蒼月の魔女
文才が欲しかった。
どうやらこれは夢では無いらしい。そう唯が理解したのは2度目の起床によってだった。
見たことある天井に独特な毛布とベットの感覚。そして、質素な灰色のカーテン。
唯はベットから出て立ち上がると古びた木材のきしむ音がした。
「....夢じゃないのか?」
地面に触れる足裏は冷たくひんやりとしていた。唯は少しばかり歩くと、扉のドアノブを握り前へと押すと、ギギギと音を立ててと扉が開いた。
「....。」
ドア越しにその先を見つめ、誰も居ない事を確認し、廊下に出た。
「広いな。」
目のまえは木材格子で真ん中が吹き抜けになっている。そして今先ほど出てきた部屋の両隣にもドアがあり、ここがホテルや宿泊所の様なものだと知った。
♪♪
「...。」
フェンスの下からピアノの演奏が響いた。
とても悲し気な曲であり、美しい音色であった。下を覗くとホールの中心に一つのグランドピアノがあり、そこには先ほど話した少女_ベルがいた。どうやら彼女が弾いているらしい。
唯は降りて彼女と話そうと考え、近くにあった階段をゆっくりと降りて行った。
降りていくと、曲は終盤に向かおうとしていた。
目のまえには、ピアノを弾いている一人の美しい少女。
「ベル。」
唯はそう一言呟くと、ベルは演奏をやめ唯の方向に体を向けた。
「...どうしてここに?」
「...なんというか。って、ベル。君はピアノを弾けるんですか。」
「そう。ピアノは私の趣味であり、得意分野。
長い間、暇を紛らわすために、私はずっと演奏していた。」
「...弾いてていいですよ。邪魔して...その、悪かった...です。」
ベルはそのまま演奏を続けた。邪魔にならないように唯は端に寄った。
(....観客は俺しかいないのか。)
周囲には誰も居ない。沢山部屋があったが、人が住んでいるような気配は一度もしなかった。
なぜ、これだけ広いのに誰も居ないんだろうと、唯は少し不気味に思った。
暫くすると、ベルは演奏をやめた。
「....終わったんですか?」
「...どうして敬語?」
「....えっと。なんというか。」
「敬語なんて使わなくていい。めんどくさい。」
彼女はそういうと、ベンチタイプのピアノの椅子から立ち上がった。
「...この曲、昔私の友人から教えてもらったの。曲名は、「蒼月の夜。」」
___聞いたことは無かった。唯はピアノについて何も知らない。
「...そうなんだ。俺は、ピアノについて何か知っているわけでも、何も知らないけど、なんだか
とても悲しそうな曲に聞こえた。」
ベルは立ち上がり空を眺めた。
「...この曲を書いたのは、蒼月の美しさに魅入られた一人の少年。空を覆いつくすほどの月を、この目で観たい__そんな願いを抱いていた。だから彼は、禁じられていた夜でも、時折ひとりで外へ出た。
....そして、その夜彼は出会ってしまう。最悪の少女に。」
ベルは唯を見つめた。
「....それが月詠の魔女__ノストラディアン。彼女はあまりにも美しくて、そして、残虐だった。 彼女は少年を惑わせ、やがて2人は対立する。けれど彼は王の息子だった。...だから、平和の為に、愛した少女を殺さなければならなかった。
.....そのすべてを彼はピアノに刻んだ。それが、この曲のあらまし。」
「....’魔女’ってなんなんだ?」
唯は妙に気にかかった’魔女’という単語に疑問を抱いた。
「魔女は「悪」とされている。魔女と呼ばれるものは、この世界の称号。それがあるだけで世界を滅ぼしにかかるそんな邪悪なもの。」
「....そ...そうなのか。」
「....。」
ベルはそれを言うと、外に向かって歩き出した。
「ついてくる?貴方、ここの周り何も知らないでしょう?私が案内してあげる。」
「....いいのか?」
「うん。」
ベルはそういうと歩きだし、唯は大人しくそれに続いた。
修正箇所が多くみられるかもしれません。ご了承を。




