平和です 15
長いこと放置してすみませんでした…
魔王城に来てからシーナと呼ばれてますが、正しくは椎奈です。
栗毛に同色の目の、父親似の狸顔の純日本人です。
なのでですね。
「姉ちゃん!」
栗色ヘアーで碧眼の小学生くらいの美少年な弟を持った覚えはありません。
いや、アー君は別ですよ?
アー君は超可愛い弟です。
熊さんの呪いが解けたよ、とレフさんに教えて貰って。
食堂の方に連れてこられたのは短い栗色の髪に、くりくりした碧眼の美少年でした。面影が髪の毛の色しかないね!?
背は私の胸辺り。
うん、昔のアー君とは違う可愛さを持った美少年だわ。
なんて思ってたら突然美少年に抱きつかれまして。
「姉ちゃん!」
弟が爆誕した。
餌付け?餌付けのせいなの?
「待て待て待て!シーナ嬢に抱きつくな!」
レフさんが少年を引き剥がそうとするけどもギューっとしがみついて離れな……
「痛い痛い‼︎内臓が!出る!!」
ちょっと少年腕力ありすぎでは!?
え?これ普通なの?もしかして熊さんの面影って腕力にも出るの⁇
意識遠のきかけたんだけど。
「姉ちゃんだよな⁉︎ことむら しいな!」
「うん?確かに琴村 椎奈だけど」
熊さんにフルネーム名乗ったっけ?
「オレ、せいや!弟のことむら せいや!」
「…………………は?」
ことむら せいや。
せいや?
琴村 聖也?
「聖也は黒髪黒い目の、ゲームし過ぎで近眼で目つき悪い眼鏡っ子でしたけど?」
胃袋ブラックホールかよってくらい大食らいのくせしてヒョロい、見た目はもやしっ子。
見た目に反して運動もそつなくこなす、そこそこ頭がいい、要領が良くてクッソ生意気な弟。
わたしの二つ年下だったから、十歳にもなってなさそうなこの子が弟のはずはない。
そもそも、わたしがここに来て二百年経ってるからなぁ……
「生まれ変わったんだよ‼︎」
なるほど?
異世界転移の次は異世界転生ですか。
テンプレ乙。
じゃなくて‼︎
「本当に、聖也?」
「疑うなら田舎のじいちゃん家の歴代ペットを言うぞ⁉︎ボス猫のタロー、軍鶏のジロー、ハスキー混じりの雑種犬のサブロー、猪のシロー、亀のゴロー!」
「待って!猪のシローと亀のゴローって何⁉︎なんか知らないのが増えてる!」
「気づいたらサブローがウリ坊を育ててたらしいよ……亀のゴローはばあちゃんが道端で拾って来た」
あ、これ本当に聖也だわ。
田舎の祖父ちゃんと祖母ちゃんの破天荒なとこ熟知してらっしゃる。
見た目は凛々しいハスキー犬サブローは心優しい女の子だったので、迷子かなんかのウリ坊を見捨てられなくて拾っちゃったのかな。
亀は……道に落ちてたら車に轢かれないように拾っちゃうよね。あの祖母ちゃんだもん。
「っていうか転生って聖也は死んだわけ?」
「多分50代くらいまで生きたよ。社畜で過労でフラフラしてたとこまでしか記憶にないからそこで死んだんじゃね?」
「年金貰えるくらいまでは生きようよ……」
「今世は長生きしたい所存です」
「ちょっと待った!」
神妙な顔して頷く聖也に、ポカンとしていたレフさんから待ったがかかりました。
「え?シーナ嬢の弟?本当に!?」
「みたいですね。まあ、生まれ変わっちゃってるらしいので似たところゼロですが。あ、髪色は今回ちょっと似たみたいですね〜」
あっちにいた頃の聖也は真っ黒ツヤッツヤの髪だった。今は栗色の熊さんカラーの髪なので私の栗毛とそっくりだ。
「生まれ、変わり?」
きょとんとしているレフさん。
輪廻転生って仏教の教えだったっけ。
魔族は死んだら父神様の庭に還るのだから生まれ変わるなんて考えはないのかも。
私も死後は可愛いアー君のためにこちらの神様のお世話になる予定だし。
「てか、姉ちゃんはなんでここに居んの?誘拐された?」
「それがさ、学校の階段がツルッツルで滑って転んだら何故か森の中に居てね……グーマに襲われそうなところをガンツさんに保護されて、魔王様の城で働いてるの」
「魔王の、城……?」
今度は聖也がきょとんとした表情になった。
そうだよね。魔王城とか異世界感あるよね。
めっちゃわかる。
「ここ、魔王城……?」
「そうだよ」
「魔王に無理矢理働かされてるとか……?」
「違うよ。下っ端料理番として魔王城に置いてもらってるの。魔王様めちゃくちゃ優しい上司だよ!会ったことないけど」
「会ったことないんかい!」
ナイスツッコミ。
さすが我が弟である。
話が長くなるのでひとまず椅子に座って、お茶を飲みつつこれまでの出来事をかいつまんで話した。
レフさんも一緒に説明してくれたのは良いんだけど、私がゴブリン以下の最弱生物だとか、うっかり勇者に殺されかけたとか、そういう暴露やめてもらっていいですかね⁉︎
お姉ちゃんとしての威厳が‼︎皆無になっちゃったじゃん‼︎(元からないとか言ったやつ誰だ)