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13話 即席パーティ初陣!

バイトやら部活やらで投稿が遅くなりました。

すみません!

 翌朝。

 まだ空気の冷たさが残る時間帯、創理、セリス、レイグの3人は学院の門に集まっていた。

 

 「2人とも本当にありがとう!」


 まだ出会ってから10日ほどしか経っていないのに2人は俺を手伝ってくれる。このことには感謝しなければならない。


 「今日から俺たちの冒険が始まるわけだが、行先は決まっているのか? ソーリ」


 レイグは少し真剣な顔で質問してきた。


 「うん。まずはフィリアの森に行こうと思う」

 「あそこはつまらないだろう? 好戦的な魔物がいない」


 そうなのだ。フィリアの森に強い魔物はいるが、襲いかかってくることはほとんど無い。というのが、この辺りでの認識となっている。

 しかし、


 「この前私たちは鋼蟻(アント)の群れに襲われたの」

 「何かしたんじゃないのか?」

 「ううん、ソーリが少し追い払おうとしただけ」


 セリスは首を振りながら続けた。


 「それに結界が張られてたわけじゃないのに、あいつらは森の外に出なかったの。それが気になるのよね」

 「だから最初はフィリアの森に行きたいんだ。いいかな? レイグ」

 「ああ。大丈夫だぞ? 俺は鼻からソーリの考えに従うつもりだ」


 なんだか厄介オタクみたいで気持ち悪いが、まあいいだろう。

 レイグの承諾も得られた。準備だって抜かりない。


 「行こう!」


 俺たちはフィリアの森へと歩み始めた。





 フィリアの森には、やはり温かみのある魔気が充満している。

 何も知らない人間がここへ来たら、完全に気を抜いてしまうだろう。それだけ森の中は穏やかなのだ。

 

 「ここからはどうする?」

 「整備された道から外れて、森の奥に行くつもりだよ」


 以前ここに訪れた時、森の奥から鋼蟻(アント)の群れは現れた。ならばこちらから出向いて、原因を見つけたい。もしかしたら俺が帰るための手がかりが見つかるかもしれないし、フィリアの森の異常事態を解決できるかもしれない。


 「ならば進もう」

 

 3人で森の奥に進んで行く。およそ1時間は歩き続けた。そこで明らかに魔気の質が変化していることを肌で感じた。まるで、ヴァルグの森にいるような……。

 しかし一向に魔物が現れない。というか、ここまで一匹も魔物を見かけなかった。


 「ねぇレイグ、この魔力おかしくない……?」

 「ああ。フィリアの森にはこんなにも冷たい魔力の持ち主がいるのか?」


 やはり2人も異変を感じ取っていたようだ。だが会話にはどうしても引っかかる部分があった。


 「魔力がおかしいの? 魔気じゃなくて?」

 「なんだソーリ。おかしいのは紛れもなく魔力だ。魔気じゃない」


 それが本当だとしたらこの魔力の持ち主は強いなんて言葉では形容できないのではないか。

 その時だった。


 「ソーリ、レイグ、止まって」


 セリスの声は小さかったが、妙に張りつめていた。


 「どうしたの……?」

 「……何か、こっちに来る」


 その一言で周囲の空気が変わる。


 森は静かだ。

 風もある。葉も揺れている。

 だが――何かが欠けている。


 「……気配がないのに、来るってどういう――」


 ――ズンッ


 言い終わる前だった。

 足元の土がわずかに沈み、木々がなぎ倒されている。


 「なにこれ……!」


 何がどうなっているんだ。認識できたのは音と地形が変化したことだけ。

 ただそれだけだった。

 未だに魔物の気配は感じられない。


 ズンッ


 まただ。強く踏み込むような軽い爆発音。


 「え……」


 何かが視界の端を通り過ぎた気がした。

 だが――


 「チッ!」


 レイグの舌打ちとともに、金属の弾ける音が森に響く。

 レイグは得体の知れない、その何かを剣で受け止めていた。


 「……見えねぇな」


 低く吐き捨てる。

 剣を持つ腕は、わずかに震えていた。


 「今の……何?」

 「見えなかった……」


 俺もセリスも、この異様さに驚きを隠せなかった。


 「もたもたするな! 戦うんだ! 準備しろ!」

 

 ――ドンッ!!


