14.赦罪
「……やあ、久しぶり。君との付き合いもこれでもう、2ヶ月ほどになるかね」
ファーザー・ファリックがいつもの穏やかな笑みとは違う、厳しい目つきで私の前に現れた。
「その様子を見る限り、事情は察しているのだね」
「……ええ」
私は、無意識のうちに近隣住民の、幼い少年の夢に侵入し、彼の精気を吸い尽くした。
いや、尽くしてはいないらしいが、あと一歩対処が遅ければ死んでいた、との事である。
「……流石に、もう情状酌量の余地はない、って所かしら」
私は諦め気味に言う。
「……よく耐えた、とは思う。が、私の立場から言って、これ以上君を擁護することは出来ない」
そうよね。
分かっていた事だ。
これ以上、サキュバスの能力を使う事は、私にとっても望ましい事ではなかったが……。
「エルフィとのお別れだけ、させてくれる?」
「良かろう。君の人間としての、親友との別れだ。私も、勿論シスター・マギーも、けして否とは言うまい」
私は覚悟を決め、エルフィとの別れを告げに、彼女の部屋へ向かう。
◇
「……という訳だから、私、退治されちゃうの」
私がエルフィにそう告げた時、エルフィは意外にも取り乱しはしなかった。
ある程度、察していたのかも知れない。
「ごめんね。私が不甲斐ないばっかりに、エルフィに寂しい思いさせちゃうけど、でも、別れだけはちゃんとしときたかったの」
私は気まずくなり言い募るが、エルフィは何も言わず、ただ私の目を見つめていた。
「その……」
沈黙に耐えかね、私が何かを口にしようとした、その時だった。
エルフィは私に、短く問いかける。
「諦めちゃうの?」
その一言だけで、十分だった。
ボロッ、と私の目から涙が零れ落ちた。
そして、言葉も。
「諦めたくない……死にたくない、生きたい……生きたいよぉ……」
私の心からの願いは、結局、そこだったのだ。
私が多くの人間の生命を踏みつけにして、許されざる罪を濯ぐべくこの修道院で禁欲生活を続け、衝動が無意識のうちに無辜の民を傷付けた、今になっても。
「勝手だよね、駄目だよね、私は本当は死んでいなきゃいけなかったし、今すぐにでも死ななきゃいけなかったのに、どうしてかな……」
私は、それでも生きる事を諦めたくなかった。
「それで当たり前だよ。生きているんだもの」
エルフィは、そう言って、私の手を取る。
「神様はエルフィの罪を許さないかも知れないし、ファーザーも許さないかも知れない。でも」
エルフィは、とびきりの笑顔を私に向けた。
痛ましさすら飲み込むような、笑顔を。
「私は、貴女を赦したい」
サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、14話です。
赦罪の回。
許されるべきことではないかも知れない。
だけど、誰が許さなくても私は赦すよ。
そう言ってくれるエルフィの存在がありがたいな、って思います。
自分で書いててちょっと胸に来た。こういう展開好きなんだな……こうなるとは思ってませんでしたけど。
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