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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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54/120

54:捕り物

 氷魔法で凍てつき、霧が霜のように氷結化する。その場にちらちらと舞い散る姿が雪のようで少し綺麗に見える。犯人らしき人物は突然の自身の氷結化に驚き、そして動けないことを悟る。


「まさか、こんなに早く第六課が出張ってくるとはな。聞いてた予想より一ヶ月ほど早いぞ」

「報連相は大事にしてる組織なんだ。それに表向き我々は活動できないからな。悪いがここで捕縛させてもらうぞ」


 念のため身分証を見せた後、一度言ってみたかったセリフを言ってみる。


「謎の異能力者、現在午後十時十八分、強盗未遂と強盗の容疑で逮捕させてもらう……っと、お前の手は何処にあるんだ? 」

「さて、どうやって逮捕してくれるんだろうね。楽しみだよ」


 腕を探してる間にまた霧化して逃げられると面倒だな。カルミナの手を借りるか。


「カルミナ、一つにまとめて氷漬けに出来るか? 」

「ポテチ前よ、簡単だわ! 」


 雑居ビルの上から飛び降りてきたカルミナが、氷結化した犯人を魔法でかき集めて元の形に戻す。その後再度氷結化して人間の形に戻してさしあげていた。


「これでいい? 」

「充分だと思うぞ」


 出てきた手に手錠をかけると氷結化が解け、中からパーカーをかぶった人型が姿を現した。霧化して逃げられるのに本人確認が難しそうな格好をしているのはいいとして、この夜の歌舞伎町には似合わない格好であることは確か。霧化したまま歌舞伎町を抜け出して、裏路地から別方向へ逃げるのがテクニックだったのだろうか。


「さて、無事に逮捕できたことだし、鈴木さん達に連絡して連れて行ってもらうか」

「待ちなさい、その前に……逮捕ー! 」


 カルミナが足にも手錠をつけ出した。


「一度やって見たかったのよね。それに、足にもつけておけば二重の効果でうっかり手錠の効果がなくても効き目はあるでしょうしこれでばっちりね! 」

「何だこの手錠、外せねえし霧化もできねえ。なにをしやがった! 」

「お前みたいなのを捕まえる専用の手錠だよ。ほれ顔見せろ」


 パーカーを外して容疑者の顔を見る。まだ十代後半から二十代前半といったところ。垢ぬけたところがないところを見ると、東京へ来てまだ日が浅いのだろう。


「異能力を身に着けるのはまだいいが、犯罪に加担するのは感心できないな。もうちょっと使い道もあっただろうに」

「うるせえ、せっかく手に入れた能力、自分のために使って何が悪い。どうせこいつらの金も最終的にはホストに貢がれて俺達のためにはならないんだ。それなら俺が効果的に使ってやる方がまだマシだろう! 」

「その効果的に使うって部分は警視庁に帰ってからゆっくり聞かせてもらおうかな。そろそろ……お、来た来た。近場で待っててもらった甲斐があったな」


 近藤さんに最悪の場合を想定してきてもらっていたが、近藤さんは両手両足を手錠で繋がれている犯人を見てぎょっとしている。


「手錠一つでは逃げられる可能性もあったので二つかけました。足にかけたのは……こいつのいたずらなんで車に押し込むの手伝ってください」

「ああ、わかったが……担がなきゃいけないのが面倒だな」

「逃げられるよりマシでしょう」

「それはそうなんだが……まあいいや、とりあえず乗せて連れていくことにする。進藤君はカルミナ君と一緒に電車で帰ってきてくれ。これだと後部座席には誰も乗せられなくなる」

「えーめんどくさい! 私は車に乗って帰るわ! 」

「チャイルドシートを持ってきてないんだよ。だから歩きだ」

「しょうがないわねえ。まあ、警察官が交通ルールを破るのはまずいでしょうし、私も待ってる間しっかり食事をさせてもらったからそれでいいとしておくわ! 」


 と、すると俺は随伴か。まあ仕方ない、子供を一人でうろつかせていいほどここは安全な場所ではないし、手をつなぎながらカルミナと歩いて帰るというのもたまには悪くないかもしれん。


