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道徳の意味づけ  作者: 弾泥
第九章 自由意志と責任を意味づける (2)方法論
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免責ケース(2) ~「主観的目的および客観的目的との論理的必然性」の場合~

 次に「主観的目的および客観的目的との論理的必然性」がある場合について考えよう。

 この場合はしばしば「彼はそうせざるをえなかった」という言い回しを使ってから、「彼は押されたのだ」「彼にはそうしなければいけない事情があった」「彼にはそれしか方法がなかった」「彼にはほかの選択肢が残されていなかった」といった言い回しがなされることになる。


 本稿で主張している道徳原則を一文で表現するなら、「従来の道徳範囲に反しない限りで、道徳範囲を最大化しなければならない」ということができるだろう。この原則に付されている条件部(従来の道徳範囲に反しない限りで)は、たとえば他者のためにみずからの主観的目的に反する選択をすることは正当化されないということを意味している。

 この原則は双条件であって、ここから「道徳範囲を拡大することが自身の主観的目的を含む従来の道徳範囲に反する場合に限り、道徳範囲を拡大せずとも許される」という原則が導かれる。というのも自身の正当な利益に反する行動は、客観的目的にも反するからだ。この原則はすべての人に適用されるため、自分だけを特別扱いする利己的な考え方ということにはならない。

 これは条件が付されているという点で当然、条件が満たされないときには適用されないのだから、無条件に狭い道徳範囲を正当化する相対主義とも異なる。目的に反するとは目的に矛盾するということなので、主観的目的および従来の客観的目的と両立する方法がある限りは、やはり道徳範囲を拡大しなければならず、恣意的な判断は許されない。


 論理的必然性とはそれを否定すると矛盾が生じるということなので、その行為を否定すると主観的目的や従来の客観的目的に矛盾するなら、その行為には目的との間に論理的必然性があるということができる。これはほかによりよい方法が欠如しているという場合にも、当てはまる。その行為が実行可能な行為の中では最善なのだから、その行為を否定すると目的との間に矛盾が生じるからだ。

 こうした免責ケースには、たとえば脅迫を受けて行為を強制された場合や、より大きな不利益を回避するためにその行為をした場合も含まれる。どちらもその行為をしなければ、目的との間に矛盾が生じうるからだ。


 その行為が目的との間に論理的必然性のある行為だった場合、その行為が誰かに害を与える行為だったとしても、その責任を追及して非難や罰を与えようとすることは、正当化できない。もしほかによりよい有効な手段があったなら、その人は自発的に責任を負い、ほかのよりよい手段を選択するだろうことを期待できるからだ。

 もし社会(他者)がその人にその行為をやめてほしいならば、代替となるよりよい手段を用意する責任は、社会の側にある。そうした手段を社会が用意したのなら、かつその人が無責任な人でなければ、その人は自発的にその手段を選択するだろう。

 そうした代替手段が用意されないにもかかわらず、その人の主観的目的に矛盾するような行為を他者に要求することは、決して道徳的に正当化できるものではない。完全義務に反するような行為を他者に強制する権利など、誰ももっていないのだ。


 以上、免責ケースの①と②については、行為者は責任を負うことに意味はあるが、障害が除去されれば自発的に責任を負うと期待できるため、非難や罰を与えることには意味がないケースとなる。

 このケースで注意が必要なのは、免責とはいっても、責任を負うこと自体が否定されるのではなくて、責任の追及(非難や罰)が否定されるにすぎないということだ。ただし障害が除去されても、責任を負っていないことがその行動から推定される場合には、他者から正当に非難や罰を受けうる。

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