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鏡映し

 辺りには何もなく、真っ新に広がる一面灰色の世界。前後左右どこを見ても、そこに鐵月以外の人物は一人も見当たらず、ただ周囲を見渡す。

「僕…何してたっけ?」

 不意に口から漏れる言葉に呼応するように目の前に映像が現れる。そこに映っているのは、二人の職員が話し合っている場面だった。


「こいつには見込みがない。失敗作だ。」

「では、処分しますか?」

「そうだな…”普通の生活”でいいだろう。」

「…わかりました。」

 鐵月はその光景に見覚えがあった。他にも複数人の赤ん坊が周りに居る中、鐵月が唯一処分ではなく、処遇だった。

「そうだ…僕は、何故かあの中で一人だけ処分されなかったんだ…。」

「俺のおかげなんだから、感謝しろよ?」

 誰もいないはずの空間の中、突如、背後から声が聞こえてきた。振り返るとそこには鐵月と瓜二つの人物が立っていた。

「俺が不十分なお前のために動いてやったから、今お前は生きている。」

「僕が亡くなるのは、あなたにとっても不都合だっただけですよね。」

「ああ、その通りだ。俺とお前は同じ体にいる二つの意識。当然、死ぬような事態は俺も困る。」

「だから力を示したんですか?」

「ああそうだ。」

 会話が止まると、睨み合っている二人の鐵月の間にもう一つの映像が現れる。その映像に映し出されたのは、眼鏡をかけた一人の男性だった。


「君ぃ、何か隠してなぁい?どうも不自然なんだよなぁ。」

 薄ら笑いを浮かべる男性は、こちらに顔を近づけ、眼を逸らすことなくひたすらに見つめる。

「たまに命令違反してるのぉ、気付いてるよぉ。」


「こいつは”俺”の存在にいち早く目を付けた。だから協力してもらった。」

 ”俺”と名乗る鐵月は、自信満々に話し始めた。それを”僕”と名乗る鐵月は、歯を食いしばりながら拳を握り締め、静かに聴いていた。

「お前を含めたすべての適性者には、いくつかの命令が刷り込まれている。と言っても、ごく単純なもんばかりだがな。」

 ”俺”の声に合わせて、背後に箇条書きで文字が現れる。

「職員がいない場では声を出さない。扉を閉じるまで動かない。特定の職員にしか近づかない。何をされても表情を変えない。許可なく能力を使わない。とまあ、こういった具合の命令がお前らには下されている。」

 ”俺”は”僕”を指し、”僕”の背後には無数の映像が現れる。

 映し出されたのは、命令にまつわる過去の記憶。”僕”にとって、その映像全てに心当たりがあるが、見ようとはしない。

「だが、俺は違った。俺はこの体にいるお前ともう一つの意識だからか、俺に命令の効果は無く、お前が全部背負ったみてえだな。そこは感謝してやるよ。」

 大きく身振り手振りをして嘲笑する”俺”が発言を終え、腕を下ろすと、全ての映像は消え、二人だけの静かな空間が戻って来る。

 数秒の間が開いた後、”俺”が真面目な表情で話し始める。

「そういえば、あの短髪の女も俺と似たような感じなんだよな…。」

「っ⁉」

 今まで黙っていた”僕”が驚愕で顔を上げて怪訝そうに”俺”を見つめる。

「あいつも俺みたいにもう一個の意識を持ってやがる。」

「瓜生さんをどうするつもりですか。」

「決まってんだろ?俺の計画に加わってもらう。まあ、あいつのもう一つの意識は、まだ全然表に出て来れそうにねえけどな。」

 それを聴いた”僕”は、憤りを覚え、無表情のまま左手に刀を作り、自分の意思を唱える。

「僕の友人を、人類の脅威になんてさせません。…僕があなたをここで(排除)します。」

 ”俺”は軽く鼻で笑った後、右手に剣を作り、臨戦態勢に入る。


 何もない広大な灰色の世界で、全く同じ姿形をした二人の瓜生が対峙し、いくつもの映像が浮いている中、片方は頭を抱えて叫びながら蹲っており、もう片方がそれを軽蔑するように見ている。

「君はいつもそうだよね。自分の感情に素直で、見たくない物、聴きたくない物に蓋をする。だから僕を閉じ込めたんだよね。」

 ”僕”は、息を切らして蹲る”私”に近づき、右手で左頬に触れながら口を開く。

「この火傷、何で負ったのか今まで気付いてなかったでしょ。あの白の人と黒の人との戦いもあまり覚えていないのだって、全部僕が助けてあげたからだよ。」

 ”僕”は右手を左頬から”私”の左肩に乗せ、囁く。

「僕に体を預けたらいいじゃん。そしたら、嫌な事全部、僕が負担してあげるよ。君は何もしなくていい。ただ、この体を僕にくれるだけでいいんだ。」

 息を整えた”私”は、左肩に乗った手を振り解き、言い返す。

「確かに私は、自分の好きな事、やりたい事にだけ目を向けて、認めたくない物や都合の悪い事を遠ざけてきた。」

 直後、”私”が顔を上げて叫ぶ。

「だから私は!あなたを認めたくない!人類を脅かすなんてしたくない!」

 ”僕”はそれを聴いてため息を吐く。

「君は強情で我儘だな。僕に任せれば辛い思いなんてしなくて済むのに。それとも、体を渡す相手が僕だから嫌なのかい?」

 ”僕”が話している最中で”私”は立ち上がる。

「あなただからとか、そんなんじゃない!私は、私のまま生きていたいだけ!」

 ”僕”は左手に金の棒を作り、”私”は右手にナイフを作って、両者強く握り締める。

「そっか。でも君は、クラスメイトである彼と僕の手助け無しで戦える?」

「手助け?」

 視線で”僕”を捉え、ナイフを構えたまま聞き返す。

「気付いてなかった?時々僕が戦闘の手助けしてあげてたのに。」

 ”私”には、本当に身に覚えが無かった。


 鐵月に向かって瓜生は声を上げた。

「私は、人類の共通の敵になんかならない!」

 そう言って瓜生は、右手にナイフを作って、強く握り締る。

「ふ…そうか…まあ、しゃあねえか…。」

 鐵月は、軽く鼻で笑った後、右手に剣を作り、臨戦態勢に入る。

 特異の限界

質量や体積は生成に融通が利くが、密度を操作することは基本出来ない。

空中に浮かせている時のみ、重力の影響を受けるかどうかを決められる。しかし、地面と接していない限り上に乗ることは出来ない。

空中に浮かせた物体をぶつけた時の威力は、本人の投擲能力に起因する。そのため、鐵月と白朝の戦闘では、実は白朝の大理石の方が速度は上回っていたが、硬度で劣っていたため、威力は鐵月の方が上。

操作可能範囲は、本人が視認できる距離であり、視力が良ければその分範囲が広がる。(ちな)みに、鐵月の裸眼視力は0.1のため、眼鏡を外すと、一気に範囲が狭まる。

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