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【感謝!8万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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052 「価値」の中身

かなり長めの文量になってしまいました。


 茸を焼き、結界石を置いて一夜を過ごし、天幕を出てから片づけました。

 今日もイザヤ様は朝から訓練をしているようです。

 わたしが起きたことに気がついたイザヤ様は、ふわりとした笑顔を見せてくださいます。

 においを確認しているのでしょうか。左右の腕を鼻に近づけ、感覚を失っていることを思い出したようにハッとなってからこちらへ来ました。

 風下へ回るような位置に立ちます。


「おはよう、エミリア」

「おはようございます、イザヤ様」

「今日は魔の森まで行けると良いね」

「そうですね。誰でも行ける危険があるのなら、なるべくその危険を排除しておきたいです」

「それとさ、せっかく木がたくさんある森にいるからさ、テンの<スキル>を試してみようよ」

「そうですね」


 イザヤ様が用意してくださった茸の残りを食べる分だけ火にかけ、干し肉も準備してくださいました。

 食べ終えてから、昨日テイムしたばかりのテンとペルが前後どちらに入ったのかをまず確認します。

 まず、前側を触りました。

 ポンっと出たサルペンテのどちらかは、わたしの体を軸に足下まで行きます。そしてわたしの顔を見上げています。


「あなたはテンでしょうか」

<我がテンである>


 なんと、一度目で力をお借りしたい子が出てきました。これも高い幸運値のおかげでしょうか。

 サルペンテは、何というか忠義を尽くしてくれそうな話し方のようです。声は、サタルパ達よりも少しだけ高いぐらいでしょうか。


「テン。<宝検知>をお願いします」

<承った>


 テンは体を左右に動かしながら地面を進んでいきます。

 テンの<宝検知>の対象は木の上。どこの木に行くのでしょうか。


「テン。もし何もなければ、教えてくださいね」

<承った。主にとって、価値とは何か>

「んー……そうですね……」


 以前ルパの<宝検知>を試したときもそうでした。具体的に示した方が、より捜しやすいということなのでしょう。

 わたしにとって価値のあるもの。それは、どういうものでしょうか。


<主。主のにおい見つけた>

「わたしの?」


 テンは報告するや否や、進む速度を上げて目的の木へ向かっていきます。

 テンが、一つの木の幹の周囲を回って該当する木だと教えてくれました。

 見上げると、枝に引っかかっていたのは。


「ヨークボ様!?」


 もしかしたら死んでしまっているかもしれないと思えるほど生気を感じられないヨークボ様が、いました。


「……やっぱり、具体的に示した方が良いみたいだね。あの人に価値があるとは思えない」

「ひ、ひとまずヨークボ様を下ろしましょう」

「ああ、待って。エミリアは危ないから、おれが回収するよ」


 木を上ろうとしたわたしを止め、イザヤ様がさっと登ってヨークボ様を抱えて着地しました。

 仰向けにしてもらいます。

 あれだけ生気にあふれていたヨークボ様は、頬がこけ、右腕だけパンパンに腫れ上がっていました。

 口元に耳を寄せると、僅かですが呼吸をしていると確認できます。

 すぐに<治癒>をしようとすると、イザヤ様に止められました。


「エミリア、本気? こいつに散々嫌な気持ちにさせられたじゃん」

「そうは言っても、目の前に助けられるかもしれない命があるなら、それを放棄するわけにはいかないと思うのです」

「エミリアはお人よしだね」

「そうでしょうか。わたしはそこまで善人ではないと思います。自分に力があって、それをしなかったから誰かが不幸になる。それを知ってしまったとき、後悔するのは嫌なのです」

