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母はヴァンパイア  作者: 見えてる地雷
母はヴァンパイア
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激突4

「子供相手に神話級の妖が随分とみっともないわね」


「ヴァンパイア風情が! 舐めた口を聞いたことを後悔しろ!!」


 メデューサは、もはや人の体(たい)をなしていない形相で火織に飛びかかる。


 火織も避ける素振りは見せず、自分の翼から真紅の羽根を一枚抜き取り、それを構える。


 すると真紅の羽根は炎の剣へと変化し、真っ向から切りかかる。


 炎の燃える音と刃が空を切る音が同時に伝わってくる。


 メデューサはバッテンの様に斬られ、その傷口が燃えている。


「くそ……。ヴァンパイア風情が……」


「その風情がお前に終止符を打ってやる」


 火織の翼が激しく燃えだすと、信じられないスピードでメデューサを切り裂き、屋上から突き落とす。


「さてと……」


 着地した火織の翼から炎が消える。


「佐伯走矢。一緒に来てもらうわよ」




「いや、あたしそうとう頑張ったんだけど! 彼が連れて行かれたのは君たちの来るのが遅かったせいだからね!」


 紗由理はもの凄い勢いで自分の功績を主張する。


「仕方ないでしょ。連れて行かれちゃったのは事実だし……」


 羽月は力無く呟く。


「まぁ、タダ働きにはしないから安心しなさいな」


 2人をねぎらう由利歌は愛美に視線を向ける。


 自分の案が裏目に出て、走矢を連れさらわれてしまった事で激しく落ち込んでいた。


「愛美ちゃんの考えは間違ってないわよ。もしかしたらこの光景を学校で見る事になったかも知れないんだから」


 この光景とは石化された職員達の事。


 愛美の高校の生徒達がこうなっていたかも知れないという事だ。


 現在、治療系の術、能力を持つ職員が解呪をこころみている。


「ただ、この手の攻撃は仕掛けた当人が死ぬと自動で解呪されるんだけど……」


 メデューサが転落したと思われる付近に、彼女の姿はなかった。


 メデューサだけではなくドッペルゲンガーもだ。


「どっちも厄介よ。三原さんは2ヶ月前には入れ替わっていたみたい。彼女のマンションで石化した状態で見つかったのを解呪した職員が言ってたわ。その間、誰も彼女が偽者だって気づかなかったって事ね」


 しばしの沈黙の後、愛美は自分の顔を両手のひらで叩く。


「すいません、腑抜けていました。エリスさんだって必死に足取りを追っているのに」


 そう言って愛美は服を脱ぎ捨て、翼を広げる。


「気合入ったのは良いんだけど、服は持ってった方が良いんじゃない?」


 由利歌の言葉に、


「そうですね……」


 と、照れながら応え服を拾う愛美だった。




 エリスは火織が飛び去ったときの妖力を追って、ある地域を飛び回っていた。


「エリスさん!」


 背後から彼女を呼ぶ声。


 反応して振り向くと、そこにはエリスと同じ様に翼を広げた桜達がいた。


「俺達も手伝うぜ」


「また先生に怒られるわよ?」


「バトるんじゃなくってあくまで人探しですから。危険はおかしません」


「人探しなら人手が多いほうが良いしね」


 メガネの位置をなおしながらドヤる春香、いつもの調子の直。


「こう見えて感知は得意なの」


 と、咲花。


 4人の顔を見回してため息をつくエリス。


「ありがと、助かるわ。でも、敵の根城はだいたい見当が付いているの」


 以前、愛美が言った『妖の飛行能力は妖力による割合が大きい』という話。


 空を飛べば必ず妖力の痕跡を残す事になるため、隠れ家まで直接飛ぶことは無い。


 おそらく、その手前で着地しているはずだ。


 最初に走矢を襲った時、桜達と交戦後逃走した時、人妖機関の施設から走矢を連れ去った時。


 この3つの痕跡はある地域で消えていた。


 その地域にエリスが目をつけた人物の住所があり、その人物が火織と関係があると彼女は考えていた。




「色々と手荒な真似をしてごめんなさい」


 火織はそう言いながら走矢の手前のテーブルにティーカップを置く。


「若い人はジュースとかの方が良かったかしら?」


「あっ、いえ。いただきます」


 出された紅茶を一気に飲み干す走矢を見て、


「本当に気が利かないわね、私って。あんな事があった後だもの、当然喉が乾いているわよね」


 そう言ってカラのコップを置くと、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを注ぐ。


「それでその、血の件なんだけど……」


「死ぬほどではないけど、結構な量が要るという事ですよね?」


 火織は静かに頷く。


「あの〜、火織さん……」


 走矢達のいるリビングに入ってきた大人の女性。


「わかってるわ、小夜子。奴らが来たのね」


「奴らって、さっき火織さんが話してた……」


「ええ、私とこの娘を連れ戻そうとしてる奴らよ」




「ていうかさぁ、ヅッキーあの娘(火織)と親しいんじゃないの? なんか聞いてない?」


 人妖機関の施設の一室にて。


 紗由理の話によると、羽月と火織の入学が遅れて、同時に転校してきた理由が火織にあるとの事だ。


「なんて事はないわ。あの娘、火織は炎の大天使、ミカエルの末裔といわれる名門、焔緋家(ほむらびけ)の出身で、その姉が政略結婚で水の大天使、ガブリエルの末裔、氷雨家(ひさめけ)に嫁いだんだけど、産まれてきた子が氷と炎のの相反する力を持っていて、それが制御できなかったためにお姉さんは亡くなったそうよ。それで火織を変わりの嫁によこせってなっらしいわ」


「娘は?」


「混血が悪い方に出ちゃっているみたいだけど、一応嫡子の子って事で連れ戻そうとしてるみたい」


「そもそもなんだけど、なんで羽月ちゃんが巻き込まれたの?」


 由利歌が疑問を投げかける。


「ヴァンパイアの翼は2枚1対が大正義。それ以外は認めないって考えの連中なのよ。氷雨家の奴らって。それで6枚羽の私が襲われて、あの娘と共闘しただけよ」




「火織さん、追っ手が仕掛けてくる前に小夜子さんを治療する事はできないんですか?」


「難しいわね。ただ血を飲ませれば良い訳じゃないから。この娘は炎と氷、相反する2つの妖力を持っていて、それが色々な問題を起こしているのよ。もし俊紅を取り込めば相反する妖力が暴走して命はないわ。覚えておいてね走矢くん。俊紅は凄い力だけど決して万能では無いって」


 会話が終わったところで火織と小夜子の表情に緊張が走る。


 追手たちが妖力を解放し、2人にプレッシャーを掛けているのだ。


「小夜子、彼をお願いね」


 そう言って火織は窓から飛び立つ。

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