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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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53/120

53:おとり捜査

 昼間の新宿歌舞伎町へ到着した。夜の新宿歌舞伎町に比べて観光客も多く、人ごみにあふれている。


「繁華街というから来てみましたが、たしかにすごい人ですね」

「夜は人はそれほど多くはないが、エッチなお店を目的にした男の人と、自分の好きなように応対してくれる男の子を目的にした女の人であふれかえる煩悩の宝庫よ」


 鈴木さんがフィリスに軽くレクチャーしている。カルミナは「凄い美味しそうな瘴気が溜まってるわね。ここも頻繁に出入りするところになるのかしら」と鈴木さんに確認を取っている。


「定期巡回コースに入ってるけど女性陣は残念ながらリストから外れてもらってるわ。場所が場所だけにあなたたちならスカウトされてもおかしくない容姿してるし、うっかり引き込まれて捜査員がネズミ捕りに引っかかるようでは困るしね」


 カルミナの要求をバッサリと切り捨てる鈴木さんにカルミナが少し残念そうにしている。


「それは……夜は夜でさぞ賑やかなのでしょうね」

「賑やかどころか、夜はカオスよ。歌舞伎町は日本一の歓楽街。酒、ギャンブル、風俗、なんでも揃ってる。酔っ払いや観光客がウロウロするから、犯人には絶好の狩場なの」

「夜なら霧が発生してても一見バレにくいし、犯行現場は十二件とも全部物陰だ。エアコンの排気に空気が揺らいでいるようにしか見えなかったのかもしれないな。とりあえず全部回ってみて、次に来そうな場所を見つけてみよう。犯行場所が同じじゃないってことはあえて場所を変えてやってるってことだからな」


 俺達四人は歌舞伎町の路地へ踏み込む。昼の路地は、ゴミ袋や看板が雑然と並び、夜の華やかさとは対照的な生活感が漂う。最初の被害現場は、居酒屋とカラオケ店の間の狭い路地。


「ここで二十代の会社員が襲われた。曰く突然霧のようなものに襲い掛かられて、財布から二万円抜かれて意識が戻った時には霧が消えてた。カメラはあの角にあるけど、死角になってる。犯罪を行うなら絶好のポイントだな」


 防犯カメラを指さし、丁度こっちを向いてないことを教える。フィリスとカルミナは防犯カメラについてはもう学習済みなのでいちいち説明する必要はない。こっちが魔術や力を行使する時にも防犯カメラに出来るだけ映らないように行動しろと内村課長からも念押しされているからでもある。


「念のために魔術が利用されたのかどうか、残留魔力を計っていきます。魔術ならより簡単に……残留魔力なしですね。これは魔術を行使した事件ではありません」

「つまり、異能力者が起こした事件でほぼ間違いないわけか。おそらく他のポイントも防犯カメラに映らない場所で行われてるはずだ、他へ行ってみよう」


 次の現場へ向かう途中、鈴木さんがフィリスとカルミナに歌舞伎町の解説を始める。


「あなたたち、歌舞伎町のことちゃんと知っときなさい。異世界組にはピンとこないかもしれないけど、ここは欲望の坩堝よ。キャバクラ、ホストクラブ、風俗店、居酒屋、二十四時間営業の店がゴロゴロ。昼は静かだけど、夜になるとネオンがギラギラ、人が溢れて無法地帯みたいになるのよ」


 フィリスが目を丸くする。


「無法地帯……でも、人が集まるのはなぜですか? 異世界では、危険な場所は避けられるのに」


 鈴木さんが笑う。


「人間って不思議なの。スリルや快楽を求めて、危険とわかってても来ちゃう。犯人はその隙を突いてる。酔っ払いや油断した観光客は、霧で襲うのに最適なターゲットよ」


 次の現場は、雑居ビルの裏手。三十代の被害者が五万円を抜かれた場所だ。


「ここ、怪しい落書きがあったけど、ただのスプレーアートだな。犯人の痕跡はなさそうだな……」


 フィリスが破魔のネックレスで瘴気や魔術の痕跡をスキャンする。


「瘴気がそもそも多めなのでより強い瘴気が残っているなら魔の物のやり口であると断定できますがその痕跡はありません。こっちも魔術を利用した可能性は低いです。やはり特殊能力でしょうか。だとすると、犯人はこのビルの屋上や換気口を通って逃げた可能性がありますね」


