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1-1 不思議なラッパ

 勇樹は小学3年生。

 勉強はそこそこ、運動もそこそこ、顔の造りもそこそこだ。

 いわゆる、平均的な男の子ってやつだった。

 だけども、最近なんだか面白くない。

 昔に比べると、世界がワクワクしないのだ。いまいち。

 小学校に入学するときは、あんなにドキドキしたのに。

 ビー玉をもらった時には、あんなに輝いて見えたのに。

 お兄ちゃんが見せてくれた手品は、あんなに不思議だったのに。

 仮面ライダーには、あんなに夢中になっていたのに。


 なにより、妹ができると聞いて、とってもドキドキしたのに。


 なぜだろう?


 勇樹はいっしょうけんめい考えたけれど、よく、分からなかった。


 学校帰りにふと、公園によってみようと思った。

 ちょっと前までは、よく友達と買い食いをして暗くなる時間まで遊んでいた場所だ。今では、その友達も塾に通い始めたのであまり遊べなくなってしまった。

 友達が言うには、「勉強しないと親がうるさくて、仕方がないから勉強してあげている」のだそうだ。

 勇樹はそこまで勉強したくはないし、お父さんもお母さんも宿題を手伝ってくれたりしてくれるので、通う必要を感じなかった。

 それでも、みんなが塾に通っているので自分だけ仲間はずれにされているような気になってしまう。

 この、モヤモヤした気持ちをブランコで遠くに吹き飛ばしたかった。


 着くと、何だかいつもより騒がしい。まだ小学校に通っていないお子様たちがワキャワキャしていた。

 原因はアレに違いない。

 遠目で見ても分かるくらいに派手な道化師ピエロがそこにいた。

 なにやらいろんな楽器を吹き鳴らし、たくさんのボールを操っている。

 少し心が動かされたが、あいにく今日のお目当てはブランコだ。あんな子供騙しでどうにかできるほど、自分は単純ではないのだ、と勇樹は気合を入れなおしてブランコへ向かう。

 と、残念なことに、ブランコまでもがピエロを少しでも見たいお子様たちに占領されていた。

 しょうがないので、ブランコそばのポールに寄りかかり、ブランコが空くのを待つことにする。

 まあ、たまにはああいった子供騙しを見てみるのも良いだろうと思い、時間つぶしにひとときピエロの観客の仲間入りをすることにした。


 意外と、と言っては失礼かもしれないが、ピエロは多芸だった。勇樹が知っているピエロの芸はジャグリングしか存在しない。よく、サーカスでやっている笑いを取るためのアレだ。

 だけれども、今、目の前にいるピエロはジャグリングはもちろん、不思議なパントマイム、タネの判らない手品、そして何より、観客を魅惑する程の楽器のパフォーマンス。

 こんなに夢中になって一つの事に没頭したのはいつ以来だろう?それ程、ピエロの演奏に魅入ってしまった。

 音楽が止んで我に返ると、今日の演目は終わったのか、後片付けを始めるピエロにアンコールを求めて集っている子供たちが目に入った。さすがに、あの中に混じるほどお子様じゃないと、勇樹は空いたブランコに座って少し足を休めた。


 まだ、ピエロから目が離せなくなっていることに気付いていなかった。

小学生高学年向けの児童書風になるように書いています。

子供の頃の気持ちを少しでも思い出してくれたら嬉しいですね。

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