27 break time 3-1 前回までのあらすじ
あれから1週間。
ドローンの暴走騒ぎなどでパニックになったのは導入されて、たった半日の初動だけだった。
今は何事もなく制御下にあり、技術者たちは首を傾げている。
私達は無事に出国し、飛行機でヒノシタに帰ることが出来た。
3日の旅路を終え、教会に戻るなり私達はシスターの服に着替えて一同に会する。
当のマザーは血相を変えて、クレアの部屋に私達を連れていった。
オレンジ色の結晶に、祈るような姿勢のまま閉じ込められた、赤髪の若い女。
多少驚いたが、オーバーテクノロジーを考えれば今更だ。
この結晶を砕いたら、生身の彼女を引っ張り出せるんだろうか?私の疑問はそれぐらいだ。
テーブルにラップトップを置いて、マイクを繋ぐ。
「さぁ聴かせて貰うわよ。大ダンジョンからサルベージしたデータ、その他諸々!」
《はぁい。まずは、私じゃない方がいいよね。》
モニターに映ったのは男の顔だ。
《始めまして、教会の刃の諸君。私がクレアの父親のアナトリー・フェクト・リズィニエフだ。》
「フェクト…ドローンを操作してたのはアンタね?」
《そうだ。私のパターンを模倣した分体だがね。》
「そう、感謝するわ。」
「あぁ、スゲー精度だった。」
《お褒めにあずかり光栄だよ。シスナ、リラ。君達はいいコンビだ。》
レイチェルが首を傾げて聴いた。
「大ダンジョンに入っていたデータは、やっぱりミスター・リズィニエフだったの?」
彼はかぶりを振るう。
《フェクトで構わないよ。そして答えはノーだ。実を言うと、私の人格データ自体は結構前から復元出来ていたんだ。》
「なっ…どうして黙っていたの!?いつから!?」
マザーは取り乱して会話に割り込んだ。
《悪いね。こちらもデータの復元で忙しかったんだ。江間君が加入するぐらいには、もう大体の復旧は終わっていたんだ。シスナとリラがコンピューターを回収してくれたおかげでね。》
「エマって誰?」
「あ、私。」
ミランダが苦笑いして手を上げる。
「フルネーム江間・美蘭騨だったんだ…。」
「どっちが名前だよ。」
「そんなことどうでもいいわ!かなり前じゃない!!!どうして!!?」
《私が必要のないタイミングで姿を現すと思うか?》
「…!」
《そうだ。サルベージしてくれたデータだ。それが手に入って、ようやく我々の出番ってことになる。》
「出番…?」
《まず我々が復旧させていた欠損データのことだ。これは500年前の話と関わりがある。よく聞いて欲しい。》
彼は私達に500年前に何が起きたのかをザックリ説明してくれた。
……
量子コンピューターがダンジョンの原型になったのは周知だ。
問題は、その作られた経緯。
来るべき氷河期や噴火の滅びに備えた、地上の最後の希望のなれの果て。
500年前の話だ。
たまたまダンジョンの入り口で出産された、今はレイチェルの中に宿るシトリンと言う人物。
彼女はダンジョンのボスの権能。つまり管理者権限を持って生まれた人物だ。
教会の刃のラケルと共に大ダンジョンを攻略し、そして大ダンジョンを自らの手にした。
かなり紆余曲折あったが、そこにフェクトや仲間のミランダの姿もあった。
そしてシトリンはダンジョンを資源として経営することに決め、自ら魔窟の新女王として君臨した。
そして彼女達は、挑んだ冒険者に殺された。
冒険者を装って、ラケルを殺しにやってきた。当時のシスナとリラ、そして目前にいるリーシャと、もうひとり、名前の失われた冒険者の手によって。
規定外の管理者の死が発生し、彼女が仕込んだ相互確証破壊の防衛機構によって、街に魔物が溢れ、殆どの人間が殺され、歴史から抹消され、街とダンジョンは破滅した。
それが、500年前。
後に冒険街ドイネルと名付けられ消失した、『アメジストの街とアメジストの大ダンジョン』のその後の顛末だ。
だが、私達が存在している以上、話はここで終わっていない。