「カルミナ、手」

「一応、繋いで歩いている方が安全そうね。でも逆に怪しくない? 身内から考えたら格好の職質の餌よ。こんな時間に子供と大人が手を繋いで歩いているなんて、未成年不純異性交遊? とかにならないの? 」

「その時はこっちも手帳を出すから問題ないし、お前も持ち歩いてるはずだろう? 」

「そうね、それなら安心ね」


 カルミナと手を繋いで夜の歌舞伎町をひた歩く。どうせならカルミナではなくフィリスと歩きたかったが、この際文句は無しだな。氷魔法が得意だったのがフィリスではなくカルミナだったのだから。


 輝かしいネオンサインが俺とカルミナを照らし出す。カルミナもアレは何のお店? こっちは? と質問してくるので、無言で歩きとおすことに比べたらかなり気が楽である。そういう意味ではカルミナで正解だったかもしれない。


「この無料案内所って何? 何を紹介してくれるの? 」

「例えば胸が大きい子がいる店とか、顔がいい子を並べてる店とか、そういう店を紹介するところだ」

「無料でやっていけるの? ……ああそっか、紹介したお店から紹介料をもらってるのね」

「そういうことだ。潰れてないってことはしっかり需要があって繁盛してるってことでもあるな」

「その分美味しい瘴気を私は味わえたってことね。三方得でいい店じゃないの」


 しばらくしてもう少しで出口というところで制服警官に呼び止められた。


「お兄さんちょっといい? こんな時間に子供をこんな所に連れ出して何してるの? 」


 もうちょっとで抜けられたのだが惜しかったな。でも、こっちも問題なく警察手帳を見せ、ご同輩だよということを確認させる。


「おっと、これは失礼。そっちの子は? 」

「わたしもよ! 」


 警察手帳を見せびらかすカルミナ。私服警官は警察手帳を確認すると、カルミナに向かっても敬礼をし始めた。


「これは失礼しました。声をかけたらまずかったほうの捜査でしたか」


 カルミナの警察手帳もちゃんと公安までは文字が入っているので特殊捜査の一環だと思われたらしい。


「いや、今帰りさ。例の霧の強盗事件、解決するかもしれないよ? 」

「本当ですか。容疑者の顔も特徴もまだ解っていないのに……ああ、おとり捜査ってことですかね」

「ま、似たようなもんだ。お互いお疲れ様ってことで、俺達は今本庁に帰る所だ。手を繋いでるのは……親子っぽく見せるためかな」

「そうですか……残念ながら親子には見えないかと。どう見ても客引きの女の子に連れられたお兄さんって感じですね」


 正直な警官だが、そう言われると手を離したくなるな。


「じゃあ、身分も確認が取れたってことで失礼するよ」

「はい、お疲れ様でした」


 警官が警官に職質を受けるという予測していた関門を無事突破し、帰りの電車で警視庁まで向かう。


「さすがにあたしと勇者が親子は無理でしょ。顔立ちだって違うんだし」

「そうか。でもその場合はお前だけが職質を受けて、何で本物みたいな警察手帳を持っているんだ、偽造は犯罪だぞ、として捕まってた可能性もあったぞ」

「それはありうるわね。だとしたら、まあモアベターな設定だったってことにしとくわ」



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― 新着の感想 ―
チャイルドシートの下りは冗談なの? そんな歳に見える子が逆引きしてるわけないし今の外見は何歳くらい?
霧化で一時的に捕まってもどうとでもなると踏んでたんでしょうが対策済みの手錠が見事に効果発揮しましたねー! 第六課の事知ってたり聞いてた予想だったりとコイツからは色々と情報聞き出せそうですね
モアベターって懐かしい〜 小森のおばちゃまって言って分かる人が少なそう〜 カルミナが大活躍!ちゃんと役に立ってる!! 
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