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29 commute 2-1 船旅

三和共和国サナきょうわこく


中央アジア大陸の東端。太平洋に面した半島の北国。辛みのある食べ物で有名だ。

大戦後、南北に分かれ、南側が西側の民主化陣営に属している。

ヒノシタと同じで先進国であり、液晶ディスプレイなどの製造国として有名だ。


ここも大陸で陸続きに大国に面した国。相変わらず政治情勢が複雑なところだ。大統領が何度も何度も逮捕されて入れ替わる。


だけどそれでも、現在進行形で戦争をしている私の故郷のロメニアや、その他ツァーリ連邦に接する国よりは、遥かに安定している。


平和の水面下には、スレスレの外交や渦巻く政治家や外交官たちの陰謀があるとは分かっている。

仮初の平和と言ってもいいが…旧共産圏出身の私からすれば別世界だ。

道路も綺麗で、携帯端末がいつでも簡単に買えて使える国だ。間違いなく穏やかに繁栄出来ている。


レイチェルの故郷の大国、クリストフ合衆国が駐在しているからと言うのも大きいだろう。

そういえば彼女は、訓練を終え新兵の頃にはサナ共和国の駐在兵として活動していたのだっけ。


彼女にとっては出戻りする形となる。とはいえ、目の色、髪の色、顔つきまで変わり果てた彼女の姿を判る人はいないだろう。


私達はサナ共和国に向かい、クリストフ合衆国が運営する海洋調査艇に乗って次の仕事に挑むことになる。


共和国から更に東の洋上。かつてあった日本という飛び地の島へ赴き、海底探査だ。


大陸から吹く偏西風と、複数の島で複雑になった海流は、常に不規則に渦潮や高波を発生させている。

まだ秋だから比較的穏やかではあるが、偏西風が強まる冬場は過酷だ。


無数の場所から押し寄せた波が中央に集まった時、巨大な垂直のフリークウェーブを発生させ、船体をへし折る事故が発生する魔の海峡。


そんなところにも人は住んでいるのだから驚きだ。



とはいえ、平和に対話できる相手とは限らないのだけれど。



私達は調査艇じゃなくて、随伴する中型のクルーザーに乗ることになった。

太陽電池の屋根に、重機関銃とミサイルが搭載されているジェット推進の高速艇だ。

無事に仕事が終わったら、武装解除して私達が引き取れるって話だ。クルージングのレンタル業でもすべきだろうか。


操舵席で舵の舵輪を握っているのは、リラだ。慣れた手さばきで無線やエンジンの調子を見ている。


ヒノシタの出発前はかなり嬉しそうにしていたのに、サナ共和国で港に到着して仕事の内容を聴くなり彼女は表情を一変させて、今はかなり機嫌が悪そうだ。

楽天的で気分屋なのは知ってるけど、あんまりコロコロ機嫌変えられると対応も困るから考え物だ。


そういや、こいつ船舶免許持ってたっけ?



…………



シスナ隊長が、何か聞きたげな表情で私のことを見ている。


まぁ仕方ない。今のアタシは、ヘソ曲げて露骨にやる気ない態度を取っている。愚痴のひとつも言いたい気分だ。


やはりあのフェクトとか言うヤツは許せねえ。

終ったらこのクルーザーをくれるって言う話だから、しぶしぶ乗ってやったけど、話が違い過ぎる。


「海洋調査って聴いてたのに、海賊狩りとか、結局ドンパチかよ。」

「いつも通りじゃない。そんなことで機嫌悪くしてたの?」

「普通は戦闘あるなんて思わないでしょ。バカンス気分のつもりだったのに。折角水着買ったのにさ!」


無人機の操作はメリッサとモモの仕事だ。海底のダンジョンに行くのはあのフェクトとか言うヤツの仕事だし。

今回は後ろでモニター見てれば勝手に終わる楽な仕事かと思っていた。終ったら無人島でバカンス決め込むつもりだったのに。

「随分きわどい水着買ったわよねアンタ。」

「ちゃんと毛も処理してきたっつーのに、一週間以上も海の上で銃持つとか、あーもう最悪も最悪。」


隊長のシスナは文句も言わず偉いもんだ。敵討ちに恩義を感じるのもあるだろうけど、それはそれだろうに。


《マイク繋がってるわよリラ。》

マザーから通信が入る。

「聞こえる様に言ってんですよ。」

《怒るわよ。》

「ハーイハイハイハイすいませんね。」

《全く…》

マザーは並走している巨大な調査船の中だ。

「自分は特等席でドッカリ座っていい御身分なこった。」

「ちょっとした巡洋艦ですよ…。」

メリッサが並走する船を見て指さした。


護衛する調査艇側はFECTドローンが搭載されていてヘリポートまである。


「どうやってあんなもの手配したやら。」

レイチェルも訝し気な顔をしている。

「さてね。前回のドローンも積まれてるし、合衆国となんかツルんでんじゃね。知らねーけど。」

「進めて行けば判ることよ。ところでリラ、アンタ船舶免許持ってたっけ?」


フェクトに指名されて操舵と船長やることになった。ぶっちゃけ運転面倒くさいからデカい方の調査艇で遊んでたかった。


「別になんてこたねーよ。アタシ元海賊だし。ここの海じゃねーけど。」

「そうだったの?」

「家出娘ってヤツ。つまんねー話だから終わり終わり!」


まぁ、憂さ晴らしに暴れんのも悪くはない。


「うまいコト土着共から船でもパクって払い下げたろうぜ。ボロ船でもエンジンは金んなる。やるこたいつもと変わんねー。」

「だといいけど。」


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