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6日目(2) 際会

2話目です。

「神のお声が届きました。お言葉に従い、その御許(みもと)へ参ります」


「ば、ばかなことをっ!!」


あららら、大司教ともあろうお方が神を否定してもいいのかしらね?というより、これが本音だわね。


(まさしくその通り。いいぞ、そのまま続けて)


了解!


水晶を胸に抱き、振り向いてドアへと歩む。必然的に大司教と向き合ったんだけど・・・この人、こんなにおデブさんだったかしら。肌もぶつぶつができて脂ぎってるし、顔色は・・・あ、この状況じゃ青ざめて当然か。唇もアワアワしてるから、よっぽど衝撃だったのねぇ。


そのまま進めば、よろけて退いてくれたから楽勝に通り抜けちゃったわ。さて、道案内よろしく!


(いいよいいよ、まっかせて!そのまま進んで、最初の角を右に、そのあと2つ目の十字路を左に曲がった先。その正面だ)


意外と近くに居たのね、ドラゴンさん。


(ああ、結晶を生成する効率を上げようと聖女の部屋を近くへ作ったんだろうね。それがもう浅ましいと気付かないんだからな、こいつらは)


ふふっ。今回はそのおかげで簡単でしょ。


(あはは。ホントにそうだね、愉快だよ!)


「ま、待て、聖女。その先に行ってはならぬ!」


まっすぐの廊下に差し掛かると、そこにはたくさんの騎士と司教の姿が。


廊下には陽射しが斜めに差し込み、まぶしいばかりの純白に輝いている。人々の群れているその奥には、ドラゴンを浮き彫りにした白い荘重な扉がある。そこに行かせまいと大司教が追いすがる。


「そ、その奥は悪しきドラゴンが封印されている場所じゃ!神など居るわけがない!戻るんじゃ!!」


大司教の手が私につかみかかる直前、水晶から光があふれて私を包み込む。その光の結界に弾かれ、大司教は吹っ飛んだ。


「「「「「「大司教様!!!」」」」」」


教会の頂点たる大司教が触れることもかなわない存在となった私に恐れをなし、人々は私の前から転げるように散っていく。うん、力があるってこういう景色が見えるんだ。癖になりそう♪


(キミはそうならないね。強い人だから)


わかんないわよ、そんなこと。人は変わる生き物だもの、私だってどうなるか、自分でも自信ないわ。


(そういう判断ができるからこそ、強いんだよ。知ることの強さだね)


大絶賛してくれてありがとう。じゃ、ここが最後の関門よ。頑張りましょ。


(ああ、やってやるさ!)


白い扉の前に行き、立ち止まる。遠くからじゃわからなかったけど、扉のあちこちには傷がついているし、取っ手は使いこんだせいでガタがきているようだ。封印していると言っておきながらこの扉、しっかり使われているじゃないの。なに嘘ついてんのよ。


(そりゃそうだろ。ここに来なけりゃ結晶を手に入れられないんだから)


そうなのよね。その辺、言いつくろう気もないのかしら、あの人たち。


(ある訳ないだろ。あ、王家の人間もやってきた。役者もそろったし、最後の詰め、やるか!)


ええ、行くわよ!


後ろでわあわあ騒ぐ声を聞き流し、私は水晶を掲げる。私を包んで輝く光の結界が一段と強さを増し、そして扉に向かって収束する。



    ドオォォォン・・・



遠くの潮騒のような銅鑼のような音が響き、扉は中へ倒れこんでいった。


そのあとを追って、私は部屋に踏み込む。部屋の中央、見上げるばかりの結晶の柱。その中にある、紅く鼓動を続ける心臓こそが、ドラゴンの核であり、結晶を生み出す元でもあった。


それに向かって、私は再度水晶を掲げる。そして、


「神よ。あなたのお言葉に従い、御前(おんまえ)に参上いたしました。連綿(れんめん)と紡がれた数多(あまた)の聖女の祈りと想いをお受け取り下さい」


これは私の即興の言葉。たとえ後で何を言われようとも、今までの聖女がやってきたことを無にされてたまるもんですか。観客がいる今こそ、言葉にしておかないと私自身が後悔する。


(やるね、キミ。ホントに役者だ。今度は僕が頑張るから、見ててくれ)


鼓動を続ける心臓を中心に、細かくひびが入り始める。ピシピシピシ、とクモの巣状に伸びたひびがあちこちで繋がり、広がり、さらに伸びて・・・



  ピッシイィィィ・・・



砕けるのではなく、崩れるのでもなく。


水晶の柱は中から押し開けるように広がり、心臓を包み込んで形状を変え、持ち上がり、そして、ひとつの形を成した。



声だけだったドラゴンさん、いよいよ登場です。

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