8—9
愛弓が射る弓を莉衣奈は至近距離で斬り落とす。
2人の距離は2メートル弱。
愛弓の矢は無限に現れ、弦を引くタイミングで自動で矢が出現する。
並走しながら攻防が繰り広げられ、愛弓の行動が一瞬遅れると莉衣奈は距離を詰める。
矢を分裂させるには溜める必要があるので、愛弓は速度重視で1本を射るしかなかった。
喋ってる余裕は無かった。
「準備出来たよ」
ドーム型バリアーの中に居るリアたちの元にアミが戻って来た。
「お疲れ様です」
リアが出迎えると、すぐ後ろに待機していた鏡花が銃を構える。
「じゃあ、知らせの合図送りますね! 吹雪ちゃんお願い」
「はい!」
吹雪が上空に細かい氷の塊をばら撒く。
そこに鏡花がレーザーを当てて反射させると、連鎖で反射を繰り返し輝かせた。
ドゴォン
ヒメのハンマーがまた空振りで地面を凹ませる。
その都度ユメから投げられるナイフが襲いかかり、頬や腕などに切り傷が増えて行く。
「諦めろヒメ、何度やっても私に攻撃は当てられない」
話は椿芽から聞いた。
認識をおかしくさせる能力だと。
実際に対峙してみてわかる。
目の前に居るように見えるユメの姿は幻なのだと。本当は全然違う場所に居るのだと。
確かに1人だと手こずるし無駄に傷を増やすだけだ。
1人なら。
「!?」
椿芽が誰も居ない、何も無い場所に羽を飛ばした。
その羽は空中で切り落とされ真っ二つになった。
「マジかよ、椿芽には見えて——っ」
ドゴォン!!
薄らと見えた人影目掛けてヒメはハンマーを振り下ろす。
「ふんッ」
間髪入れずハンマーを横にスイングすると、初めて命中した。
「ぐぅっっ」
ユメは地面を転がると、体勢を整えようと上体を起こす。
その瞬間———
ハンマーを振り下ろすヒメが目の前に接近していたのだ。
「ちぃっっ」
ユメは指をパチンと鳴らすと、ヒメとユメの場所が入れ替わった。
「ぅお!?」
急に目の前が地面になったヒメは勢い余って顔面から突っ込み前にゴロゴロと転がる。
「おのれぇ………」
顔面土で汚れたままヒメは立ち上がりユメを見る。
ペッと口に入った砂を吐き捨てた。
「戦わないなら、美月の負けでいいのかな?」
「良いわけないでしょ? ヒビキちゃん」
「私が切り掛かったらどうするの?」
「ヒビキちゃんはそんな事しないよ」
「わっかんないよー? この世界で散々魔物を斬りつけて来たからね」
「それは本当なんだね、でも私に攻撃するのは嘘」
「うげぇ…相手の心を読む能力もあるのかよ」
「そんなの無いよ、ヒビキちゃんだからわかるの」
美月は優しい笑みを浮かべて響を見つめる。
同じ日に同じ病院で産まれて、母親同士が仲良くて一緒に遊ぶのが当たり前になってから今まで一緒だったからこそ、お互いの考えが読める。
特に美月は響の嘘が分かる。響も分かるには分かるが全てでは無い。分かるのは、喜ぶ気持ち。
「戦わないなら、違うところで他の戦いを見学しない?」
嘘では無い、が、裏があるのは何となく分かった美月だが、頷いた。
「何をちんたら戦ってんだオメーら!! いい加減、覚醒を使え! じゃなければ、アイツみたいな失敗作と同じになるぞ」
「ッ!?」
サングラスの男が叫び
愛弓たち3人の顔付きが変わった。
「…………」
「″覚醒”だって、使うの?」
莉衣奈の質問に、愛弓は目線を逸らす。
「………ご命令とあれば……」
愛弓とユメは深呼吸をすると、全身からオーラが漏れ出て来た。
「こうなった以上、生かして帰すわけには行きません! お覚悟を」
「気にしなくていいよ、私たちも出来るから」
「………それは驚きですね、能力を自分のモノにしないと出来ない荒技なのに」
「最初にお婆さんから貰ったこの剣、今ならだいぶ馴染んでるよ」
愛弓と同じく、莉衣奈の全身からオーラが現れた。
「お互い、どのくらい持つかな」
そしてヒメも″覚醒″を発動した。
「それじゃあ、始めようか。愛弓ちゃん」