「そっか。やっぱりお人よしだよ、エミリアは」


 以前のヨークボ様のことを思い出し、回復してから何か仕掛けてこないようにということで、イザヤ様から提案がありました。

 まだ出したままだったテンと新たにペルを出し、二体でヨークボ様の足を縛ってみたらどうかと。

 これはサルペンテが、対象に巻きついて締め上げるという戦い方をするため、それを応用できないかということでした。


「テン、ペル。倒れている方の足を拘束できますか」

<承った>

<承知>


 テンとペルはするするとヨークボ様の足に巻きつき、膝の部分で互いの尻尾を(くわ)えるような状態になりました。

 少し緩いようにも思いますが、ヨークボ様が動こうとしたらきつくするのでしょう。

 わたしはヨークボ様の右側に行きまして、首に青の指輪を当てながら<治癒>をかけます。


「ねえ、エミリア。この人、大丈夫かな」

「大丈夫とは?」


 イザヤ様と話していると、ヨークボ様がカッと勢い良く目を開けます。その様子に驚いていると、ヨークボ様が立ち上がってわたしの手を掴もうとしました。


「これっ、ぐふっ」


 テンとペルが急激に締め上げるよりも早く、イザヤ様がヨークボ様の頭を地面へ叩きつけました。それはもう、もの凄い勢いで。

 イザヤ様は<攻撃力>がほぼ四桁だと自覚されているはずなのに、躊躇いもなく。

 ヨークボ様の頭は、地面にめりこんでしまっています。


「イザヤ様。それでは<治癒>をかけた意味がありません。ヨークボ様を殺さないであげてください」

「わかった。でも何をするかわからないから、腕も拘束する」


 イザヤ様がヨークボ様の両腕を後ろで拘束し、テンとペルが足を拘束している状態です。これならば、ヨークボ様も自由には動けないでしょう。


「ヨークボ様。大丈夫でしょうか。まだ、生きておられますか」

「もちろん! 俺の女神を前に死ねるはずがない!!」

「……えぇと」


 鼻血を出しながら興奮気味に答えるこの方は、本当にヨークボ様でしょうか。

 記憶の中のヨークボ様と、目の前のヨークボ様はかなり差違があると思います。

 この方はヨークボ様に似た別の誰かなのかと思い、イザヤ様に助言を求めます。


「同一人物だと思うけど、たぶん性格は全く違うと思う」

「え……なぜでしょう?」

「おれの予想だけ」

「女神、っぶ」


 イザヤ様が話そうとしていたときに被せるように話してきたヨークボ様と思われる方を、イザヤ様が殴って気絶させました。

 呼吸を確認できているので、死んではおりません。

 そのままテンとペルに拘束してもらい、イザヤ様のお話を聞きます。


「ほら、ミッチーさんに<治癒>したときにさ、一回しかしていないのに冒険者として活動していた全盛期ぐらいまで健康になったって言ってたでしょ」

「そうですね」

「あのときよりもエミリアの<攻撃力>はめちゃくちゃ上がってる。で、おれの予想」


 桁違いの<攻撃力>からの<治癒>は、人格すら変えて回復させてしまうのではないかと。


「それなら! 今のわたしなら、イザヤ様の感覚を取り戻せるでしょうか!」

「どうだろう。やってみてもらえるかな」

「かしこまりました!」


 わたしは立ち上がり、イザヤ様の鼻に青い指輪を当て<治癒>をかけます。


「どう、でしょうか……」

「んー……どうかな。エミリアは今、何かにおいがわかる?」

「そうですね……土のにおいでしょうか。お花があれば良いのですが、この辺りにはないようです」


 体をかがめて土のことを報告すると、イザヤ様もお顔を地面に近づけました。


「駄目だ。全くわからない」

「そうですか……一千越えの<攻撃力>でもダメならば、一万を越えたらできるでしょうか」


 イザヤ様の嗅覚を奪ったのは魔獣の断末魔ですが、わたしが奪ってしまったようなものです。イザヤ様がわたしの耳を塞いでくれたから、わたしは五感を失っていません。


 まだ力不足かと落ちこんでいると、イザヤ様がヨークボ様の右腕を指差しました。


「ねえ、エミリア。この人の右腕も治ってないよ」

「あ、本当ですね。ということは、この腫れと五感を失う原因が同じということでしょうか」

「どうだろう。厳密に言えば違うかもしれない。でも、調べてみる価値はある」


 イザヤ様と相談していると、ヨークボ様が意識を取り戻す気配がしました。


「んん……?」

「ヨークボ様。大丈夫でしょうか」

「こっ」


 二度目の鉄拳です。イザヤ様の攻撃からすぐ体を起こしたヨークボ様に、言います。


「ヨークボ様。よく聞いてください。わたしに触れないでください。命が惜しければ」

「了解した! それで女神の傍にいられるのであれば!!」

「それは無理ですね。ヨークボ様は右腕以外は健康なお身体です。ご自分の実家がある街まで戻られてはどうでしょうか」

「それはできない! 縁を切られている!」

「あー……」


 テンの<宝検知>をして、ヨークボ様を発見しました。<宝検知>は価値あるものを捜すスキルです。

 わたしのにおいがするということでしたが、それはわたしにとって価値があるからテンが反応したと思います。


 価値。わたしにとって価値とは。

 わたしは、ヨークボ様に何を求めるのか。


「ヨークボ様は、何ができますか」

「何も! 俺よりも貴族らしい貴族はいないと思う!」

「んー……では、わたしがあなたに『価値』を付与します。わたしは見た目でも楽しめる料理が知りたいです。なのでヨークボ様は、見た目も楽しめて美味しい料理を捜してください」

「了解した! それが女神のためになるならば!!」

「……テン、ペル。ヨークボ様の拘束を解いてください」


 返事をするなり駆けて行こうとしたヨークボ様が、顔から転倒しました。

 足の拘束も解かれたヨークボ様は、わたしに深く頭を下げるとこの場から離れていきます。


「エミリア、料理に興味があるんだね」

「見た目も楽しめるものならば、イザヤ様も楽しめるかと思いまして」

「……おれのために? ありがとう、エミリア」

「い、いいえっ。師匠に救われた弟子としてはまだまだ足りないくらいです!」


 ふにゃっとしたようなお顔をされたイザヤ様は、わたしの返答で悲しげな表情になってしまいました。

 わたしは、何か間違えてしまったようです。



 今回の技能牧場の結果。

 昨夜と朝、ファラの<付与>を使いました。ファラの希望の場所を開拓。<幸運Ⅰ>の右から四番目と六番目ですね。

 <+9>と<+7>なので<幸運354>となりました。


 続いて、<治癒>を行いましたので、ステータスの中では低めの、<幸運Ⅱ>の右から三番目を開拓。

<+512%>なので、<幸運2166>となりました。


 さらに、テンのスキルを使っています。テンの技能牧場は下から埋めていきましょう。

〈+11〉しまして、〈スキルⅠ、151〉となったようです。




今後の流れを考えていて、話のストック数が寂しくなりました。

6月は2日に1本、時間は今までと同じタイミングで投稿します。

7月からはまた1日1本投稿できるように頑張ります。

お待ちいただける方は、ブックマーク登録をしていただけると幸いです。


現在のステータス

<攻撃力、1842>

<防御力、205,219>

<敏捷性、27,234>

<幸運、2166>

<技能、25,340>

<器用、718>

<体力、51>

<スキルⅠ、151>

<スキルⅡ、78>

<スキルⅢ、78>


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