 カルミナは着いてくるなり結構静かにしている……とおもったら、瘴気のつまみ食いをしていた。


「ここの瘴気は欲望に忠実でとても美味しいわね。こういう瘴気好きだわ! 」


 何しに来たんだか。


 その後、全ての犯行現場をチェックし終えて、次の犯行現場に選ばれそうなところを地図で確認する。


「じゃあ、決行は今夜かな。俺が酔っぱらったふりをして犯人を誘い出すからその後全員で対処するってことで良いかな? 」

「大丈夫なの? 対峙してから私たちが駆けつけるまでに逃げられたりしない? 」


 鈴木さんは一応本件の責任者だからか、少し心配そうにしている。


「大丈夫です。今回のコツは、霧も凍れば地面に落ちるってことですから」

「凍れば……ああ、なるほどね。だとしたらカルミナも周辺に待機してもらってたほうが良いのかしら? 」

「えー面倒くさい」

「待ってる間瘴気食べ放題よ」

「任せておきなさい! 私にかかればこんな犯人ポテチ三枚食べる間に終わるわ! 」


 ポテチと瘴気が食べられるなら多少の我慢はきくらしい。カルミナが居るなら俺が襲われ次第すぐに対応できるだろう。とはいえ、つまみ食いに夢中で役に立たない可能性も考えておかなければならないからな。とりあえず今のところは一旦課に戻って、夜の計画始動に向けて仮眠でも取ることにするか。


「それじゃ、夜までちょっと仮眠取って酒を呑んで酔っ払う準備でもしておきます」

「頼むわね。いかにうまくつり出せるかで成否が決まるわ。それに、もし他の一般人が襲われた場合は犯人確保に動いてもらうことになるからその時はばれないように気を付けて」

「わかってます、念のため人払いの結界を一つ忍ばせておきますよ」


 下調べは終わったので、課の仮眠室で先にひと眠りさせてもらうことにする。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 夜になり、いい頃合いに夜が深まってきた。ネオンサインの輝かしさとは裏腹に、裏道や監視カメラの影は光りを逆に象徴するように闇に覆われている。


 念のため少しアルコールを入れて、酔っぱらっている様子を醸し出すと、上気した顔は赤く足取りも怪しいが、そこそこ質のいいスーツを着て金は持っているから二軒目に行こうとしているはしご酒目当てのリーマン、という感じに美味く演じていられているように見える。見えるだけかもしれないが、外から見たらただの怪しいお兄さんかもしれない。


 千鳥足を演じるのに疲れて、少し壁に横たわり疲れたような空気を出す。勿論監視カメラからは映らない影の部分でだ。しばらくすると、湿度が上がり始めた感覚を覚える。


 ついに来たか? 周りをそっとわからないように、酔っ払いが「んー? 何かいるのか? 」というような感じで振り返ってみるが何もいない。よほど密度が薄い状態なのだろう。


「今日も練習に付き合ってもらおうかな」


 かすかにそう聞こえた瞬間。俺の周りを霧がまとい始めた。確かにこれなら霧に襲われた、と勘違いするのも無理はないだろう。呼吸を止め、氷魔法を発生させ周辺温度を一気に氷点下まで下げる。


「練習に付き合ってもらうのはこっちの方だよ。おとり捜査のな」


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
速攻釣れてやんの さて、こいつにポテチ三枚分の価値があるかな
おお、見事に一本釣り さてさて、どんな相手ですかね
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