60:突入
結果的に内村課長が下した結論は今夜。早ければ早いほうが良いということで、異能力者の集まり具合を考えて数が揃っているなら突入、一気に確保、という形になるらしい。
「どうやら、今夜は拠点にしてる地下のダンスホール「ブラックネオン」でパーティーがあるらしい。それに紛れて我々も参加していくってことにする。そもそも服装自由な我々だ、潜入捜査をするにも私服のほうが取り回しがきく。私も時間になったら私服で参加するからそのつもりで。進藤君とフィリス君、カルミナ君はサーチを維持して異能力者の集まり具合をチェックしておいてほしい」
「わかりました。異能力者が発見、ある程度の人数が把握され次第人払いの結界を使います。それで一般人は外へ、異能力者は何が起きたのかわからず、店の奥へ報告に行くかその場で立ち止まるはずです。そこで一斉検挙、というわけですね」
「多分そうなるね。戦闘が予想されるので突入班はその準備、相手は相当数の異能力者が居ると思われる。全員が全員本当に特集な能力者である可能性は低いが、念のため注意をしながらの突入ということで構えておいてくれ。特に進藤君とフィリス君とカルミナ君は店内のサーチと戦闘と捕縛とと、色々活躍してもらうことになるだろうからスタミナ配分だけは間違えないようにね」
俺達三人への負荷は高いが、こんなもの魔王軍との決戦に比べればどうということはない。鈍っていないかどうかだけが心配だが、カルミナと先日行った取っ組み合いではそこそこの実力を出せていたと思っているので、俺に関しては大丈夫だろうし、俺以上に体術に心得のあるフィリスなら心配はしなくていいだろう。
問題は、例の重力を操作するらしい異能力者と、異能力を分け与えられる異能力者。この二名が最優先確保目標だな。
「久しぶりに全力を出して戦えるのね! 楽しみだわ! 」
カルミナはやる気満々で今か今かと待ち望んでいる。フィリスは……気持ちを落ち着けているようだ。二人とも集中はしているようだから問題はなさそうだ。
◇◆◇◆◇◆◇
午後十時。良い感じに酒が入って出来上がったころを狙って我々も動く。地下のブラックネオンの周りにこっそりと集結しつつある第六課の面々。扉を開けてまず中に入り、酒を呑んだふりをしながら人払いの結界を中に振りまいて徐々に人を帰らせる役の近藤さんからタイミングの指示を待つ。
徐々に中から人が帰り始め、一端人の波が途切れる。
「今です、突入」
近藤さんから突入の合図があったのでドアをバン! と開けて警察だ! とやるのがかっこいいところなんだろうが、そんなことはしないのはうちの部署だ。どうせ逃げられないんだから悠々と入り込んでのんびりと話をし出しても何ら問題はないという内村課長の意向により、ゆっくりと中に入り始める。
「あー、すいません。警察です。ちょっと中を改めさせてもらいに来ましたよ」
暢気な口調で内村課長が音頭を取る。
「あー? 警察? 俺達が何かしたってのか? 」
「いえね、こちらに珍しい力を持った方が大勢集まっていると善良なる市民から通報がありましてね。一度入り込んで様子を見てもらえないかということで参った次第なんですよ」
「珍しい力ってのはこういう事か? 」
内村課長の目前に迫る一人の男が設置されていたソファーを掴み軽々と持ち上げる。そしてそのままソファーを内村課長へぶつけようとし、俺に制止される。
「そこまで、暴行未遂の現行犯ね」
即座に手錠をかけると男は力を無くしたかのようにソファーを落とすと、その場にへたり込んだ。
「やろう、何しやがった! 」
「ちょっと力のほうを封じさせてもらっているだけですよ。外せば元通りなのでご心配なく」
「何やってる、敵襲だ! 応戦して追い返せ! 」
男が叫ぶと、奥から数人の従業員の恰好をした人が出てくる。全員……異能力者か。
