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【感謝!10万pv!】双子の出涸らしの方と言われたわたしが、技能牧場(スキルファーム)を使って最強のテイマーになるまで。  作者: いとう縁凛


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053 魔の森の屋敷


 文字通り人が変わってしまったヨークボ様と別れたわたし達は、魔の森捜しを再開します。

 どんなところなのかと思っていたら、それほど時間をかけずに到着しました。


「ここが、魔の森……」

「エミリア! 左からサフンギが来るよ!」


 イザヤ様のお声により反応できたわたしは、突撃してきたサフンギを素手で討伐しました。

 やはり、素手でも戦える攻撃力になっているようです。


「エミリア! 奧に建物が見える! あそこへ行って、サフンギの襲撃方向を狭めよう!」

「かしこまりました!」


 魔の森の中はまだ昼間にも関わらず、全体的にどんよりと暗い場所になっています。

 上空を確認してみても、指標にしようとしていた太陽は木の葉に隠されてしまっていました。


 イザヤ様が右側を、わたしが左側を担当し、森の中にある建物を目指しながらサフンギを討伐していきます。

 道中、茸が大量に落ちていますがそれを回収している余裕はありません。

 深い森の中、四方八方から来るサフンギを討伐することで精一杯です。


 イザヤ様と駆け、建物へ向かいます。

 開けられていた玄関へ突入し、扉を閉めました。

 大量のサフンギによって扉を破られるかと思いましたが、サフンギ達は扉に体当たりもしません。まるで、何かの結界があるようです。


「ふう。これで一息つけるかな」

「そうですね」


 魔の森の調査をしようと思っていましたが、外の様子からするに人手が足りません。複数のパーティーで分担した方が良いかもしれないです。

 これもラゴサへ戻ったときに報告しましょう。

 そう考えていると、ウォルフォード領内では定番となっている、正午を告げる鐘が鳴りました。


「お昼ですね」

「あ、そうなんだ?」

「ウォルフォード領内では、教会に設置されている鐘が正午を告げるのです」

「へえ、それは便利だね。時間がわかる」

「そういえば、ルコでは鐘が警鐘として使われていましたね。ウォルフォード領は冒険者を認めていませんから、その役割もないのだと思います」


 鐘が鳴ったということは、わたし達以外に誰かがいらっしゃるのでしょう。その方にお話を伺いたいところです。


「遠目から見たときに、この建物に鐘がついているみたいだった。元々教会なのかな?」

「どうでしょう。住居として使えるように増築したのでしょうか」


 それにしても、この家にいらっしゃる方はどのようなお方なのでしょうか。

 サフンギが大量に発生し、なぜか侵入はされないものの、外へ出ることもままならないと思います。

 魔法を使って、移動しているのでしょうか。


「ひとまず、ここにいらっしゃる方にお話を聞いてみましょう」

「そうだね」


 大量のサフンギから逃れ、飛びこんだのは住居部分と思われる玄関。広い空間になっているこの場所は、二階まで吹き抜けになっているようです。

 大きなシャンデリアがあり、貴族の屋敷と言っても過言ではないでしょう。そのシャンデリアまで掃除の手が届いていないのは、天井が高すぎるせいでしょうか。


 玄関の正面に階段があり、それが二階の左右へ伸びています。

 その一階にも、部屋がいくつかあるようですね。


「鐘があるのは、元教会だった部分でしょうか」

「……そうだね」

「イザヤ様? いかがされましたか」

「……なんか、右腕が痛いような気がして。いや、気のせいだと思う。おれの事よりも、鐘を鳴らした人を捜そう」


 イザヤ様がまるで目の前の状態を確かめるように手を伸ばしながらゆっくりと進みます。しかし、何かに阻まれるように弾かれてしまいました。


「イザヤ様?」

「ごめん……何か、ここにある?」


 イザヤ様は正面を確かめるように、何もない空間を叩きました。

 そしてそこに透明な壁があるかのように、手の平を密着させるようにしています。力を込めて押しているようですが、目の前には何もありません。

 わたしも確かめてみようと、手を伸ばしました。しかし、何もありません。

