第51話 イオ第2学園に入学・6
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「あっ、ハヤトくん!」
俺が試験終了後に校門近くでリアンを探していると、リアンが先に俺を見付けて駆け寄ってきた。
「お疲れ様リアン。試験はどうだった?」
まあ心配はしていないけれど、一応聞いてみる。万が一なんて事もあるしな。結果が張り出されるまでは結局わからないけれど。
「バッチリだったよ! 魔力測定だけはやっぱり少し良くなかったけど……」
リアンは魔素量があまり多くない。それがガナエリ家で孤立した1番の理由でもあるらしい。
「いくらだったんだ?」
「1500くらいだったよ? ハヤトくんとの訓練でかなり増えた実感はあったけど、やっぱりこんなもんだよね……」
俺が通常時で3万5千……まあ俺と比べるのがそもそも酷な話だろう。あれ? リアンは『限定解除』の劣化版が使えるけど使わなかったのだろうか?
「リアンは限定解除使わなかったのか?」
リアンは俺の言葉を聞いて目を見開く。
「ハヤトくん限定解除を使って計測したの!?」
「使ったよ? ああでも……俺のところで試験管してたナグルドっていう職員が言うには、師匠から俺の事を聞いてたみたいでな。筆記の最後の問題は俺の為に用意された問題だったらしいし、使わされたと言った方が正しいかな」
そこでリアンは考え込み始める。何を考えているのだろうか? そのまま少し待っているとリアンは口を開いた。
「……じゃあもしかしてハヤトくん……最後の問題を解いちゃったの?」
「ああ解いた」
リアンに話す気は無いけれど、タニストに絶対負けられないしな。
「…………はぁ……」
リアンが深い溜め息を吐く。いやまあ俺もわかってるんだよ? あれを書いたらこの後が色々と面倒になるかもしれない事くらい。でもタニストと勝負する事になっちゃったから仕方が無い。
「何かあればその時はその時だろ? 書いてしまった物はもう仕方が無いんだからあんまり気にするな」
リアンは再度俺を見て溜め息を一つ溢す。
「……ハヤトくんって少しユーエさんに似て来たよね」
「なん……だとっ!?」
それはかなり心外だ。俺が師匠みたいに脳筋なはずが無い。……あれ? でも今日俺がやった事を振り返っていくと……タニストのやすい挑発に乗って、後の事を考えずに『限定解除』を書いて、ナグルドと接近戦で殴り合って…………
あれ? 俺もしかして脳筋?
いや、そんなはずは……この思考は止めよう。精神衛生上よろしくない。
「ふふっ、でもそんなハヤトくんもかっこいいよ?」
リアンがそんな事を口走る。その笑顔は見る者を惹き付けるほどに可愛い。事実、周りの受験生の男共がリアンをチラチラ見ている。
ちなみに俺もチラチラ見られている。おそらく可愛い女の子として、だが。
「あ、合格発表が張り出されるみたいだよ!」
リアンが指さす方を見ると職員が校門横にホワイトボードのような物を運んでいた。ホワイトボードにはかなり大きい張り紙がされている。
「見に行くか」
リアンは即座に「うん!」と答えて俺の手を引っ張り歩き出した。
俺の受験番号は114番。リアンは115番だ。ホワイトボードで張り出されている合格発表はどうやら上から成績順に載っているみたいだな。
「お? 俺が主席か」
ぶっちゃけ自信があったからそんなに驚きは無い。元々は手を抜く気満々だったんだけど、タニストとの勝負が決まった瞬間にその選択肢は消えた。
「私もあったよ! 8番だった!」
「おめでとうリアン」
「ハヤトくんもね!」
俺とリアンは2人でお互いに褒め合う。あ、そういやタニストはどうだったのだろうか。主席を俺が取った時点で勝ちが決まったけど、一応確認しておこう。
どれどれ……あ、ダメだわ。俺はタニストの受験番号知らないやん。このままタニストに会いに行くのもなんか嫌だよな……リアン居るし。
