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本当の目的

 燐とカナタが城を目指し始めて何分経っただろうか。今は1分1秒が惜しい。エルディアの魔法が発動した跡はないので、相当遠回りしたに違いない。


 ならば燐とカナタが追いつくことは可能だ。城の外観が見えてきたが一切ディランの逃げたと思われる痕跡は見当たらない。まだ向かっている最中なのか、心配のし過ぎだったのか燐は状況の整理に勤めた。


 カナタは燐とは離れ、城の中へと入っていく。その間に燐は数人の兵に状況を聞いたが、敵襲の恐れはないという事だった。


「燐!!大変だよ!!」

「何かわかったんですか、カナタさん!!?」


 カナタが城の中から慌てて出てくると、燐の傍まで一気に駆け寄ってくる。カナタは真っ先にアリアとキャロルの無事を確認しにいったらしい。燐もなんでそうしなかったのかと考えたが、動揺していたのだろうと気持ちを切り替える。


「誰かはわからないけど、大怪我をした子が城の中へ飛び込んできたらしんだけど。どうやら、他にも大勢ケガをしているとかでアリアが治療に向かったらしい」

「それで?」

「あんた、まだ気付かないの!?」


 カナタは燐の鈍感さに苛立ちを覚え、状況を早足で説明する。ディランが来たと言う報告はないが、怪我人がいる。ならばその怪我人は誰かという話だが、先回りさせていた誰かがディランと鉢合わせて負傷をしたという考えもない事は無いが合理的ではない。


 ならば先程の戦いで、回復班が救助を求めに帰った……というのも考えにくい話である。なら自然と怪しまれず、怪我を負っている者とは間違いなく先程の奴隷兵の誰かだろう。


 元々が妖精とエルフで構成されていると考えるのが妥当であり、連れていた様には見えなかったので既に別行動を取っていたと言う可能性だってある。


「わかったかい、燐。心配なのは分かるけど少しは落ち着きな。それに、あの子だって戦う力は持っている。そう簡単にどうにかなりはしないさ」

「そうですね。すいません……少し取り乱していました」

「それにしてもロンドのくそじじい……あいつは何をしているんだい。全く使えないね」


 カナタはどこにいるかわからないロンドに腹を立てて、口の悪い事を言っている。サバサバはしているけど、明るくて優しいカナタなのだが状況も相まって悪態が止まらない。


 見た目的には父と娘って感じなのだが、カナタの方が年上でロンドの方が年下なのは不思議なものである。


 噂をしていると、遠くからロンドの姿が見えたのでカナタが怒鳴り散らす。


「あんたは何をしているんだい!!はぁ~……私はあんたの師匠として恥ずかしいよ。一番弟子がこれじゃぁ……先が思いやられるよ」

「す、すまねぇ……。実は嬢ちゃん……キャロルちゃんが消えたんだ」

「おやっさん、どう言う事ですか?キャロルが消えたって?」

「いや、燐、あのな。母親の手伝いをするって言って飛び出して行ったんだよ。俺も心配で辺りを探したんだが、もう行ってしまったあとでよ……すまねぇ」


 どうやらキャロルはアリアの後を追って、怪我人とどこかにいったらしい。ロンドも既に影も形もない上、行き先もわからないとなると探しようが無いので、片っ端から走り回っていたそうだ。


 それを聞きカナタが呆れたように、魔法を構築していく。持っていた弓を突き出し、それを中心に円陣が編まれていった。発動色は黄色がかった緑色をしているので、恐らくは支援魔法の類だろう。


 ゆっくりとだが、その円陣の大きさが尋常ではない大きさになっていく。こんな大きさの物は大魔法と呼ばれる魔法なのだが、そこまで大それたものではなかった。


「燐わかったよ!!2人はあっちの方角にいる!!その先に数人の集団が集まっているけど、恐らくあの男だよ」

「急ぎましょう!!カナタさん!!おやっさん!!」


 2人は軽く頷き、カナタを先頭に森や川を走り始めた。道すがら燐はカナタにさっきの魔法の事を聞くと、弓兵の使う狩猟探査や気配察知の魔法を独自にアレンジしたカナタ専用の広域探索魔法らしい。


