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社交界の毒婦とよばれる私~素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます~【書籍化&コミカライズ】  作者: 来須みかん
【第三部】

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18 闇オークション

 闇オークション会場の入り口は、休憩室がある階の奥だった。美しいカーテンをめくると真っ黒な扉があり、扉の先には地下に降りる階段が続いている。


 階段を降りた先は、パーティー会場に続いている。どこか怪しい空気が漂っているように感じるのは、薄暗い照明や悪趣味な調度品のせいかもしれない。


 係の者は「新たなオークション開始まで、こちらのパーティー会場でお楽しみください」と言い残して去っていく。


 リオ様が「表のオークションが終わるまで、ここで適当に時間を潰しておけということだろうな」とため息をついた。


「あまりいい雰囲気ではありませんね」

「そうだな」


 リオ様や私が引き続き仮面をつけているように、この会場にいる人々も、みんな仮面で顔を隠している。


 今日の私は、わざと毒婦のような格好をしているのに、この会場では浮いていない。むしろ、しっくりきてしまうくらいには、客層がよくないように見える。

 リオ様が私の肩に優しく手を置き、そばに引き寄せた。


「参加者が多いな。オークションの高額落札者以外も、この場に招かれているようだ。セレナ、俺のそばに」

「はい」


 私はリオ様の腕に自分の腕をからませて、ピッタリとくっついた。


「わっ! セ、セレナ!? そこまでくっつかなくても大丈夫だから!」


 戸惑う声が聞こえたけど、離れる気はない。私は、周囲を警戒しながらリオ様に囁きかけた。


「今は仮面のせいで顔が見えないから、少し離れたとたんにお互いを見失ってしまうかもしれません」


 私がそう伝えるとリオ様は、「俺は、セレナの顔が見えなくても、すぐに分かるけどなぁ」と真っ赤な頬を指でかいている。


 まさか……でも、リオ様なら本当にできてしまうかも?

 そういえば、ついさっきオークションで競った相手が、カルロス様だと見抜いていた。


「先ほども聞きましたが、どうして分かるんですか?」


 リオ様は、不思議そうな顔をしている。


「その人物特有の動きとか姿勢の癖とかかな? あと、近くにいる場合は香りでも分かる」

「す、すごいですね」

「セレナは、とてもいい香りがするから絶対に見失わない。だから安心してほしい」

「そういうものなのですね」


 緊張がほぐれた私は、のどを潤すためにテーブルに並べられていたグラスに手を伸ばした。すると、近くにいた給仕が「どうぞ、美しい方」と言いながら別のグラスを差し出す。


 グラスの中では、青い液体がゆらめいている。お酒かしら?


 私の代わりにそのグラスを受け取ったリオ様は、香りを嗅いだ後、するどく給仕を睨みつけた。


「どういうつもりだ?」


「ひっ」と悲鳴を上げた給仕は、逃げるようにその場から立ち去る。その際に、運んでいたグラスの中身を全部こぼしてしまい慌てている。

 リオ様は、すぐに別のグラスを手に取り、私に渡してくれた。


「これは大丈夫」


 ということは、先ほどの飲み物には、何か怪しいものが入れられていたのね。


「ありがとうございます」


 仮面越しに視線が合い、なぜかリオ様がしょんぼりしていることが分かった。


「セレナを危険な目に遭わせたくないのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう?」


 狼の仮面をつけているせいか、ないはずの尻尾が垂れているような気がして、私は苦笑してしまう。


「他に方法がなかったですし、私が望んだことでもありますから」


 銀食器に反応しない毒をこのまま放置するわけにはいかない。これ以上、私は非道な毒で大切な人を失いたくなかった。


「サンドラ夫人を捜しましょう」

「そうだな。さっさと終わらせよう」


 くるりと会場を見まわしたリオ様は、「あそこだけ警備が厳重だな」と指をさす。見ると、数人の護衛騎士の姿が見えた。騎士たちは、腰に剣を帯びている。


「サンドラ夫人は、ヘイン公爵から複数の護衛をつけられているらしい」

「では、あそこにサンドラ夫人が?」

「行ってみよう」


 近づいていくと、護衛騎士の中心には華やかな仮面をつけた金髪の男性が一人で佇んでいた。リオ様から「あいつ!」と小声が聞こえてきたので、男性がカルロス様なのだと気がつく。


「おまえなぁ!」と怒るリオ様は、護衛騎士に止められた。

 カルロス様が「その無礼な言動に、でかい図体。リオか?」と尋ねたので、リオ様が「ああ、そうだ」と不機嫌そうに返した。


 だいぶ失礼な会話に聞こえるけど、幼馴染の二人はまったく気にしていない。

 カルロス様が「その者たちは問題ない」と片手を上げると、護衛騎士たちは数歩下がった。


「リオは、何を怒っているんだ?」

「さっきのオークション!」

「あれは、ここにおまえが来られるように手伝ってやっただけだろう? わざわざ事前にバルゴア辺境伯令息の番号札を調べさせたんだ。感謝してほしいくらいだ」


 なるほど、六十五番の札を持っているのがリオ様だと知っていて、協力するために値段を吊り上げていたのね。


 カルロス様の気持ちを知ったリオ様は、「そういうことなら」と怒りを収めようとしたけど、カルロス様はニヤリと笑う。


「まぁ、途中からリオがどこまで値段を上げるのか気になって、面白がりながらやっていたが」

「やっぱりか、許さん!」


 リオ様の予想通り、嫌がらせも含まれていたのね……。

 私が一人で納得していると、カルロス様と目が合った。その視線は、すぐにリオ様に戻る。


「てっきりセレナ嬢と来ると思ったが、隅に置けないな」

「なんの話だ?」


 そう言いながら、リオ様は私を守るように背後に隠した。

 その様子を見たカルロス様は楽しそうだ。


「セレナ嬢に、リオが謎の美女とイチャついていたと告げ口してやろう」

【宣伝】

以下の作品のコミカライズが、9/4(金)に新連載スタートとなります。


白良木羅々先生によるコミカライズ

『地味令嬢が氷の騎士様に溺愛される方法 〜私の推しはあなたの妹です〜』

※9/4に【コミックシーモア】様にて先行配信です。


この作品はこれだけでも楽しめるのですが、以下の作品を読んでいたら、もっと楽しめるかもしれません。


『やり直し転生令嬢はざまぁしたいのに溺愛される』

↑これに出てくるシスコン兄が、『地味令嬢が氷の騎士様に~』のヒーロー役になっております。

どちらも明るく、笑いながら読めるマンガです♪


どうぞよろしくお願いいたします。

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