「おい、ハヤトちゃん? どうせ俺の勝ちだろうけど確認しに来てやったぞ」
そんな俺の考えを無視するように背後からタニストの声が聴こえてきた。てか俺とナグルドの戦闘を見といてよくこんな自信満々で居られるなこいつ。
俺は振り返って素っ気無く受験票をタニストの眼前にかざす。
「114? …………なっ!?」
どうやらホワイトボードを確認して俺の受験番号を見付けたようだ。俺の隣ではリアンが訳もわからずにオロオロしている。
「タニストくん。俺の勝ちなんだから約束は守れよ?」
「…………ちっ!」
タニストは苦々しい顔をして舌打ちをしたと思ったら、何も言わずに振り返って俺達の元を離れた。
「……ハヤトくん、タニストお兄様と何かあったの? 俺の勝ちって言ってたけど……何か勝負でもしたの?」
リアンが不安そうに上目遣いでそんな事を聞いてくる。状況が状況だから今は問題無いが、油断してる時にこんな事をされたらクラっと来ちゃいそうだな。
「……何でもないよ。俺が勝ったんだし、リアンは気にするな」
そう言って俺はリアンの頭を撫でる。リアンは少し恥ずかしそうにしながらも微笑んだ。
「じゃあそろそろ受け付けで合格者用のガイド冊子貰って帰るか」
俺とリアンはそのままホワイトボード横にある受け付けの職員の元に向かう。俺とリアンがそれぞれ受験表を職員に見せる。
「あ、ハヤトくんですね? 君は少し校長からお話があるそうなので、職員棟に行って貰ってもいいですか?」
校長から話? ……ああ、多分『限定解除』の事だろう。リアンも連れてっちゃダメだろうか? 1人で居させるのはタニストの件もあるし、少し心配なのだ。
「すいません、リアン……この子も一緒でいいですか?」
「え? ああ、多分問題無いと思います。職員棟は右側に見える少し小さい建物ありますよね?」
俺は促されるままに右を見る。確かに他の建物と比べて小さ目の建物があるな。
「あれですか?」
「そう、あれです。ではよろしくお願いします」
「じゃあリアン、行こうか」
リアンは頷いて俺に合わせて歩き始める。直ぐに職員棟に着いた俺とリアンは入口の前に立ってノックした。すると直ぐに教職員が出迎えてくれる。
「えっと、何か用かい? あ、もしかして君がハヤト・ヴァーチくん…………くん? ちゃんかな?」
ああうん。初対面だしね。ちゃん付けで言われても仕方が無い。
「くんで合ってます。校門の受け付けで此処に来るように言われました」
「そっちの子は?」
教職員がリアンを見て言う。
「この子は俺と一緒に受験したリアン・ガナエリです。一緒に暮らしている家族ですね」
「リアンです。よろしくお願いします」
リアンがペコリと頭を下げる。それを見た教職員は納得したのか、建物の中に入るよう促す。俺とリアンは案内されるままに付いていき、少し豪華な扉の前で教職員は立ち止まった。
「ここが校長室だよ」
そう言って教職員は扉をノックし、「失礼します。例の子をお連れしました」と言って扉を開ける。
「おぉ、来たか……ん? 2人とな?」
中に居たのは白髪で真っ白なヒゲを伸ばし、ローブを羽織った老人だった。まさに老魔法使いというイメージがピッタリのお爺さんだな。
「初めまして。俺がハヤト・ヴァーチで、こっちが俺と一緒に受験したリアン・ガナエリ……俺の家族です」
「リアンです。初めまして」
リアンはまたもペコリと頭を下げる。
「おお、これはご丁寧にすまんの。ワシはフォンダ・ジレスという。このイオ国立第2魔法学園を任されている校長じゃの」
そう言ってフォンダと名乗る校長が軽く頭を下げる。……流石は国立の学園を任されている人物と言うべきか、老人とは思えない程に隙が無い。挨拶している最中ですら周りに気を配っている感じがする。
頭を上げてフォンダ校長は俺をジッと見つめる。そして神妙な顔をして口を開いた。