「フィリス、カルミナ、無力化! 」
「はい! 」
「任せときなさい! 」
相手が女性と子供だからと舐めてかかって殴りかかった異能力者達が逆に殴られ、蹴られ、投げ飛ばされていく。どうやら異能力は異能力でも、従業員については軽い身体強化程度の異能力を付与されているだけらしい。怪しい手段も不思議なことも起きない所を見ると、まだ絶賛従業員募集中というところだったのだろう。
気絶する先から近藤さんや鈴木さん達が特殊手錠をかけて動けないようにしていく。
フィリスとカルミナは絶賛戦闘中。昔見たヤンキー映画の主人公のように立ち回っては次々に従業員を吹き飛ばして壁の花にしそうな具合でどんどん近藤さん達のほうへ投げ込んでいく。サーチをしながら、残り何人いるかを計算しながら俺もその輪の中に入れてもらう。
「異能力者っていうから期待したのに、イマイチ強くないわね! 」
「これでは鍛えた一般人と大差ないようにみえます。組織の底がまだまだ浅いですね」
「強くなくて拍子抜けと考えるか、それとも浅いうちに突入できてよかったと考えるべきか。悩ましいが仕事は仕事だ。きっちり片付けていこう」
人払いの結界の追加を出して、こっちで大捕り物が繰り広げられていても周りには何事もなかったかのように振る舞われるのは不思議な感覚だが、これもまあ異能力の一つと言ってしまえばそれまでだな。うっかり引っかかってしまった人たちには申し訳ないが、組織の芽が出始めの内に潰せてよかったと考える所なんだろう。
「肝心の異能力者が出てこないじゃないの! 逃げてるの? 情けないわね! 」
乱闘も一段落し、十数人の異能力者を確保、逮捕したところでカルミナが挑発するが、奥から人が出てくる様子が……あったな。どうやら流石にこの場を収めるべくやってきたらしい。
奥から現れたのは二人。黒いスーツに左耳に銀のピアスを複数個付けた男と、フードをかぶった男女不明の者が一人。
「内事第六課の皆さんごきげんよう。我々の巣に何か御用でも? 」
「これだけ手荒い歓迎を受けて何か御用も何もないんだけどねえ。権藤会からの覚せい剤強奪の一件と、その後の脅迫、被害届こそ出ていないものの超常現象対策としては我々も見過ごしておけません。申し訳ないがご同行願いますよ」
「いやだ、と言ったら? 」
「その時は申し訳ありませんが、力づくで付いてきてもらいます。あなた方の異能力を他人に分け与えられるという話、本当ならば素直にそのままどうぞ続けてとは言いづらいですからね」
「新島が喋ったか。やはり、あまり期待できる駒ではなかったな」
後ろのフードをかぶった人がフードを脱ぐ。女性だった。その女性がこっちを見る。すると、俺の目の前にあったソファーが一気に浮き上がり、俺の顎をかすめようとする。充分に余裕をもって避けられたが、まともに喰らってたら意識を持っていかれていたかもしれないな。こいつが覚せい剤強奪の犯人、ということだろう。
「なるほど、そちらの女性が件の覚せい剤持ち逃げ犯さんですか。ちゃんと返してあげたという話、聞いてますよ。お優しいですね。返したふりをしてもう一度没収すれば二度おいしかったでしょうに」
「こっちにも信用ってものが必要だからな。約束は守る、というね」
「それで、いい加減あなた方について教えてもらっても構いませんかねえ。異能力者を増やして集めて、一体何が目的なんです? 」
「それを知りたきゃ自力で聞かせて見な! 」
今度は先ほどのソファーが浮き上がり、内村課長めがけて飛んできた。物体をある程度自由に動かせる力、念動力とかそういう力なのだろう。やはり、この二人はちょっと強いな。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。
後毎度の誤字修正、感謝しております。




