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 下宿先であるコーポ涼宮に到着し、タクシーから降りて、我が部屋へと続く扉を開く。そこで、白雪と銀次が盛大に出迎えてくれた。


「聖夜さん! 退院おめでとうございます!!」


「お勤めご苦労やったな聖夜!」


 僕が入院中は部屋を好きに使っていいよと、二人に合鍵を渡していたため、彼らが部屋にいる事自体に驚きはなかった。それでもクラッカー片手に出迎えられると、こそばゆかった。


「息子はもう大丈夫なんか」


「うん。姿形はもう元通りだよ。一時は、それはもう大変だったけれど」


 あのころの息子を思い出しただけで下半身がキュンキュンした。


「よかったなぁ! じゃあ聖武器たちも呼んで盛大に出所祝いしようや!」


「そうだね。エクスカリバーさんたちとも久々に会いたいし」


 では早速呼ぼうかと、僕は慣れた心意気で息子に力を込める。


 が、息子はびくともしなかった。


「……どないしたんや。顔色悪いで」


 僕は退院直後のことを思い出していた。


 看護師フェチでもある僕が、彼女らをみても、息子は立ち上がらなかった。そして現在、白雪の笑顔を見ても、押しても引いてもびくともしない。


 なぜだろう。僕はどうしてしまったのか。もしかして、性欲が無くなってしまったのか。


 そう思ったものの、心の息子は熱り立っている。


 では一体全体どうしてしまったのか。


 脳内にある知識の引き出しをひっくり返し、原因を探っていると、ある可能性がこぼれ落ちた。


「もしかしたら」


 ただ事ではないと察したのか、銀次も白雪も、固唾を呑んで次の言葉を待った。


「もしかしたら、僕は、不全になってしまったのかもしれない」


 一難去ってまた一難、虎口を逃れたものの竜穴に入ってしまった気配がした。



「勃起不全だね」

 次の日、病院に舞い戻った僕に、お医者様はそう宣告した。


 知らぬ者のために説明しておこう。勃起不全とは、男性の性的機能障害の一つで、息子のスタンドアップあるいは維持ができなくなる病気のことを指す。


 お医者様曰く、僕の場合は深層心因、つまりトラウマが起因となっているという。

 おそらく、粉々に砕け散ったあのときの記憶が枷となり、エレクションすることを阻害しているのであろう。


「……いつごろ治るのでしょうか」


 付き添ってくれていた白雪が、神妙の面立ちでお医者様に問いかけた。


「こればかりは何とも言えないね。ただ、時間がかかる場合もあるとだけ言っておこう」


「そ、そんな……」


 泣きだしそうな白雪の顔を見るのが辛かった。


 心配させまいと息子に力を入れ、エクスカリバーさんを召喚し、EDになったのは冗談だよと言って上げたかった。


 だが悲しきかな、僕の息子は黙したまま、ただの一言も交わすこと叶わなかった。


 病院からの帰り道、白雪は健気に励まし続けてくれた。


「すぐに治りますよ。心配しなくたって大丈夫です。そうそう、亜鉛が効くと聞いたことがありますよ。亜鉛がよく取れる食材を買って帰りましょう。料理は任せてください」


 白雪はいつものように振る舞おうと努力していた。ただいつも彼を見ている僕には、それが強がりで、無理しているのだと分かってしまった。


「うん、ありがとう」


 しかしそれを指摘することも、無下にすることもできず、僕はただただ空笑いし続けていた。

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