「流石はあのババァの弟子じゃな。ナグルドを倒したというのも納得じゃて」
「ブフッ……くっ……」
俺は何を言われるのか身構えていた。だからこそ思わず吹き出してしまった。
師匠をババァ呼ばわりするとは……確かにババァだよな? あの人絶対に正確な年齢を教えてくれないけど300歳越えてるもんな。
俺がくすくす笑っていると、リアンがジト目で俺を見ている事に気付いた。これはとても不味い。後で必ず笑った事を師匠に言われないよう口止めしなければ。
俺はこの状況は不味いと判断し、空気を変える為に喋る事を選んだ。
「それで、……ぷっ……俺に何か、くっ……ご用です……か?」
「…………お主、笑いを抑え切れておらんぞ……」
「ハヤトくん? 女性の年齢の事で笑っちゃダメなんだよ? 帰ったらユーエさんに言うからね?」
あ、これは本当に不味い。どうしよう。……後で考えよう。
「もういいかの?」
俺が落ち着くのをフォンダ校長は待っててくれたようだ。
「はい、大丈夫です」
「では呼んだ理由を説明するかの。その前に……リアンちゃんは、あの技術の事を知っとるのかね?」
あの技術とは、やはり『限定解除』の事だろう。もちろんリアンは知っている。フォンダ校長の問いにはリアンの代わりに俺が答える事にした。
「知ってますよ。なので話しても問題無いです」
「そうか。ハヤト・ヴァーチよ……『限定解除』と言ったか? その魔法をどうやって覚えたんじゃ? お主は龍人種と会った事があるのか?」
龍人種? 一応書物には居ると書かれていたし、ゲームのGFOでは確かに居たけど……俺はこの世界に転生してから今まで一度も見た事が無い。
「龍人種というのには会った事はありませんよ。『限定解除』は独学で覚えました」
まあ実際GFOでは龍人種に習っている設定だったから、ある意味会ってると言えなくも無いんだけどな。
「…………そうか……」
フォンダ校長は遠くを見るように少し寂し気な顔を見せて答える。龍人種と何かあったのだろうか? 確か龍人種って数がかなり少ないんだよな。もう絶滅したかもしれないとさえ書物では書かれていたと思う。
「……今日呼んだのはそれを確認したかったのと、その魔法を世に広める許可を貰いたくて呼んだんじゃ」
世に広める? この『限定解除』をか? 危険過ぎると思うんだが……リアンに教えた時も最初は色々と危なっかしくて、絶対に一人では練習しないように注意していた。
俺は今でこそ問題無く使えるが、あの魔法は身体への負担が凄まじいのだ。
「あまりオススメは出来ませんね。魔素のコントロールがとても難しい上に、未熟だと身体へのダメージが凄まじいですよ? 最悪死ぬ事だってあると思います」
「そうなのかの? あのババァはそんな事言っておらんかったのに……あっ」
フォンダ校長はしまった! という顔をして喋るのを止める。
言質が取れたな。俺の『限定解除』の情報を流したのは師匠だ。そして師匠は自分が教えた事を口止めまでしていたのだろう。
「…………ワシが口を滑らせたのは黙っといてくれんかの? あのババァとはたまに酒を一緒に飲む仲なんじゃが……あいつ、怖いからのう……」
なるほどな。酒の席で師匠は口を滑らせたのか。……ふむ、リアンにもし笑ってた事を師匠にバラされた時の為に保険として、とりあえずは黙っておこう。
バラされたら逆にこのネタで言いくるめてやる。
「わかりました。とりあえずは黙っておきます」
そう、とりあえずは……ね。
「助かるわい。……それで『限定解除』は無理そうなのかの?」
そう言うフォンダ校長の眼には、引き下がる気など全く無いという強い意志が込められているように見えた。
明日も19時〜19時20分頃に更新します。
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