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武術系男子高生、隕石と間違えて美少女エルフを持ち帰る。~助けただけだ。ハーレム作れとは言ってない~  作者: Resetter
一章

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1/3

1.彼方から貴方へ



 ——ゴォォ……

 

 それは、突然だった。

 円景寺(えんげいじ)央世(おうせ)の、いつもの帰り道。遥か頭上で音がした。

 見上げれば、一筋の光が——空を流れていく。


 央世は、目を輝かせ、指をさした。


「マツリ……あれ、隕石じゃね?」


 隣で自転車を押しているのは、赤坂(あかさか)茉莉(まつり)。茶色がかったふわふわのロングヘア、切れ長のアーモンド目が、とても愛らしい美少女だ。


 央世の言葉に、顔を上げた。


「え? どれ……うわ。あれ、下がってきてない?」


 二人は、所謂(いわゆる)幼馴染。ともに高校二年生だ。


 学校を出て、立ち並ぶ店舗やマンション、アパート群を抜けて、国道沿いに差し掛かった辺りだ。時刻は16時を回ったところ。某ハンバーガー店か、某コーヒー店に寄っていくかで議論していたところだったのに。

 災害か? と、茉莉は不安に顔を歪ませた。


「おお、行ってみねぇ?」


 だが、振り返る央世の瞳は、キラキラと期待に満ちていた。

 どうにも彼は、188センチの長身ながら、まだまだ心は少年のようだ。今にも走り出しそう——いや、走り出してしまった。


「ちょ、待ってよー! おうせー!」


 茉莉は慌てて自転車に飛び乗って、ペダルを踏み込んだ。制服のスカートが、ふわりと舞う。

 しかし、二の足を踏み込む時にはすでに、央世の背中は離れてしまっていた。

 ——速すぎる。今度アイツに首輪でもプレゼントしようか、などと茉莉は思った。


「マツリ! これ、思いっきり(うち)の方角じゃね?」


 走る方向で、央世は気が付いた。自宅への帰り道と、変わりがないことに。


「……え? 私の家とか勘弁なんだけど!」


 茉莉の顔は、青かった。

 当然だ。帰る家がなくなるなど、冗談ではない。

 だが、151センチの身長から繰り出す踏み込みは、自転車をスピーディーに動かすには、少々心許ない。


 そんな二人をよそに、上空を走る光の筋は、みるみる大きくなっていく。自由落下なのか、目指す場所があるのか……。央世や茉莉の家がある住宅街方面へと向かっているようだ。

 

 央世は、はっはと犬のように息を切らせながら、猛然と追い縋る。だが、その顔には笑みが浮かんでいる。最悪の事態は考えてなさそうだ。


「おーぅせぇー……。早いってぇー……」


 その少し後ろに、ギィコギィコと自転車を漕ぐ茉莉の姿があった。ぷふぅ、ぐはぁと息が漏れ、必死の形相だ。そろそろチアノーゼが浮きそうである。

 だが、残念なことに酸素マスクはない。

 

 そして、央世は止まらない。リードがあっても、振り切っていたことは請け合いだ。


「隕石とか人類の夢だろ? 遅いぞマツリ! 置いてくぞー!」


 既に千メートルは走っただろうに、央世は更に加速した。有り余る若さが迸るようだ。


「……はぁ、はぁ、おうせったら……もう。ほんっと、しかたないヤツ……」


 茉莉は、ぶつぶつと言いながらも、紫だった顔に……少し赤みを灯した。



 ——やがて。


 空を走る光が——打ち捨てられて久しい、雑木林にも似た茂みに、吸い込まれていった。


 ドォオーーーン!!


 直後。爆発のような、銅鑼のような音が響く。



「おおっ?! 落ちたぞ!」


 央世は、何の躊躇もなく、鬱蒼とした茂みにガサっと音を立てて飛び込んだ。


「……ちょ、おうせ?! 燃えてたらどーすんの? 火傷するってー!」


 何とか追いついた茉莉が、茂みの脇に自転車を放るように倒して、央世の作った獣道を辿る。


「もー! 待ってって……!」


 央世の背中は、もう見えなかった。茉莉の遥か前方で、背の高い草が、ガサガサと激しく揺れていた。


 


 茂みのちょうど中央辺りに、不思議と草の薄い場所があった。

 そこには、古い石組みの土台——石垣らしきものが遺されていた。

 崩れた石には、何か——紋様が刻まれたものもあるようだ。


「……はぁ、はぁ……やっと追いついたぁ……」


 茉莉が追い付いた時。

 央世は、石段の前で足を止めていた。


「……おい、マツリ。これ……」


 それも仕方ない。

 土台の中心に、大きな光の玉が在ったのだ。地面を、少し抉るように。央世の目に映るそれは、明らかに隕石ではない。


 茉莉も、央世の指差すそれを見て、絶句した。


「……え。なに、それ……」


 一瞬。二人の時が止まったようだった。

 そよりと吹いた風が、草木をカサリと歌わせた。


 央世は、小さく喉を鳴らすと、短い石段を上り、光の玉の前にしゃがみ込む。


「え、ちょ、おうせ?! 何するの?! 危ないって!」


 茉莉が叫んだ。


「いや、熱くはなさそうだ……」


 だが、央世は、(おもむろ)に――右手を伸ばした。


 そして、光の玉へと手を触れ——


「おおっ?」


 ようとしたが、光は光だった。右手は、何の抵抗もなく光の中へ吸い込まれた。


 そして、何かを掴んだようだ。

 