 イザヤ様が格闘している、透明な壁のような感触もありませんでした。


 不思議に思いつつ、イザヤ様のすぐ横を通り前に出ます。えぇ、わたしは前に行けたのです。


「エミリア!? 進めたんだ?」

「はい。わたしが通った辺りであれば前に行けるようですよ」


 わたしがこの辺りです、と示します。

 イザヤ様は暗がりの中で模索するように手を動かしそこから通ろうとしますが、また何かに阻まれて進めないようです。


「エミリア、ごめん。こっちに戻ってこられる?」

「かしこまりました」


 イザヤ様に呼ばれ、わたしは何の苦労もなく隣へ行きます。

 イザヤ様は不思議がっているようで、腕を組んで首を傾げました。

 それから、イザヤ様のご指示の元、わたしは玄関から先へ進める場所を捜します。

 結果、玄関に敷かれていた絨毯が境目となっていることしかわかりませんでした。

 シャンデリアの掃除までは手が行き届かないとしても、玄関の絨毯はどうにかならないものでしょうか。ボロボロで、土汚れが酷いです。


「……不思議だ。まるで何かの結界が張られているみたいだ」

「結界……そういえばサフンギ達も中に入っては来ませんでしたね」

「ここは、何かあるのかもしれない。建物の中も暗くてよく見えないし……」

「え?」

「どうしたのエミリア」

「あの、この場所は暗いのでしょうか」

「え?」


 わたしがした質問に、イザヤ様は首を傾げます。


「……えぇと、確認しましょう。イザヤ様は現在、どのように見えていますか」

「ほとんど見えないね。エミリアが立っているのはわかるけど、顔までは見えない」

「絨毯が土で汚れているのは? 上に、シャンデリアがあるのは? どちらもわからないでしょうか」

「そうだね……全然わからないや」


 わたしの質問に応じるように、イザヤ様が天井や床を見ました。

 イザヤ様が、右腕を擦っています。


「イザヤ様? 右腕がどうかされましたか」

「あ、エミリアは見えるんだね。ごめん、気のせいだと思ったんだけど、やっぱり右腕が痛くて」

「! イザヤ様、失礼します!! 駆けますので、気をつけてください!」


 わたしはイザヤ様の左手を掴み、宣言するや否や駆け出します。

 玄関扉の前で待っていたサフンギ達が追いつけないような速度で森を駆け、魔の森と呼ばれる空間から脱しました。

 駆け抜けたため、イザヤ様のローブがめくれ、両腕が見える状態になっています。


「イザヤ様、右腕が……」


 ヨークボ様の状態を思い出し魔の森を駆け抜けましたが、遅かったようです。

 イザヤ様の右の二の腕が、腫れているように見えます。


「あいつも右腕が腫れていたよね。それなら……って、エミリアは!? エミリアは右腕、無事!?」

「はい。わたしは何も問題がありません」

「あの建物に同じ時間滞在したのに、どうしておれだけ症状が出ているんだろう?」

「そうですね。あの屋敷の中も、わたしは明るく見えましたし」


 ヨークボ様とイザヤ様に症状が現れ、わたしには現れない理由。

 それを解明できると、イザヤ様の感覚を取り戻すこともできるかもしれません。


「どうしましょう。イザヤ様の右腕、わたしの<治癒>でも治せないのですが……」

「んー……まあ、これぐらいなら大丈夫かな。あいつぐらい腫れ上がっちゃうと、剣を握れなかったかもしれないけど」


 言いながら、イザヤ様は右腕を振ってみせます。一瞬、眉が寄ったのを見逃しません。


「イザヤ様、無理して動かさないでください。悪化してしまう可能性があります」

「かっこつけてみたけど、エミリアにはお見通しか」

「痛みは、どれくらいありますか」

「それほど強くあるわけじゃないんだ。動かすと、ちょっと違和感があるぐらいで」


 イザヤ様の利き腕は右です。それなのに動かすと違和感があるというのは、イザヤ様の戦いに支障が出るということ。

 もしかしたら、日常生活でも不便を感じてしまうかもしれません。


「……今後のことも含めて、早くギルド長様の所へ行きましょう」

「そうだね。チェリニさんに相談してみよう」


 イザヤ様は明るく努めます。しかし利き腕が使いづらくなってしまったのです。その内情は計り知れません。

 ここが恩を返すときだと、わたしはイザヤ様の補助をすると誓いました。






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