第50話 イオ第2学園に入学・5
ついに50話まで来ました!
これも読んで下さる読者様方のおかげです(^^)
最初はこんなに続くと思っていなかったのですが、増えていくブックマークとアクセス数が嬉しくて頑張れました!
これからも頑張るので応援よろしくお願いします!
そろそろ俺の出番だな。試合をずっと眺めてて気付いた事だけど、タニストがあれだけ自信満々な理由がわかった。
他の受験生に比べて確かにタニストは抜きん出ている。神童と呼ばれるだけの事はあったというわけだ。
お? ついに俺を抜いた全ての試合が終わった。やっとか。俺が最後だけあって、結構待たされたな。
「次、ハヤト・ヴァーチ!お前は俺と模擬戦をする訳だが、俺とお前の模擬戦ではルールを改訂する」
は?
突然ナグルドがルール改訂を宣言してきた。
「ルール1はそのままだが、ルール2は無しだ。より実戦に近い形になるようにファンタズマのレベルも下げる。……ああ、ファンタズマってのは魔法が人の身体に干渉する力を下げる魔法領域の事でな。つまり、レベルを下げるとある程度はダメージが通るからな?」
ルール2は、武器の使用及び殺傷目的である魔法以外の技術は使用禁止……だったか。つまり事実上の何でも有りというわけか。しかし……黒刀・羅刹は必要になると思わなかったから持って来てはいない。
「すいません。何故突然ルールを変えたんですか?」
受験生の一人がそんな質問をナグルドに投げ掛ける。
「まあいくつか理由はあるんだが、敢えて言うならお前らヒヨッコ共に本物の実力者のガチバトルってのを見せてやろうと思ってな。ハヤト! お前はこのルールで構わないか?」
どうする? 黒刀・羅刹は無い……それにナグルドは吸血鬼を素手で倒したと言っていた。そこから予想するならばガチガチの肉弾戦タイプっぽい。名前もナグルドって、如何にも殴られそうな名前だし……いや、名前は関係無いか。
少なくとも俺には少し不利なルール改訂だろうか? いや、関係無いか。多少不利な状況なんてのは実戦なら当たり前にある。
俺は考えながらナグルドの顔をチラ見する。俺を見ながら相変わらずニヤニヤしてるな。なんかあの顔ぶん殴りたくなってきた。タニストの件でもストレス溜まってたし、丁度いいか。
「わかりました。それでいいですよ」
「よっしゃ! じゃあさっそくやろうぜ?」
俺とナグルドは試合を行う為に真ん中の方に歩いていく。そしていざ試合が始まろうかという直前、ナグルドが口を開いた。
「安心して全力で来いよ? 少なくとも、近接戦闘で言えば俺はユーエにも負けねぇからな?」
マジか? 師匠と近接戦闘でやり合えるって相当ヤバいぞ?
「それは流石に言い過ぎじゃないですか?」
信じられずに俺はそんな言葉を発してしまう。ナグルドの保有している魔素量を何と無く感じてはいるが師匠にはもちろんの事、俺にも届かないだろう。
「はっ! やればわかんだろ? さあ始めるか」
俺は身構える。ナグルドも身構えて開始の合図を待つ。……そして遠くから試合開始の合図が発っせられた。
瞬間。ナグルドの姿が霞んで消えた。
消えた!? 転移か? いや、これは……転移じゃないな。霞んだって事は単純なスピードによるものか……俺の目でも追えないなんてヤバいな。そしておそらくこのパターンは……
俺はナグルドを見失った直後には言葉を発していた。
「防御!!」
俺は即座に物理・魔法障壁の重ね張りをする。その時には既に背後に凄まじい威圧感を放つナグルドが、横薙ぎの蹴りを放っていた。
バチチチッ!!
物理・魔法障壁と蹴りがぶつかり合って凄まじい音が響く。やはり速攻で試合を終わらせに来たか。これは試験だろ? 実力見る為に試したりする気ゼロのガチじゃないか。
「やっぱりな。これじゃ決めらんねぇか。ユーエの弟子なだけあるわ」
「良いんですか? 俺の実力見る前に終わらせにきて。これ試験でしょ?」
喋りながらもお互いに油断無く相手の隙を伺う。なんだあれ? ナグルドの全身が放電してる。雷の魔法を纏っているのか?
「はっ! 良いんだよ……そらっ行くぞっ!」
そうナグルドが言った瞬間、またしても姿が消える。またか……恐ろしく速いが、障壁で防げる程度の攻撃力しか無いのでは俺に対してあまり意味が無い。
俺はまた「防御」と言って障壁を張る。そしてナグルドが現れたのは俺の目の前。
「これならその邪魔な障壁もっ……破れんだろっっ!!」
ナグルドの右拳が明らかに異常な放電を発している。
まずっ……!
バッキィィインッ!!
