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社交界の毒婦とよばれる私~素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます~【書籍化&コミカライズ】  作者: 来須みかん
【第三部】

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15 仮面を選びましょう

 私は感心しながら室内を見回していた。


「豪華なお部屋ね」


 天井にはシャンデリアが煌めき、カーテンやソファーは重厚感のある赤色で統一されている。床一面にひかれている絨毯も華やかだった。


 私のそばにいたアレッタも「まるで王宮みたいですね」と驚いている。

 一足さきに室内を確認していたコニーが戻ってきた。


「セレナお嬢様。おかしなところはありませんでした。どうぞおくつろぎください」

「ありがとう、コニー」


 どんどん護衛騎士らしくなっていくコニーの成長がまぶしいわ。


 窓を開けるとバルコニーへと続いていた。そこから見えた寝室には、豪華な天蓋付きベッドが置かれている。しかも、コニーが言うには、メイドや護衛用の部屋まで複数あるらしい。


「さすが高級宿というだけあるわね」


 感心していると、アレッタがお茶を淹れてくれた。私たちが、お茶をいただきながらホッと一息ついたころ、部屋の扉が叩かれた。


 対応したアレッタが、困った表情で戻ってくる。


「お嬢様。招待状をお持ちのお客様は、宿からのご好意で仮面をいただけるそうですよ。どうなさいますか?」

「仮面? 仮面って、あの仮面舞踏会とかでつけるやつよね?」

「はい、そうです。オークションに参加する際につけるそうです。どうぞ、こちらへ」


 部屋から出ると、宿の使用人がワゴンを引いていた。ワゴンの上には、様々な種類の仮面が並んでいる。


 雰囲気的に右側は男性用で、左側が女性用ね。

 女性用のものは、花や刺繍で飾られていて、とても華やかだ。


 私は自分の左手の薬指を見た。そこには、リオ様から初めていただいた銀色の指輪が輝いている。その指輪と、同じような雰囲気の銀色の仮面を手に取った。紫色で描かれた模様が美しい。


「私は、これにしようかしら?」


 アレッタが「すごくいいと思います。銀色のアクセサリーと合わせるとよさそうですね」と微笑んでくれた。


 宿の使用人は「お連れ様の分は、どうされますか?」と私に尋ねる。

 リオ様の仮面を私が勝手に選んでしまうのは、さすがに抵抗があった。

 悩む私に、宿の使用人は「気が変わりましたら、いつでも交換させていただきますよ」と言ってくれたので、とりあえず選んでみることにする。


 シンプルなものか、凝った作りのものがいいのか……。リオ様は、装飾品にこだわりがないようだから、こういうときに困るわね。


 そんな中、クマを模した仮面を見つけた。


「そういえば……」


 私はリオ様の妹であるシンシア様が、「あのクマみたいなお兄様が!?」とよく言っていたことを思い出した。


 でも、私はクマというより、どちらかというとリオ様は大きな狼のような気がしている。それは、バルゴアの騎士を率いている姿が、狼の群れと重なるからかもしれない。


 そんなことを考えながら銀色の狼の仮面を見つめていると、宿の使用人は「そちらですね。どうぞ」と私に仮面を手渡した。


 コニーが瞳を輝かせながら、「カッコイイです!」と言ってくれたので、とりあえず仮でこれにしておきましょう。


 しばらくして、部屋に戻ってきたリオ様に、狼の仮面を見せるとコニーと同じように瞳を輝かせた。


「セレナが、俺のために選んでくれた仮面!」

「もしお気に召さなければ、別のものに変えられますよ」

「いいや、これがいい!」

「でも、他にもたくさん種類がありましたよ?」


 戸惑う私にエディ様が「リオは、セレナ様が選んでくださったものなら、なんでも嬉しいんですよ」と教えてくれる。


「リオ様がそれでいいなら……」


 上機嫌のリオ様は、私に紙束を渡した。


「これは?」

「オークションに出品される商品のリストなんだが、この中から高額なものを落札しないといけないんだ。セレナは、どれがいい?」

「どうせ落札しないといけないのなら、使えるもののほうがいいですね」


 芸術品のよさを知るためには、深い知識が必要なので素人には判断が難しい。

 リストをパラパラとめくっていると、分厚い本の絵を見つけた。横からのぞき込んだリオ様が、「古い歴史書のようだな」と呟く。


 これがアイリーン様の探しているタゼア家の禁書ではないだろうけど、失われた別の書物の可能性はあるわよね?


「リオ様。アイリーン様へのお土産がてら、本を中心に落札するのはどうでしょうか?」

「それはかまわないが、ほら、この指輪なんてセレナに似合いそうだが?」


 リオ様が指さした絵は、大きな宝石がついた見るからに豪華な指輪だった。


「指輪はいりませんよ」

「どうしてっ!?」


 あせるリオ様に、私は自分の薬指に輝く宝物を見せてあげる。


「愛する人からいただいた大切な指輪が、もうここにありますから」

「愛する人……」


 真っ赤な顔のリオ様に、私は微笑みかけるのだった。

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