第59話 イオ第2学園に入学・14
俺は新入生代表として挨拶する為に、壇上に上がって口を開いた。
「新入生代表のハヤト・ヴァーチです」
さて、一応挨拶の内容は考えて来たけれど……目の前に居る生徒会長さんが遠回しに俺を挑発して来たからな。
ここはアドリブで行こうか。
「私はこのイオ第2学園に入学出来た事を大変嬉しく思います。新入生代表として、一人の男として、この学園の皆様と切磋琢磨し、より高みを目指します」
俺が男だっていう事は言っとかなきゃね。
「そして、私は今年の魔法祭代表メンバーになる事を宣言すると共に……在学期間中は戦闘において、私はただの一度も敗北しない事をここに誓います」
俺の言葉に新入生がザワザワと騒がしくなる。生徒会長を見ると、表情は変わらないのに先程壇上で見た時とは明らかに違う、血に飢えた獣のような眼をしていた。
やっべ……挑発に乗せられたかな?
この学園で、私に勝てる者は居ないと公言していた生徒会長だ。そして祝辞の挨拶でわざわざそんな事を言う理由として、在校生では相手になる生徒が居ないのではないか?
つまり新入生の中から、自分とまともに戦える相手が居るかもしれないと期待して挑発したのだと思う。
その挑発に俺が乗ってしまったが故の、あの眼から漲る闘志なのだろう。
まあ後悔はしていない。生徒会長と戦う機会があるならば戦ってみたいし。
それに……生徒会長を見てると何か違和感があるんだよね。でも、これだっていう物は思い付かない……何が引っかかるんだろう?
…………今いくら考えても思い浮かばないな。
俺は挨拶を済ませて自分の席に戻った。そして入学式が進められて、また指示通り立ったり座ったりするだけの入学式がやっと終わる。
入学式が終わると、俺のクラスの担任であるナグルドに先導されて教室へと戻った。
「とりあえずは入学おめでとう。俺がこのクラスを受け持つナグルドってもんだ。担当教科は主に魔法演習と武術演習……まあ戦闘に関する教科だな。さて……知ってる者も多いと思うが、この学園の特色を教えておく。この学園はーーーー」
ナグルドの説明ではこの学園は本当に実力主義らしい体制を取っている事が説明された。
1つ、授業、若しくは放課後に学内序列戦が行われる。
これはランキング制になっており、下のランキングの者が上のランキングの者に挑戦する事が出来る。
ただし、上のランキングの者が下のランキングの者に挑戦する事は出来ないらしい。
他にも色々と規定があるみたいなのだが、細かい部分は自分で確認しろと言われてしまった。
2つ、魔法祭の代表メンバーは学年に関係無く、学内序列上位5名で構成される。
滅多に無いらしいが、序列トップ5に入ってても魔法祭出場を辞退、若しくは出場停止になる場合もあるらしく、その場合は出場しない者を抜いた上位5名で構成されるようだ。
3つ、学内序列とは別に、殆どの学園で共通化されている生徒の総合力を評価する学園定期試験にて、成績に応じてA〜Dランクに割り振られる。
なんとこの定期試験でAランク判定を貰い、魔法祭に出場した生徒は任意で学園卒業出来るらしい。
とりあえずの指標は学内序列1位か。生徒会長があんなに飢えた眼をしてたのはもしかして、序列1位で自身が挑戦する事は出来ないのに、挑戦しにくる生徒が居なくて戦えないのかな?
まあそのうち生徒会長とは戦えるだろう。
「ーーーーつ〜事でとりあえず全員自己紹介な。机に番号書いた紙張ってあんだろ? その順番で挨拶してけな」
俺が物思いに耽っていると、いつの間にか自己紹介する話しになってた。
俺の机は……1番か。…………ん? 1番?
……俺からか!!
周りの生徒が誰も自己紹介しない事を訝しんでキョロキョロしてる中で、俺は立ち上がる。
「ええ〜、ハヤト・ヴァーチです。ヴァーチ家の次男で、こんな見た目でも入学式で挨拶した通りに男なので間違えないでくださいね? 皆さんよろしくお願いします」
とりあえず無難で良い自己紹介だったのではないかな?
「ほら次々自己紹介してけ〜2番のやつ〜」
「は、はい」
声がした方を見ると、立ち上がったのはリアンだった。席順と番号はバラバラなのかな? リアンの席は俺から少し離れている。
「リアン・ガナエリです。本を読むのが好きです。戦闘に関してはあまり自信ありませんが、魔法祭に出場出来るよう頑張ろうと思ってます! 皆さんよろしくお願いします」
「次3番」
「カレン・ファーナルと申しますわ。私はファーナル家の次女で、目標はエーナお姉様を越える事ですわ。よろしくお願い致します」
「ん? エーナってぇと、序列3位のエーナ・ファーナルか?」
「ええ、そのエーナ・ファーナルです」
カレンのお姉さんはこの学園の生徒で、しかも序列3位なのか。そしてカレンはお姉さんを越えたいと……結構ハードル高そうな目標だな。
「なるほどなぁ。次、4番」
「タニスト・ガナエリだ。ガナエリ家の次期当主だ。俺は並外れた魔素量を持ってると共に、魔法学の知識も深い。俺と親しくしたい者は分をわきまえて接してくるように」
相変わらず嫌な奴だなこいつ。誰がこんな奴と親しくしたいなんて思うんだ?
こうして自己紹介は進んでいった。ちなみに気にしてなかったけど、1クラス40人だった。
「よ〜し、自己紹介終わったな。ここで良い事教えてやる。今自己紹介して貰った順番……つまり机に張ってあるその番号が、入試成績で判断されたこのクラス内での序列だ」
お? って事はリアンがこのクラスで2番目に優秀なんだな。
「これはあくまでも入試成績で決まった序列で、他のクラスとは関係ない。だが、これからの学園生活で始まる序列戦では一つの目安になるだろう」
なるほど、確かに周りの入試成績を把握する事で、今後序列戦をする時に同じクラスの生徒が勝利して上がったとすれば……自分がどのくらい上と戦えるのか、という指標になるな。
ナグルドの説明が終わる頃に懐かしい鐘の音が校内に鳴り響く。
「まあ細かい事はまた今度説明してやる。じゃあ今日はこれで解散! 気を付けて帰れよ〜。あ、ハヤトとリアンはそのまま残ってろよ?」
見た目通りにホント適当な人だよな。
さて、この後は『限定解除』を教える前の選別作業をする予定だったな。
次の更新は7月9日の19時〜19時20分予定です。




