夕立のあとに
ミーンミーンミンミンミー ッジジ………
メーン メーン ドー コテえ~
青い空の入道雲が声を吸い込み、どんどん膨らんできている。
僕は夕立かな?と思いながら、外で素振りを続ける。
ッジジ…… ミーンミンミンミー……
これで練習を終わりにする。みんな気をつけて帰るように!
ギシギシ……ガラガラガラ……
「おい、お前ももう帰っていいぞ。よく頑張ったな。足を怪我してんのに無理して部活に参加しなくてもいいんだぞ?顔見せにくるだけでもいいんだぞ?」
顧問の茂山の頭頂部をみる。禿げてるのを気にし始めたのだろうか?な~んて考えていると
顧問の先生の顔が曇った。僕の顔が気難しかったのだろうか?
「わかったよ。お前の好きなようにしろ。俺は応援する。おっと、夕立になりそうだなみんなを早く帰らせないと」
そういうと大声でみんなに
「おーい、わちゃわちゃすんなー速やかに帰れよー!傘持ってねーだろー?」
茂山、その苗字通りとは違うんだね。禿山先生……後ろ、やべーよ……
ミーンミ………ッジジ……
鼻先に一雫降ってきた
僕は、うんざりして大声を出した
「おーい。みんなー、夕立だぞおー!」
ポタ……ポタ……ポタ…ポタ…
青い空が急に態度を変え始めた。……僕だけ帰れないじゃないか……
部室から影が出てきた
「わっ!」
僕は反射的にムッとした。
ショ ウ ブ
「尚武!お前、雨が降っちゃあ、帰れないな!だって、両手が塞がってるもんな!」
僕は忌々しく両手の松葉杖をみる……
ノボル
「まあね。ていうか、昇こそ傘持ってんのかよ。それとも濡れて帰るか?」
ぶっきらぼうな態度に機嫌を損ねたのか僕を見下ろし始めた
「はっ、お前はもう剣道の大会に出れねーんだぜ?俺は三年の先輩方が抜けたら俺がエースだ。そして、お前の幼馴染もゲットするんだぜ?完璧だろ?」
なんであいつが出てくるんだ?あいつは関係ないよ。ていうか、君のことが好きなはずだから。そんなにうじうじすんなよ。
僕がイラついて黙っていると満足そうに
「何も言い返せねー見てーだな、今日は楓ちゃんと相合傘だな」
楓はいつも折り畳み傘持ってるけどね…とは言わずそわそわしている昇を無視して、階段に座り、素振りを始める
ブン……ブン……
ガラガラガラ………
ドアが放たれた瞬間、昇を纏う雰囲気が変わった
「あれ?尚武はわかるけど、昇くんなんで帰ってないの?傘、持ってきてないの?」
不思議そうに女子部員たちは見ている
昇は少し深呼吸して真面目な顔をし、楓を一直線に見ている
ザー……ザー……ポツ……ポツ……
あ、雨止むな……空気読めよ、雨
「あ、あのさ、やっぱなんでもない、尚武の話し相手になってたんだよ」
ほうら、雨が止んだから、いつもの意気地なしじゃあないか。楓は少し微笑んだ
「よかったね!本田くん!雨、上がったね!傘、持ってないんでしょ?」
楓にそう言われたからか、傘をさっと隠し、カッコつけようとしてカッコ悪い顔をしながら
「あ、ああまあね。こいつとの会話はいまいちだったからな。だって、素振り始めちまうんだぜ?じゃあな!」
早口でそういうとすぐさま帰ってた。転ばないといいけど……
女子部員もそれぞれ散り散りに帰っていく
バイバーイ! また明日ー!晴れてよかったー
一方楓の友達、日向が昇に対して毒を吐いていた
「全く、何よあいつ。楓のことが好きなの見え見えじゃないの!あんたにもチャンスがあるんじゃない?楓。ま、あたしは好まないけど」
焦ったように楓が隠す。
「ち、違うよ。別に好きっていうか……」
ヌルッと僕が会話に入る
「ま、僕も応援するよ。あいつとはクラス一緒だし、なんかよく話しかけてくるし」
日向が顔を歪める
「あんた、勝手に入ってくんじゃないわよ。行こう、楓」
「えっ、でも、日向。私たち家近いじゃん。手伝ってあげようよ」
日向が僕を睨んだ
「はあ、楓が優しいからって勘違いしないでね?」
僕たちって幼馴染だよねえ……
「わかってるって、いつもありがと、日向、楓」
僕は、地面を見た。体操着の短パンから、覗いている金属を情けなく光っていた。




