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制御システム

「これは何かの制御用のマジックアイテムですね」


 遅れて上沢高校に到着した呉夫は、戦場の周囲からおかしなエネルギー反応があることに気づき、ソレを調べようとしたところ、そのエネルギーを発していた『何か』がヒト型になって襲い掛かってきたのだ。


 同行していた眼鏡の栄子こと彼の妻の記憶と人格を持つドッペルゲンガー、純華と呉夫からの連絡で駆けつけたラードン一味のケルベロス。


 そして異常に気づいたボーイッシュな栄子こと、ミキの3人がかりで倒すと、ヒト型から元の石板に戻った。


「今、暴れている空亡と何か関係あるかもしれませんね。どんなマジックアイテムなのかわかりますか?」


「調べてみますけど、できれば術師の方にも見てもらいたいですね。この石板に書かれている術式について、知りたいです」


「心当たりを当たってみます」


 そう言ってラードンは房士のスマホを勝手に取り出し、どこかに電話をかける。


「ああ、お取り込み中すいません。走矢くん。今、空亡との戦場の北側にいるんですけど、ちょっと興味深いものを見つけまして。雨上 由利歌(ウガミ ユリカ)あたりに見てもらいたいんですけど……」




「逃げられてしまいましたか。見た目によらずタフですね」


 チュパカブラと交戦していた柚木島 深完(ユギシマ ミカン)


 戦いは圧勝だったが、一瞬のスキをついて逃げられてしまい、深いため息をつく。


「助かったぜ、嬢ちゃん」


 息を切らせて風香達のもとにたどり着いた元蔵が感謝の言葉を述べる。


「礼には及びません。(のが)してしまいましたし」


 そんな彼女のスマホが鳴る。


 相手は純華でマジックアイテム探しを手伝って欲しいという内容だった。




「これはたぶん、空亡を制御するための物だわ」


 石板に刻まれた術式を解読する由利歌。


「仮説だけど、この術式と対になる術式を空亡に組み込む事でソレを制御する。私の見解も呉夫さんと変わらないわ。ただ1つ気になるのは、この制御方法だと空亡に組み込まれた方が何らかの理由で損傷すると、制御不能になってしまうの。かなり危険な方法で空亡を操っていた事になるわ……」


 由利歌についてきた走矢と桜達、そして深完と共に合流してきた元蔵達は息をのむ。


「しかし、制御の術式が生きているなら利用しない手はないでしょう。深完のセンサーにあと5つ、この石板と同じマジックアイテムの反応があります。おそらく抵抗されるでしょうから、倒して術式を上書きできればあの空亡をどうにかできるかもしれません」


「そうね。とにかくこのマジックアイテムをこちら側の制御下に置きましょう。封印、弱体化、自壊。これらが可能になれば勝ち筋が見えてくる。ただ、空亡と戦っている方もどれだけ持つかはわからなわ。石板の上書きは手分けして(すみ)やかに(おこな)いましょう」


 呉夫の言葉に同意したうえで由利歌は作戦を伝える。


「石板が変化したヒト型はアタシとそこのドッペルゲンガー2人の3人がかりで結構、手こずった。手分けするにしてもそれなりの戦力じゃないと返り討ちに合うぞ」


 ケルベロスの意見を聞いて、由利歌は戦力を振り分ける。


「ありがとう、お嬢さん。これで戦線復帰できるわ」


 咲花の治療を受けた風香が、ダメージを受けた方の翼を羽ばたかせて礼を言う。


「久はまだ安静だな」


 傷はふさがったが、意識の戻らない長沼 久(ナガヌマ ヒサシ)を横目に元蔵が呟く。


「石板は空亡の居る場所を中心に北、北東、北西、南、南東、南西の6ヶ所に配置されているわ。残り5ヶ所。北東には最初にヒト型と戦ったケルベロス達が、北西は私が行きます。」


「姐さん1人で大丈夫か?」


 と、元蔵。


「ヤバくなったら引くなり応援を呼ぶなりするわ。元蔵と風香の2人で南西。桜ちゃん達と深完ちゃんは南東をお願い」


「南側は? 他の人達に頼みますか?」


「そこは難しいところなのよね。向こうの戦力をあまり()ぎたくないのと、手早く石板を上書きしたいのと……」


「坊主、俺らが2ヶ所回るから心配すんなって」


 そう元蔵が言うと、その横で風香が頷く。


「石板の状態に戻したらこの呪符を貼って。そうする事で私が遠隔で術式を書き換えられるの」


 由利歌から呪符を受け取ると、各々担当する石板のもとに向かう。




「参りましたね。手も足も出ないとはまさにこの事です……」


 深完の猛攻から逃れて、上沢高校の近くにある住宅街に身を隠すチュパカブラとその身体を乗っ取ったビホルダーが愚痴る。


「だから言ったでしょ。あのクグツ女、私との相性、最悪なんだから……」


 身体を乗っ取られたチュパカブラが、経験から深完の厄介さを説明する。


「おや?! 石板の1つが自衛システムを発動させましたね」


「例の制御ユニット? ずいぶん、速かったわね。で、どうするの? 絶滅陣の件」


「石板の1つが上書きされてしまったので、絶滅陣はおあずけです」


「随分と諦めがいいわね」


「まぁ、アレ(絶滅陣)は僕がどうしてもやりたいってわけでもないんで……」


「なにそれ?!」


「まぁ、おいおい話しますよ」




 一方その頃、非戦闘員である小夜子、舞、夢子は校内に残っていた一般の生徒や教員を校舎から避難させていた。


「あれ、あの人……」


「どうしたんてすか?」


 何やら見覚えのある人物が建物に入っていくのを目撃した夢子。


「ちょっと、ここお願い」


 夢子はその人物の後を追う。

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