意外な邂逅
その後のことはよく覚えていない。
麻雀にも集中できなくなり、結局夜までの貯金を朝には使い果たしていた。
あの楽しい会合も今回が最後かもしれない。
何よりみんな家庭があり、そっちで忙しい。
自分だけが世界に取り残されている気分だった。
(みんな、リア充なんだな・・・。俺は何してんだろな。)
朝方の逆に眠気が無くなってしまっている状態で拓哉は家路につきながら考えていた。
「はぁ・・・。帰って寝るか。」
楽しい夏休みのイベントももう終わり。
それなりには楽しめたものの、最後に憂鬱な気分にさせられたことでブルーな気分で歩いていた。
ふと目の前を見ると、何か金持ちっぽい集団がいた。
多くの付き人を従え、囲まれている人がいる。
多分どこぞの金持ち御一行だろうと、その集団を避けつつ歩いていると--
「なんじゃ、辛気臭いやつやと思ったら吉田やんか。」
聞き覚えのある不思議関西弁が聞こえてきた。
げっそりした顔でそちらを見ると、案の定この田舎には似つかわしくないギャルが立っていた。
いや顔はギャルっぽいが、今日は巫女服を着ている。
だが見間違うことなく、西条御子だった。
「なんや、その顔は。あんたまた失礼なこと--」
「いやいやいや、考えてないよ!」
拓哉は慌てて否定したが、意味は特になかった。
徹夜明けで頭が回っていなかったが、このギャルは人の心が読めるんだった。
「言っとくが、心は読めへんで?感情が見えるだけや。」
うん、心読んでるよね?
「あんた、分かり易すぎんねん。感情ダダ漏れやで。」
(何も言ってないのに会話が成り立ってしまった・・・。)
ふと、拓哉は思った。
(あれ、ここって俺の地元じゃないか?なんでこの人いるの?)
「ああ、仕事で来とるんや。あんたはなんでおるんや?」
「あ、俺この辺地元です。今帰省中。」
心を読まれる会話も慣れてきた拓哉だった。
「なんや、あんたも田舎モンやんか。シティボーイです感出してた癖に。」
御子がニヤニヤしている。
流石に時妻村とは一緒にされたくない。
「変わらへんで。田舎は田舎や。」
「ぐっ・・・」
心は読まれるわ、言い返せないわでぐうの音も出なかった。
「あ、でも仕事で来てるってことは西条さん占いでもするの?」
あまり回っていない頭で、ようやくその事を思い出した。
むしろあまり回ってないおかげで余計なことを考えず、御子とも普通に会話が出来ている。
「本業は霊能力者じゃと言うとるのに・・・。一応今日は除霊で来とるんじゃ。」
「除霊・・・?あれ?霊っていないんじゃなかったっけ?」
「せやな。まぁ少なくともうちは知らん。名目上除霊って言うてるけど、まぁ変な現象を解消しに来てる感じやで。」
「そ、そうなんだ・・・」
拓哉は正直なところ、そんなことどうでも良かった。
徹夜明けで若干眠いので、そろそろ帰って寝たかったほどだ。
「なんや、あんた眠そうやな・・・。せや、吉田も見学に来るか?除霊。」
「あー、はいはい。・・・はい?」
「だから、見学じゃー。滅多に見れるもんやないで、除霊なんて。」
「え、いや、俺興味が--」
「よし、そうと決まったらついてきー。おーい、こいつは友人や。連れていくことにしたから、案内頼むで。」
拓哉が断る暇さえ与えず、御子は付き人の面々に指示を出していた。
こうなったらもうついて行くしかない。
(うわ―マジかー。めんどくさいんだけど・・・。)
拓哉は本気で興味が無かった。
だが相手が女性な上にギャルっぽいせいであまり強く意見できず、付き人の人たちに案内されるがまま車に乗り込み現場へと拉致されるのだった・・・。
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同県内某所。
街中からは少し外れた閑散とした立地。
周囲には山や森、畑などが多い。
民家もちらほら見える、そんな場所にある少し古い豪華な屋敷に連れられてきていた。
拓哉の住んでいる市内ではあるが、この辺りはそこまで詳しいわけでもないし、知り合いがいるわけでもない。
ただ、この辺りには不釣り合いな豪邸の為、市内では比較的有名な屋敷ではあった。
恐らく使用人たちがが屋敷の主に挨拶をしている。
何を話しているのかはわからないが。
やがて御子が紹介されたらしく、前に出た。
「西条御子です。まずは現場を見せて頂きたく、よろしいでしょうか?」
横で見ている拓哉は、普通の喋り方も出来るんだなぁと感心していた。
見た目はともかく、一応公私のけじめはつけているみたいだ。
由緒正しき一族の御令嬢なんだから当たり前と言えば当たり前なんだが。
「--あの、そちらの方は?」
拓哉は屋敷の人間に明らかに不審がられていた。
黒服スーツ集団と巫女服の霊能力者。
そんな中にカジュアルな普段着の若い男が混じっていたら気になるのもわからなくもない。
「あ、えっと--」
「あ、ああこちらは助手の吉田と言います。邪魔はしませんのでお気になさらず。」
御子がサラッと適当な紹介をした。
こういう部分、彼(唯志)みたいだな。
そうして屋敷の人間に連れられ、御子と共に現場へと赴いた。
先日の有名心霊スポットなんかとは違う。
これが拓哉にとっては初めてのちゃんとした心霊現象の体験となるのだった。