 一応ロンドにも教えていると言うカナタにロンドは顔を背ける。忘れていたわけではなく、弓の技術以上にロンドは魔法が苦手なのだ。使える魔法は初級から中級の間までの魔法に限られる。


 エルフの癖に筋肉達磨で弓が苦手でカナタに弟子入りし、魔法はそれ以上に苦手。一言で表すなら脳筋という言葉がしっくりとくる。


「おやっさんって本当にエルフですか……?実はその耳……飾りとか?」

「ばっ!?何言い出すんだ、燐!!俺以上にエルフらしいエルフはそうはいないぞ!?」

「「…………」」


 燐とカナタは一言も言葉を発さず、黙々と目的地に向かう。ロンドが悔しそうに唇を噛んでいるが、二人は華麗にスルーし続けた。


 結構走ってきたが、なかなかアリアとキャロルの姿が見えない事に焦りつつ燐はカナタに視線で訴えかける。視線を向けられたカナタも内心焦っているのだ。順調に進んでいるとすれば、アリアとキャロルはディランと対峙しているはずだからだ。


 それを悟らせないようにカナタは燐に大丈夫だと告げるが、心を隠しきれず伝わってしまう。そんなカナタの心遣いを感じて燐は何も言わず足を速める。


「見えた!!」


 急にカナタが声を荒らげたので、燐とロンドは遠くに視線を飛ばす。確かにそれらしい人影は見えたが、もう少し距離がある。


「カナタさん、弓で応戦は出来ますか?」

「出来ない事はないけど、この距離だと届くまで時間がかかるし、動かれたら二人に当たるかもしれない」

「くっ……急ぎましょう」


 燐は弓での牽制は諦め、今はただ真っ直ぐに走り続けた。残り距離が500mと言った所で、ディランが燐達の存在に気付く。


 何かを言っているが、まだ距離があるためはっきりと聞き取れない。どうやら騎士兵に迎撃させようとしているらしいが、今更数人で止められるわけもない事はわかりきっているはずだ。


 姿がはっきりしていくにつれて、アリアが怪我をしている事に気付いた燐は加速して騎士兵の間をすり抜けた。その勢いのまま、アリアの助けに入ろうとした燐だったが、その足を止める。


「……卑怯だぞ」

「何の事かな?」

「わかっているだろう。キャロルを放してもらおうか?」


 そうなのだ。どういう訳かキャロルは縄で拘束されており、黒装束の兵に剣を首筋にあてられている。正直な所、あの程度の数に圧倒されるわけないので何か理由があるに違いない。


「二人に何をした?答えろ!!」

「私は何もしていませんよ?そうですね、敢えて言うならば……私が自分の奴隷を一人づつ殺していっただけ……ですかね?くっくっく」

「何を言って……いるんだ?」


 燐は訳が分からずアリアに顔を向けると、満身創痍と言った感じだった。心なしか手が震えているが、見間違いではない。


「アリアさん……これは?」

「すいません、燐さん。私の責任です……。隙をつかれて背後から襲い掛かられて……」


 アリアがそう簡単に背後を取られるわけがない。情報が少なすぎるせいもあるが、ディランは何をしたのか燐にはわからなかった。


 すると楽しそうにディランが説明口調で事の顛末を語りだす。有利に立つと身を滅ぼすタイプの男だが、燐にとっては都合が良い。


 怒りを納め、燐はディランの話を聞き始めた。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想・意見・誤字報告ありがとうございます。


おはようございます

目が覚めてご飯を食べて、何時に更新しようかなー

明日の更新にしようかなぁーって思ったりもしましたが

最新話上げさせていただきました

きっと、疲れているので私はこの後ねちゃいますけど

皆さんに、よい休日を♪


それでは次回更新でまたお会いしましょう。

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