「……ん? 柔らかい? なんか、すんごいポヨポヨしたものがあるな……? なんだこれ? ちょっと温かいし……」


 央世は、左手を顎に当て、首を傾げながら視線を左上に移した。思案顔だ。



「え、おうせ! 光が……!」


「……ん? ……あっ?!」


 央世が思案している間に、光が薄まっていた。次第に、中身の輪郭が浮かび上がっていく。


「……ちょ、それ」


 茉莉が、口許を手で覆う。

 現れたその輪郭の正体は——


「……お、おんなのこ?!」


 一見すると、少女だった。

 央世は、右手をポヨポヨとしながら、呟いた。


 そして、ゆっくりと——自身の右手が掴むものへと視線を移していく。

 

 光に差し入れた右手は、仰向けで寝る少女? の胸部——つまり、おっぱいを——ポヨポヨと揉みしだいていたのだった。

 

 それは——あまりに巨大すぎた。

 そして——凄まじい弾力だった。

 

 見るからに少女だと言わざるを得ない小さな体躯には、不釣り合いにも程がある。


 央世は、考えることを——やめた。

 ……のだろうか。時間が止まったように、固まった。


「おうせの……ばかぁーーー!!」


 茉莉は、頭から湯気が——出てはいないが、真っ赤である。


「がっ——?!」


 茉莉の拳骨が、央世の脳天に直撃した。央世は咄嗟に左手で、頭を押さえた。

 だが、その右手は——山頂に掛かる雪のように、まだポヨポヨ(胸の上)の上だった。


「……ん……」


 そんな騒ぎの中、少女が呻き声を漏らした。金色の長いまつ毛が、揺れる。


「おっ?! 生きてるぞ? こういう時って、なんだ? 心臓マッサージか? 人工呼吸か?」


「えっ……って、アンタいつまで触ってんの!?」


「いや、なんか、離そうとしても離れない感じなんだよ。くっついたみたいにさ」


 そう言いながら、央世は右手をぐいっと持ち上げた。みょーんと、少女の胸が張り付いたまま、持ち上がる。


「はぁ? わけわかんないこと言ってないで、さっさと離したら?」


 しかし。それは茉莉には届かない言葉だった。


「お、おお……そうだな……」


 央世は、空いていた左手を、右手首辺りに持っていった。無理にでも引き剝がすつもりだったのだろう。

 

 だが——

 少女の右手が、瞬時にそれを掴む。そして、右のおっぱいに誘った。


「なっ?! ちからつよっ……」


 央世が左手を霊峰(おっぱい)に埋められながら、呟いた。

 右の山頂にも、ぽよんと笠が掛かる。大事な部分は隠れた。ある意味安心……なのだろうか。

 それと同時に、ぱちりと少女の目が開く。

 ——その瞳は、吸い込まれそうなほどの、深い紫。神々しいまでの、人間離れした美貌だった。

 


「……そなた、人族(ひとぞく)か? んー……。ここは……? ふむ。地球……日本……というのじゃな」


 桜色の唇から発されたのは、新雪のように澄んだ声だった。


「人族……ってか、人間だけど。って、それより、なんでこれ離れないんだ? しかも両方さぁ」


「あー……。まぁ、気にするでないのじゃ。わらわと()()()()()じゃの、旦那様」


「……旦那様? オレ、円景寺(えんげいじ)央世(おうせ)ってんだ。まだ旦那様とか言われる歳じゃないぞ? 17歳——」


「おうせ。アンタ、まだ16歳でしょ。誕生日まだなんだから」


 呆気に取られていた茉莉が、息を吹き返したようだ。


「いや、それ——」


 今は別にいいだろ……と、央世が言い切る直前。少女が身体を起こした。薄い金色(こんじき)の長い髪が流れ、空気に溶けるように、煌めく。


「……って、動けるのか?! お前、空から落ちてきたんだろ? 大丈夫なのか?」


 そう。飛行石などなく——勢いよく落ちたのを、央世は見たのだ。


「む。貴方様のおかげで平気じゃぞ、わらわの旦那様。ふふっ。わらわは、アード・フェン・リョ……っと」


 少女は、はっとして口許を覆った。紅葉(もみじ)の葉のような、小さな手のひらだ。だが、驚きの白さである。


「ん? アード……? なんて?」


 どうやら央世は聞き取れていなかったようだ。


「あー……。アード・フェンじゃ! アードと呼んで欲しいのじゃ!」


 アードは、元気よく誤魔化した。


「ふーん。変わった名前だな。外国人か? 金髪だし。変わった目の色だよなー。肌もなんか、軽く光ってるような、透けてるような色だし」


 央世は、まじまじとアードの瞳を覗き込んだ。どう見ても日本人には見えない。だが、古風な感じではあるが、日本語が達者のようだ。

 ——空から落ちてくるって、どういうことだ? 央世は不思議に思った。


「ってか、そ、その子……耳……」


 茉莉が、アードを指差しながら、青い顔で後ずさる。


「ん? 耳? ……が、なんだ……って、なっが! なんだこれ?!」


 央世が大声を出し、目を丸くした。


「あー……ははは……。まぁ、わらわ、地球でいうところのエルフじゃからなー。しかたないじゃろっ?」


 アードは、長い耳を手で隠しながら、ぺろりと舌を出す。


「「え、エルフぅぅぅ??!!」」


 央世と茉莉の大声が、空き地に響いた。

 

 その隙に、がっしりと央世の両腕を掴み、さらに自身の胸に押し当てるアードは、にちゃりと仄暗い笑顔だった。


 ギギッと音が聞こえそうな動きで、首だけ振り返る央世と、鯉のようになった茉莉の目線が、交わる。

 

 これは——夢か。

 

 だが、央世の手には、確かな——逃れようのない感触(ポヨポヨ)があるのだった。

 

 

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