16.はじまり
「シスター・エルフィ、こんにちは」
「はい、こんにちは」
いつぞや、リリエルに話しかけていた少年はすっかり元気になって、ミサに来て挨拶を交わしていた。
そこで、はたと気付く。シスター・エルフィが抱えている、小さな赤ん坊に。
「あー、その子、この間修道院に拾われてきた子?可愛いね!」
「そうでしょ?ふふ、お手々もこんなにちっちゃいの、優しくなでてあげてね」
「うん!」
少年がその赤ん坊に触れた途端、パッと目を開けて、泣き始めた。
「あっ、ごめんね」
少年は手を引っ込める。
「大丈夫。……おっぱいの時間かもね」
「あっ、そうなんだ」
少年は顔を赤らめて、そ、それじゃ!と手を振って帰っていく。
「もう。驚かせちゃ駄目じゃない。リリエルちゃん」
シスター・エルフィは慈母のような微笑みを浮かべ、赤毛の赤子に話しかける。
『完全な』人間に生まれ変わったリリエルは、修道院で健全に育てられる事となり、シスター・エルフィはその役を買って出たのだ。
「私は一生処女だからおっぱいは出ないけどね……ふふ、ミルクを温めておいたから、飲みましょうね」
きゃっきゃと無邪気に笑うリリエル。
その姿に、思わず傍らにいたシスター・マギーも顔を綻ばせる。
「まさか、赤ん坊になってまで人間になることを望むなんて」
「……それだけ、彼女が人間らしくなっていた、という事でしょう。いえ、或いは、人間と共に生きることを望んだのかも」
エルフィはリリエルにミルクをあげながら、優しく頭を撫でる。
「あー、でもちょっとだけ残念。恋人だと思っていた女の子が、娘になっちゃうなんて」
「……今の発言は、聞かなかったことにしておきます。さて、私は仕事に戻りますよ」
シスター・マギーは苦笑して、院の奥へ引っ込んでいった。
「まぁ、これから私達の関係は育んでいこう。ゆっくりと。これから、始まるんだから」
そう語りかけるエルフィに向かって、赤子のリリエルはすっかり無垢な瞳で、にっこりと笑うのだった。
(おわり)
サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、最終話です。
決断、そして、リリエルにとっての終わりは新たな人生の始まりとなる。
大団円とは言えないかも知れないけれど、大罪人にとっては甘すぎる裁定であり
エルフィにとっては親友の記憶と姿を失った結末なので、皆が等しく少しずつ不幸になる……。
でも、少しだけ幸せに向かって前進する、そんな感じの終わり方です。
最近、Fate/HFを観た影響とかが濃厚に出てる気がしますね……。
桜はもっと幸せになっていいと思うの……。
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