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レクイエム双響曲 〜声楽家と刑事のエクソシズム事件簿〜  作者: 路明(ロア)
第1楽章 Kyrie eleison:主よ、あわれみたまえ――血まみれのマリアと不協和音の双響曲

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鏡 2

「まあ。ぶっちゃけると、そうなんだけどよ」

 海東が芳ばしく焼き色をつけた食パンにバターを塗る。

 気持ちのいいパリパリ音を立ててかじった。


「名前は栗栖 陽音(くりす あきね)。いちお、きのう下校するとこ見てたんだけどな」


 ふたたび海東が黙りこむ。

「何ですか? 時間がムダになるので、言うべきことならさっさと言ってもらえませんか?」

 そう京也は急かした。

 何か気を使っているのだろうか。言わなければならないことなら、間を置いてもおなじだろうに。

「落ちついて聞け」

「落ちついてるように見えませんか?」

 そう返してパンにミルクジャムを塗る。

 洗濯機が全自動の動作を終えたむね知らせるデジタル音を立てる。洗面所のほうから三度ほどピー、ピー、と聞こえて消えた。

「えっとな」

 海東がパンを飲み下し宙を見上げる。



「腕、折れてなかった」



 太い眉をよせてそうと続ける。

 京也は落ちつきはらってミルクジャムをパンにていねいに塗った。

「よかったじゃないですか」

「ありえねえ。ボキッていったはずなんだ。柔道と逮捕術の練習でなんべんか経験してるから分かる」

 海東が言う。

 野蛮すぎて同意したくない経験談だ。

 京也は顔をしかめた。





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