59:異能力者の見分け方
その後、一日かけて数名の部署内の人員に協力してもらって同じように測定して回った結果、闇魔法の探知による魔力波動の波の返り方に確かに違うものがあることを突き止めた。これで、一般人に異能力者が紛れ込んでいても判別がつくようにはなった。フィリスにも手ほどきし、光魔法で同じような状態を調べることができることを確認。
暇そうにしていたカルミナも、暇よりはいいからと、適当に遊びに行って高層ビルの上から魔力感知を調べることで異能力者が固まって存在している地域がないかの捜索に乗り出し始めた。
「と、いうわけでざっと調べた情報がこうなります」
ノートパソコンに入力し終えたデータを基に、一体世の中にどのぐらいの異能力者が潜伏しているかを表示し、指示を仰ぐことになった。
「これは……案外いるもんだね。この全員を捕縛するのが仕事ではないが、異能力者によって引き起こされた犯罪かどうかを調べるにはちょうどいい検知器みたいなものかもしれないな。基本的には人払いの結界と同じようなもの、と考えていいのだろうか」
いまいち納得がいっていない内村課長に解りやすく説明する。
「そうです。人払いの結界は異能力者や魔術を使えるもの、スキルを持っている者には効果がありません。つまり、それは異能力者や魔術を使えるものを明確に判別する力が含まれていると言えます。それを踏まえて、闇魔法で再現してみたのがさっきの方法になります」
「理論は解った。そしてその異能力者ソナーを使えるのも三人居ることも解った。で、これでどうやって異能力者を探していくか、ということなんだろうが……何か考えがあるのか……いや、そうか。意図的に集めない限り異能力者は集まらないから、密集している地点を捜索する、という方法で居所らしきものを突き止めるのか」
内村課長は捜査の方針が思いついたらしい。
「しかしいいのか、地道な作業になるぞ? あちこちを飛び回ってサーチをかけて、それで見つからなかったら次へ……という形にはなると思うが」
「念のため、カルミナに先行して周囲の様子を観察してもらっていました。その結果がこうなります」
異能力者が発見されたポイントを次々に表示し続ける。とりあえず山手線一駅ずつでざっくり周囲を感知し、結果を念入りにマーカーをつけていった結果、それなりの数の異能力者が山手線の内側だけでも存在することが分かった。
「とりあえず、夜の間に回るだけ回ってみたわ! その結果がこれね! 」
「今回能力の強さについてはカウントしていないのと、能力者が移動する、ということまでは考えに入れていませんので非常にランダムな結果になっていますが、少なくとも一ヶ所だけやたら密集している地点がありました。新宿歌舞伎町の裏通りです」
歌舞伎町のとあるポイントについて説明を始める。
「昼間ならまだしも、夜間にこれだけの異能力者が集まって動かない、というのは意図的に集められている可能性が非常に高いと言えるでしょう。実際に犯行を行ったのがここに集まる連中だとは断定できないのが現状ですが、もう一度新島に会ってこの周囲で組織とかかわりがあったかを確認してみるのもいいかもしれません」
内村課長は腕を組みながら右手でペンをトン、トンと机の上でリズミカルに鳴らし始めた。
「下手に動いて拠点がバレたと察知されると、また探し直しになるな。出来ることなら一回で決めたいところだが……ところで、歌舞伎町で事件を起こしていたことと今回の覚せい剤強奪、この二つの事象は一見バラバラだけど、そこはどう見積もっているのかな? 」
内村課長としては下手に動いて損害を出したり、踏み込んでみたらそこが空っぽだった、という可能性を見出しているようだ。
「おそらくですが、歌舞伎町の裏社会構造に一太刀浴びせて、自分達の存在感を増させるためでしょう。それに構成員を自分たちの手元に繋ぎ止めておくためにもある一定額の金は必要だと考えます。この先も付いてくれば今以上の金を手に入れることができるぞ、という形で人員を増やしているのかもしれません」
金で人を集めるのが手っ取り早い。闇バイトで異能力者を探してスカウト、それをさらに拡大していくことで複数人の異能力者を集めていく手段。手慣れている感じはするな。元々そういうことが得意だった奴が幹部に居る可能性は高い。新島も言っていた「異能力を与えられる」ということからも、与える異能力がいくつもあってそれをそれぞれに与えながら資金面でも人材面でも潤沢にしていこう、という考えが見えてくる。
内村課長がペンをピタッと止める。どうやら考えがまとまったらしい。
「このまま放っておくとどんどん巨大化していくのは目に見えてるし、歌舞伎町の権力構造がぐらついたり、お互いを疑って武力闘争なんて話になれば暴力団対策課との合同捜査ということにもなりかねない。出来ればその前にこっちで異能力者だけでも確保して無能力者にして、その上で裁判をきっちり開かせる。そういう形で行ければいいんだが、問題はいつ決行するか、だな」
近藤さんが冷静に続ける。
「新島のケースを見ると、ダーククロウは末端の能力者にあまり多くの情報を与えていない。組織の全貌を知っているのは、おそらく能力譲渡者を含む上層部だけだろう。今夜の能力者を捕まえても、新島と同じように末端で、拠点の場所までは知らない可能性もある。それでも、尾行して行動パターンを把握できれば、拠点にたどり着く糸口にはなる」
内村課長が頷き、ペンを机に置く。
「よし、方針は決まった。今夜、歌舞伎町一番街で動く能力者を特定し、尾行してダーククロウの動きを追う。可能ならその場で確保するが、状況次第では拠点の特定を優先する。進藤、フィリス、カルミナの三人は現場の主力だ。鈴木と近藤はバックアップと情報収集、岬は本部でリアルタイムのデータ分析と連絡調整を頼む」
岬さんがキーボードを叩く手を止めて答える。
「了解しました。歌舞伎町の監視カメラの映像をリアルタイムでチェックできるように準備します。異能力者の魔力波動のデータも、進藤さんたちが現場で検知した情報を基に照合します」
内村課長が全員を見渡し、語気を強める。
「ダーククロウは異能力者を集め、裏社会での影響力を拡大しようとしている。放っておけば、歌舞伎町だけでなく、東京全体、場合によっては全国規模の脅威になりかねない。第六課の存在意義は、こういう異能力犯罪を未然に防ぐことだ。失敗は許されない。各自、準備を怠るな」
会議室に緊張感が漂う。俺はフィリスと目を合わせ、軽く頷く。カルミナはすでにやる気満々で、指をパキパキ鳴らしている。
「じゃあ、勇者、フィリス、準備しよっか。夜の歌舞伎町、どんな美味しい能力者が待ってるかな?」
「カルミナ、能力を食う前にちゃんと捕まえるのが先だからな」
俺が釘を刺すと、彼女は「はーい」と適当に返事をする。
会議が終わり、各自が準備に取りかかる。俺は全身の体調を確認し、魔力の流れを確認し、順調であることを確認する。フィリスは光魔法の調整を行い、カルミナは魔法陣の展開速度を試している。鈴木さんと近藤さんは暴力団対策課との連絡を密にし、歌舞伎町の最新情報を集める。岬さんはデータベースを更新し、異能力者の反応パターンをさらに精査している。
夜の歌舞伎町が、俺たちを待っている。ダーククロウの次の手、そしてその背後に潜む能力譲渡者の影。今夜、何か大きな動きがあるはずだ。
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