障壁を突き破ったナグルドの拳は俺の腹目掛けて振り抜かれたが、ギリギリで俺は自分の腕を拳と腹の隙間に滑り込ませる。
「ぐっ……がはっ!」
ピチャッ
俺はそのまま地面を滑るように押し込まれながらも耐えたが、口から血が漏れ出てしまう。
今のは危なかった……咄嗟に腕を入れた事で何とか耐えれたけど、直撃だったならば立っては居られなかったろう。
俺の口から漏れ出る血を見て、遠くで見ている審判が試合を止めようと口を開き掛けるが……
「まだやれますっっ!!」
俺はそう叫んでその口を閉じさせる。
やられっ放しじゃ終われないよな。俺はまだ障壁以外何も使っていない。
「おいおい大丈夫かよ? ユーエの弟子ってのはそんなもんなのか?」
またもニヤニヤした余裕の笑みを浮かべてそんな言葉を発するナグルド。本当に今日はムカつく奴によく出会うな。いいぜ? お望み通りに見せてやるよ。
「ぐっ……油断、しない方がいいですよ? ……限定解除っ!」
「お? ついに本気になったかよ! さて、お手並みはいけ…………それはなんだ?」
俺は魔闘衣を両腕に纏い、俺の周りには目に見える程に濃い魔素が漂う。
「さて、何でしょうかね? いきますよ」
俺は目を閉じて周囲に張り巡らせた魔素を広げていく。そしてその魔素がナグルドに触れた瞬間。
「転移」
ナグルドの目の前に転移した俺は魔闘衣で覆われた拳を振り抜いた。
警戒していたナグルドは素晴らしい反応を見せて、恐ろしい移動速度で即座に距離を取る。だが、これは予定通りだ。
俺は拳を振り抜きながらも「転移」と再度発していた。俺が現れたのは距離を取ったはずのナグルドの背後。
「お返しですっっ!!」
「なっ!?」
ズッドンッッ!!
俺の拳は見事にナグルドの腹を振り抜いて、ナグルドは吹き飛んで行く。ハッハッハざまあみろ。今のはまさにジャストミートだったな。
しかし、ナグルドは吹き飛ばされながらも、バランスを取ってしっかりと着地する。腹を押さえながら血を吐いてはいるが、眼は明らかにやる気満々だ。
「今のは……ビックリしたぞ。どうやって俺のスピードに付いてこれた?」
俺は未だに目を閉じたまま、周囲に広げた魔素に集中する。これは俺が開発した魔法であるが、魔法というよりは技術に近い。本来なら身体の外にある魔素はおおよそ……何と無くしか感じられないが『限定解除』中の俺ならば、その膨大な魔素を周囲に広げる事で魔素に触れた物を感じ取る事が出来る。
その副産物として、転移先の座標が魔素領域内に限りイメージの必要が無くなる。代わりに常に目を閉じて集中してなきゃならないけど。
この魔法を俺は『完全領域』と名付けている。ネーミングセンスは気にするな。
まあもちろんナグルドにそんな事を説明してやる義理は無いから、俺はこう答える。
「教えると思いますか? 転移」
今度はナグルドの上空に転移して拳を振り落とす構えを取る。
「ははは! 芸がっ……ねぇぞっ!!」
ナグルドは即座に反応して上空の俺目掛けて軽くジャンプをして上段廻し蹴りを放ってきた。
足を地面から離したな? 俺は即座にまた転移する。転移先はナグルドが着地するであろう場所。
「そうですか?」
そう答えながら俺は拳の魔闘衣に周囲の魔素まで回収して力を込める。目を開けてナグルドを見据え、俺が全力で拳を振り抜こうとした瞬間……
「まっ! 待てっ!! 参った!!」
ナグルドが身の危険を感じたのか、敗北宣言をして試合は終わりを告げた。
ナグルドの身から放電していた魔法が解かれたので、俺は膨大な魔素で治癒魔法を唱え、腹の傷を治してから限定解除から通常に戻る。
「かぁぁっ、ユーエの弟子ってだけあるなやっぱ。てかなんだ? 治癒まで使えんのか? 俺のも治してくれよ」
「ご自分でどうぞ。もう限定解除使ってないですし」
「ちっ! ケチくせぇなぁおい。まあ何はともあれお疲れさん。この後の予定話すからヒヨッコ共の前に戻るぞ」
そう言ってナグルドは歩き出す。俺もそれに付いていくが、受験生から大歓声が湧き上がった。
「何だ今の戦い!!」
「すっげぇぇえ!!!」
「うぉぉぉぉ!!!!」
「あの子彼氏とか居るのかな?」
「俺アタックしてみようかな……」
「あいつ男らしいぜ?」
「マジで!?」
「俺……男でもいいや……」
おい最後のやつ。いやまぁどうでもいいけど。
「静まれヒヨッコ共! 今見た通りに……と言っても大して見えてはいなかったと思うが、本物の実力者の戦いとはこういうもんだ! これにて試験は全て終了となり、1時間後には校門で成績と合格者が張り出される! 落ちる奴も受かった奴も、今の光景を忘れずにいろよ? そして俺らと同じくらい……いや、もっと上を目指して自分を磨け! 以上、解散!」
こうして全ての試験は終わりを告げた。試験が終了し、職員に促されて受験生全員が校門近くにて待機する。
他の建物で試験を受けていた受験生達も続々と集まって来ている。
さて、リアンはどうだったのかな? 俺はリアンを探しながら合格発表を待つ事にした。
明日も19時〜19時20分頃に更新予定となります!
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