で、自分の町の特産品を出している店、食べ物のいい匂いを出している露店など様々だ


「ものすごい人ですね」


エルロッテはすれ違う人を交わしながら、前を歩くシャールに声をかける。町に入る前の門の時点で人の多さに驚いていたのだが、いざ中に入ると人でごった返し、常に人を避けている状態だ


「スタックフォードの聖祭が可愛く思えるわね」


そう返しながらもシャールはエルロッテを見ようとはしない。人を避けるのに精一杯で見れない、というほうが正しい


「この先の宿屋の二階がそうよ」


シャールは前方に見える宿屋に向かって足を早めた




 「お、来たか」


喧騒をかき分けてようやく宿屋に入ると、入り口ではタウレ達が待ち構えていた。すでに顔は赤みを帯びているので、飲んでいたのだろう


「お久しぶりです。タウレさん。それに皆さんも」


そう言ってシャールはタウレ達に頭を下げる


「元気にしてたか?」

と、ホグツ


「相変わらず、綺麗ねえ」

「ほんと」

ネフティとマルゲーヌが近づいてくる


「皆さんも元気そうで何よりです。お店も繁盛していると聞きました」


「ええ、おかげさまでね。シャールちゃんも今度来てね」


タウレ達は旧バルミルス邸で冒険者達を相手に酒場を開いている。行き届いたサービスと料理で繁盛していると有名だ


「マニーズ達は上にいるぜ?」


「ありがとうございます。それでは皆さんも後ほど」


そう言って別れると、シャールとエルロッテは2階に上がる


「お姉ちゃん!」


登り切る間も無く、駆け寄ってきたのはミルファだった


「ミルファ! 元気にしてた?」


「うん! 二人とも! こっち!」


ミルファについて部屋に入ると、マニーズとセレナ、それにリプシーが出迎えてくれた


「シャールさん。お久しぶりです」


セレナが立ち上がり挨拶をしてくる


「お久しぶりです。セレナさん。お元気でしたか?」


「ええ、シャールさんもお元気そうでよかった」


「シグル達は?」


シグル達は部屋にはいないようだった


「それが、あの二人、皇国軍に正式に入ったんだよ!」

と、リプシー


シグルとオミロはアカリウムとの戦いの際の功績が認められ、晴れて皇国軍に入隊した。配属先はシュナイダーの所らしい。つまりは今までとあまり何も変わっていない


「そうだったのね。いつの間に……」


だが、それを知らなかったシャールは驚く


「あれからもう一年だもんね」


ミルファがそう言って俯き顔を曇らせる。その意味は全員がわかっていた。カールが身を挺してアカリウムの魔法を止めた日から今日で一年が経つのだ


あの日、宮廷から溢れ出した光は世界を包み込むように光り輝いた。だが、それは破滅の光ではなかった。光が収まると、空は晴れ、何事もなかったかのような穏やかな日々が戻った


いや、むしろ良くなった。あの日以来、各地で農作物は豊作になり、それは今も続いている


また、不死の世界と呼ばれる場所は周知の事となった。互いを行き来するための障害は消えたのだが、結局、不死の世界の住民は不死の世界に引き続き住む事になった。いつでも行けるとわかった今、無理にこちらに来る必要もないというのが正直な所なのかもしれない


当初は摩擦による衝突も危惧されたが、デーモンの代表と皇都で話し合った結果、穏便に済んだ。セイファルやユグラシルといった神達が同席したのも大きいのかもしれない


「カール……いつか帰ってくるかな」


ミルファがポツリと言った。誰しもがカールに再び会える事を望んで止まないのだ


「あら、カールはいつも見ているわよ」


暗くなった雰囲気を吹き飛ばすようにマニーズが明るく声を上げる


「うん、何たって今日はカールの日だしね!」


リプシーも声を上げる


「式典はそろそろ始まるのでしょうか?」


「おーい、お前ら! そろそろ行くぞー」


シャールの問いに下にいるタウレが答える結果となった


「お姉ちゃん! いこ!」


ミルファに手を取られシャール達は宮廷前の広場へと向かった




 「アイリス。緊張してるのかい?」


レオンは先ほどから椅子に座り身を固くしている妹のアイリスに声をかける


「お兄様……多くの人の目に晒されると思うと震えが止まりませんわ」


これから皇族は全員がバルコニーへと出て、待ち受ける民衆達の前へと出る。アイリスは単純に笑顔で手を振ってればいいだけなのだが、本人からすればそれだけでも大事件なのだ


「何も心配する事はないよ。アイリス」


アーナスがアイリスに近づく。「私もついているからね」


「お兄様……」


「これからもこう言った機会は増えてくる。早く慣れないとな」


あの一件以来、アイリスは政務に積極的に参加するようになった。壊すのではなく、現状をいかに良くするかを常に考えるようになった表れだろう


「陛下、民衆が待ちわびております。そろそろよろしいでしょうか?」


貴族の一人が声をかけてくる


「うむ」


ポテアムはそれに答えると家族へと振り返る。「皆、準備は良いか?」


その言葉にレオン達は頷き、庭が一望できるバルコニーへと足を向ける


雲一つない、透き通るような青い空はまるでこの日が特別だとでも言うかのようだった。バルコニーへと出ると柔らかい日差しが体を包み込んだ


皇族が姿を表すと宮廷前の広場に集まった民衆の歓声がより一層強くなる


皇都が陥落してから1年。マンダス大陸に住む住民はこの日を待ち望んでいたのだ


世界の滅亡と共に忽然と現れた黄金の毛並みを持つ聖獣はその命を犠牲にして、この世界を救ったのだ


城のバルコニーから見下ろすと、下の広場には多くの人達が集まり、皇帝の言葉を今か今かと待っている


ポテアムは一歩前に出ると、民衆に応えるように右手をあげる


「我、七代皇帝ポテアム・アラバスターの名に置いて、聖獣カール様への感謝の想いと共に、生誕祭を開くことをここに宣言する!」


皇帝の言葉とともに大歓声が湧き上がる。この日、マンダス大陸に住む全ての人達は夜通し騒ぎ、この大地を救ってくれた聖獣に祈りを捧げた




以上で完結とさせて頂きます。拙い文章、設定もガバガバで読みづらかったと思いますが、ここまで読んで下さった方に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました

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