7—23 チームB+その3
「………ふぅ、明日は交代制にしようかな」
姫は自室に戻りベッドに腰を下ろした。
その時、窓が開く音がして振り返ると
「やーっと見つけた」
背中に人を乗せた大きな白鳥が入って来た。
「誰だキサマら!!」
姫はすぐに立ち上がりハンマーを構える。
人に戻った晴と汐梨は両の手の平を前に出して振りながら慌てて否定する。
「よく見てくれよヒメ! 晴だよ晴! 一緒にゲーム実況とかしただろ??」
「私ともしたよねー? ヒメちゃん」
「し、知らん! お前たちの事なんか!」
ヒメがハンマーを握る手に力を込めたその時、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
「どうしました姫様!?」
メイドの姿をした女性が血相を変えて入って来た。
晴たちを見るや目付きが鋭くなる。
「アーニー! 問題ない、下がっておれ」
そう言ったヒメの異変をアーニーは見逃さなかった。
「(汗…? いつも余裕の表情を見せて来た姫様が…? 息遣いもおかしい)」
「ヒメ! 一旦落ち着いて、話を聞いてくれ———っ!?」
晴の鼻先スレスレにナイフが通過し、窓横の壁に突き刺さった。
「………ぅっ」
「姫様!? お前らぁ……牢にぶち込んでやるからなぁッッ!」
頭を抑えてしゃがみ込んだヒメの元へ駆け寄りながらアーニーら晴たちを睨み付ける。
「これ、は……あ、れ…? わたし」
「!?」
アーニーは一瞬意識が遠のくを感じた。
最悪の事態
「姫様、失礼します」
「ぅぇっ?!」
アーニーはヒメを抱きしめ、そして、ヒメを黒いオーラが包み込んだ。
「ヒメ?!」
「ヒメちゃん!?」
ヒメはその場に倒れた。
「な、何したんだアンタ!」
「大丈夫。姫様がこの国を、この場所を、私の事を捨てない心をお持ちなら…すぐに目覚めますから」
「は…? 何を言って」
アーニーは優しくヒメを抱き抱えると恍惚とした表情で頭を撫でる。
「予想外の出来事に混乱してしまっただけですよね…? 落ち着いて、貴女の本当の気持ちを…ここに残りたいという気持ちを思い出してください」
汐梨が一歩前に出ると、晴に向かって言った。
「私が彼女を引きつけるから、ヒメちゃんを目覚めさせて」
言うと同時に汐梨は右腕を巨人化させた。
その変化にアーニーは鋭い眼光で反応する。
「その腕……もしや、巨人とは…?」
「私のことでーす」
「………そうですか、姫様ご覧ください、待ち望んでいた巨人ですよ。一緒に退治しましょう?」
ヒメは目覚めなかった。
アーニーはヒメをそっと壁際に寝かせると、ゆらりと立ち上がった。
「姫様、私…待ってますから」
姫様の寝室は広く、入口付近とベッドまでのスペースが割とあるので闘う事は可能ではあるが、武器を振り回したり、距離を取るといった方法は取りづらい。
汐梨は巨人化した右腕を振り下ろしたりして、アーニーを近付けさせないようにしている。
対するアーニーは隙を探して一気に距離を詰めるタイミングを計っていた。
晴はその間に寝ているヒメにそーっと近付き、顔を近付けた。
「汚い手で姫様に触るなァアアアァア!!」
今にも突撃しようとしたアーニーの目の前に巨大な拳が現れ壁にめり込ませた。
「行かせないわよ?」
「その指、切り落としますよ?」
晴はお構いなしに口をヒメの耳元に寄せて呟く。
「お前が姫様ね…他人と協力するよりソロプレイが好きなヒメが姫って、何の冗談かと思ったよ。一緒にゲームする時は晴の事をボコボコにする自信がある時だもんな」
晴はちょっと照れたように、頬をポリポリと掻く。それでも、眠っているヒメに向かって言葉を続ける。
「一緒に元の世界に帰ってさ、また皆んなでゲームしたりライブしたりしよーぜ! 今度は晴が勝って愉悦するんだからな」
「よく言えました」
トン、と背中を押された晴は体制を崩して
ちゅ
「嫌ァァァァアアァァァァアアァァァァアアアアァァァァアアッッ!!!」
「〜〜〜〜〜っっ」
バッと晴は起き上がり振り返ると、ニマニマしてる汐梨が居た。
「おまっ何しやがるっ?! つーかメイドは?」
「おい」
「ゆ る さ ん !!」
「まだまだ元気じゃん!!?」
「聴こえているのか」
「は?」
「乙女の唇を奪っておきながら何無視してんじゃあああああああああああぁぁぁああい!!!」
ゴツン
「痛ッッ」
ヒメは勢いよく晴に頭突きを喰らわせた。
「姫様!?」
アーニーの動きが止まった。
「……これはどういう……いや、思い出した」
「何をでございますか…?」
アーニーは震える声でヒメの解答を待つ。
「ここに来るまでの全部」
「———ッ!? ………そう、でございます、か」
「ヒメ、話を聞いてくれないか? 急ぎの用事なんだ」
晴は端的に事情を説明した。
「救助が必要か」
ヒメは指輪に触れながらアーニーに向かって言った。
「アーニー! 最後の命令じゃ! 救助に向かう兵を集めて向かってくれ!」
その言葉にアーニーは両手で顔を覆いながら崩れ落ちた。
「さい、ごッッ」
「聞いているのか? 急ぎだぞっ」
「———…………………っ……はぃ」
「あと、これもだな」
ヒメは指輪を外すとアーニーに放り投げて渡した。
「私は先行するから、必ず来るんだぞ!」
窓際に立つと晴は白鳥に変身し、汐梨とヒメは背中に乗り込んだ。
「………姫、様……」
「もう姫では無い。……アーニーとは、親友だ!」
「!?」
2人を乗せた白鳥は、夕日に向かって飛び立った。




