041 バリンブル王国の悪の化身 改稿前
その惑星内には大きくいって植物系と動物系のふたつの生命体に分類された生物が暮らしていた。
中でも惑星を牛耳っているといって過言ではないバリンブルは最強だった。
空には網上の物体が浮かんでいる。
そのあたりは絶え間なくガスが吹き出していて、それはガスの蒸気で浮かんでいることが出来るのであった。
それはバリンブルにとって、他の生命体にとって、種の巣と呼ばれるものだった。
バリンブルは植物系生命体である。
そして植物系はこのバリンブル以外にはひとつもなかった…
それに対して、地を走り続ける動物系生命体は数多かった。
主に角を生やした猛獣のディンゴロ、群れで行動し逃げ足の早いバンゴロ、手足の長い緩慢なウィゴロがいるが、それ以外は数えればキリがないくらいに数多く枝分かれしていたのだった。
動物が動物を襲って食うこともあったが、それは全体の割合としては少数である。
動物系生命体のほとんどは、基本植物系生命体であるバリンブルの死骸を食べた。
それほどまでにバリンブルは惑星じゅうに溢れかえっていたのである。
バリンブルは光合成をしているがそれだけではない。
それに浮かんだ種の巣…
その高みから、肥え太った動物を見計らい、空から種子を飛ばして突き刺す。
突き刺された動物は、いずれ芽を皮切りに茎、葉、花とその体より生やして生きていく。
それは寄生であるから、当然最後には動物の養分をすべて吸い取ってしまう。
寄生された動物は、その仲間がその植物の侵入に咲いた仲間の肉体にある植物を食うこともできるかもしれなかったが、
それをするものは皆無と言ってよかった。
なぜならバリンブルは危険な刃や刺をからだじゅうに這わせていたし、しかも猛毒を持っていた。
よって泣き寝入りをする方が聡明だったのである。
寄生して養分を吸い取った果てには、動物は死んでいき、バリンブルは巨大化して樹木となるのだった。
バリンブルは惑星の頂点であった。
巨大樹木は季節ごとに巨大な実を実らせる。
角を生やした猛獣のディンゴロは高く豊富に吊るされたその実を振り落とすために、樹木へ向かって突進する!
これは実りの季節の恒例となっていた。
なぜなら実を実らせてから、その実を地面に落とすまでには長い時間を要するのであって、まともにそれを待っているのであれば、空腹によってのたれ死んでしまうからであった。
しかし、それを嘲笑うかのように、どれだけ激しい突進を重ねてみたってなかなかその実が落ちることはなかったのだ。
ディンゴロはそのせいで角を折ってしまう。
そうではなくとも、脳震盪で気絶する。
何頭も何頭もその突進が積み重ねられて、しまいにやっと実は落とされることとなる。
その時々で大量に落ちることもあったし、その逆もあった。
実らせたばかりの時期、その初期に突進をしたって無駄だることを皆は知っている。
それでも…
はじめの一歩を誰かが繰り出さなければ、それは自然には永遠に落ちてこないのである。
結局誰かが犠牲になって一族のために勇敢なその一歩を踏み出さねばならなかったのである。
過去に、その実りの熟れるまでを待ってみようと試みたことがあったが、無駄であった。
というより真逆であった。
時間を待ったところで、その実は熟れるどころかますます青くなるばかりだった。
なぜならその実は、突進による振動によって熟れていくのである。
よくできたシステムだ。
よってバリンブルの巨大樹の周りには、大量のディンゴロの死骸が転がっているのは恒例であった。
そしてそれを目掛けてバリンブルの種の巣は、矢を放つのだ…
バリンブルは最強だ。
しかし、近頃情勢に変化があるという。
ただ手足が長いだけのなまけもの、ウィゴロのなかに、一匹だけ、特殊なタイプが現れたということであった。
それは実際、バリンブルにとっての驚異となっていくのかもしれなかった。
そのウィゴロは手足の長さだけでなく、異常な腕力と脚力を生まれ持っていた。
その他のウィゴロとは比較にならぬ程の。
そしてグイグイとその巨大樹の上まで登りきったかと思うと、熟れた実をうまそうにむしゃぶりついた。
彼の名はジェットボング。
ジェットバングの長男であった。
ジェットバングはウィゴロの中でも特に緩慢なタイプで、どうしてジェットボングのような強靭な種が生まれたのかみなは不思議でならない。
ジェットボングはたらふく食い荒らして、バリンブルの巨大樹を次々にすかすかにしていった。
栄養を取れば取るほど、ジェットボングはますますたくましくなっていく。
それだけではなかった。
ジェットボングが食い散らした落とされた実に群がるバンゴロ…
彼らは物陰に隠れて素早い行動でジェットボングを追っている。
それから、生命を犠牲にしてまで、突進によるその実の獲得を、寸前にまで控えていたディンゴロたちの血の滲む格闘の只中で、突然横槍を入れるように、その落ちかけていた実を、ジェットボングはよじ登って奪い去っていく…
それに怒ってディンゴロたちは巨大樹に突進するが、高みの見物で何食わぬ表情で、実をむしゃぶりついて食い尽くしてしまうのである。
そしてそれどころではない。
まだ食えぬ硬い青い実を、ただの食べ残しを狙ったウィゴロへ、生命をかけた獲得の寸前に奪い取るカタチとなって怒り心頭であるディンゴロへ、のみならず近頃腕力の鍛錬でその可能性を見出しつつある巨大樹の中腹にまでよじ登ることの出来ている同胞たるバンゴロに対してまで…
その頭蓋骨目掛けて投げつけて…殺しに次ぐ殺しを重ねていった……
ジェットボングは惑星の悪の化身となり、それ以外の生命体は皆結託してどうにかせねばならない事態となっていた……




