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妄想死傷日記  作者: 花田えりんぎ


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家の中で

 


 〜火曜日〜


 今日は祝日。

 学校に行かなくて良いから家でだらだらと過ごす。家には私一人で、お母さんは仕事。お父さんはもう5年は会ってない。課題なんてやる気が起きない。いつの間にか夕方になっていて、何か食べたい、と思った私は林檎を見つけた。


 キッチンに立ち、包丁を持つ。

 この前、ニュースで殺害事件を報道していた。腹部を複数回刺され、出血多量で死亡。凶器は包丁。きっと私が今手に持っているような。


 これで刺されるなんて痛いに決まってる。

 凶器になる物なんてそこら中に売ってあるし、誰だって手に入れられる。



 みんな殺人鬼になれるのだ。

 これじゃあ、怖くてまともに生活なんて出来ない。無差別殺人なんて耳にするじゃないか。もう外なんて出られない。学校なんて行けたもんじゃない。家にいたい。



 でも、課題は明日が提出日。

 ちゃんと出しに行かないとね。

 林檎の皮もちゃんと剥こうかな。



 もし、今、私が包丁を落としたら。


 包丁の先で左手の手首を掠めながら、包丁が落ちる。私は薄く切れた左手首に気を取られて、足を避けるのが遅くなって、刃がちょうど足の甲を割るように鈍く切って、包丁から逃れようとして間に合わなかった私の足がばたつき、包丁は緩く落ちるのだ。

 足はカッと熱くなってドクドクと痛くて、左手はジンジンする。足の熱さと痛さに気分悪くしてジワジワと流れる血に焦りを感じる。血を止めようとタオルを探して、近くにあった台拭きを手に取るけど、傷を見たくなくて、触りたくなくて、台拭きを足の甲に乗せて、また痛みに悶えるの。



 痛いのは嫌だし、怖かったから、林檎は皮を剥かずに、8個に切って食べた。

 家も安全なんかじゃないね。



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