 「ぐぇっ」


 フードをレイグに引かれ、首が締まり、変な声が出た。

 しかし感謝すべきだろう。

 立っていた場所は深く抉れて、小さな穴が出来ていた。

 あのままでは確実に死んでいた。


 「あ、ありがとう」

 「次も守ってやれるかはわからないぞ」


 この間にも、次の攻撃が飛んでくるかもしれない。

 一息つく間も無かった。


 「二人ともこっちに来て!

  周りに風の結界を張るから!」


 セリスは自分たちの周りを、風魔法を纏い網のような形状をした結界で覆った。


 ドンッ


 またしても、踏み込んだ際の爆発音。

 しかし、


 ビチャッ


 足元には液体が飛び散っていた。

 血液だ。

 ただし、赤みがかったどす黒い色。


 先ほどまでの見えない魔物は、どうやら風の刃に触れて反射的に距離を取ったようだった。

 少し遅れてその魔物は、木の陰から顔を覗かせた。


 「灰狼(フェンル)か……」


 レイグが低く呟く。


 また灰狼(フェンル)の姿が視界から消えた。

 創理が反応するよりも早く――


 「クッソ……」


 レイグが吹き飛ばされた。


 「レイグ!?」

 「問題ねぇ……! が、まともに捉えられねぇな」


 早すぎて、攻撃を当てるどころか避けることもままならない。

 どこかでこんな戦い方をする奴いたよな。とにかく早い近接攻撃。

 俺はそんな奴を知っている。戦ったこともある。


 「セリス! 俺が動きを止めてみる!」


 地面から土の壁をいくつも立てる。同時に、水を混ぜて足元も不安定にした。

 いくら早いとは言え、踏み込みが効かなければ多少は抑えられるだろう。

 そう考えていた。


 「なっ……!」


 一瞬で全て踏み砕かれた。

 どころか全く減速していない。


 「やば……」


 そう思った時にはもう遅かった。

 腹部に強い衝撃が走った。

 今自分の身体がどうなっているのかわからない。

 少なくとも、今までで一番の痛み。


 「……っ、がっ……!」


 呼吸が出来ない。

 背中を強打してしまったからだ。


 「ソーリ!」


 近くにいるはずなのに、遠くから声が聞こえるような感覚。

 (やばい……)

 頭では理解してるのに、指の一本すら動かせない。

 荷物も散乱してしまっている。

 

 辺りの音が聞こえずらい。

 視界も端から徐々に暗くなってきた。

 死を覚悟した。





 部屋に戻ると、一冊の本を手にしながらベッドに腰を掛けた。

 ”探究魔典”。

 表紙に書かれている見慣れた文字。

 期待で胸を膨らませて、本を開いた。

 しかし、


 「なんだ……これ……」


 表紙をめくり現れたのは白紙。

 その次も、またその次も、いくらめくっても文字は書かれていなかった。

 有り得ない。こんなに分厚い本が、ただの白紙なわけが無い。

 そう思いながら、紙に触れた。


 「今のは……」


 文字は読めない。書いていないのだから。

 なのに何故か、文を読んだような、あるいは、元から知っていたような感覚があった。





 これは、昨夜の記憶……。

 何とか意識を保ち、探究魔典の最初のページに触れる。

 すると、頭に情報が流れ込んでくる。

 それは以前から知っていたことのように、自分の知識となっていた。


 「ソーリ! 危ない!」

 セリスの声で我に返ると、灰狼(フェンル)は俺をロックオンしていた。


 横たわったまま灰狼(フェンル)に向けて手を伸ばす。

 初めてのはずなのに、初めてとは思えないほどに染み付いた魔法。確信をもって放った。


 「え……」

 

 セリスが驚くのも無理はない。

 何故なら、灰狼(フェンル)は壁に激突したのだから。


 「今のは……偶然じゃなさそうだな。

  軌道が”逸れた”」

 

 レイグは感心しているようだがまだ早い。

 灰狼(フェンル)はまだこちらに牙をむいている。


 「レイグ、まだだよ」


 こちらに突進してくる灰狼(フェンル)をまた逸らし、序盤にできた穴に落とした。

 穴の中には炎を敷いている。

 

 灰狼(フェンル)が炎の中から起き上がってくることは無かった。

 

 「……終わったね」


 セリスの言葉に、ようやく力が抜ける。

 レイグも小さく息を吐いた。

 3人でなんとか掴んだ勝利だった。

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