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社交界の毒婦とよばれる私~素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます~【書籍化&コミカライズ】  作者: 来須みかん
【第三部】

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06 大切な人の笑顔を守るためなら【リオ視点】

【リオ視点】


 クスクスと笑っているセレナが可愛い。

 こんなに愛らしい人と子どものころに出会ってしまっていたら、大変だっただろうなぁと思う。


「前もこういう話をしたが、俺が子どものころセレナに出会っていたら、緊張して絶対にまともに話せなかった自信がある」


 エディが「なるほど。それでセレナ様はリオに嫌われていると勘違いして、仲良くなることなく、別の男に嫁いでいくのか」なんていうから俺は思わず叫んでしまった。


「わぁあ!? そんな話の本、妹が読んでた! 男が後悔するころには、もう遅いってやつ!」


 最近、王都で流行しているらしいが、なんて恐ろしい設定なんだ。

 俺たちの会話を聞いていたセレナが、小首をかしげている。


「私もシンシア様にお借りしてその本を読ませていただきましたが、リオ様は大丈夫だと思いますよ」

「どうして?」

「だって、リオ様の態度は、とてもわかりやすいですから」

「そ、そうかな?」


 涙目になっている俺に、セレナは優しく微笑みかけてくれる。


「本に出てくる男性は、婚約者を睨みつけたり、時には暴言を吐いたりしていました。リオ様、そんなことできますか?」

「できない。絶対にできない!」


 断言できる。

 エディも、うんうんと頷いている。


「そういえば、子どものころのリオって、思ったことをすぐに口に出していたな。ということは、セレナ様を見たとたんに、無意識に『可愛い』とか『結婚したい』とか口走っていたかもな」

「それはそれで、どうなんだ。俺……」


 つい頭を抱えてしまったが、付き合いが長いだけあってエディは俺のことがよくわかっている。


 俺の考え方や行動の癖を理解していることは、護衛をするにあたって有利に働く。だから我が家では、早い段階で専属の護衛騎士を決める。


 もうそろそろセレナにも、専属の護衛騎士をつけたいと思っていた。

 付き合いの長さでいえば、コニーが適任だ。でも、剣の腕がまだ伴っていない。


 エディの指導を受けて、めきめきと上達しているが、それでも専属護衛にするには、あと少し足りない。しかし、これまでたった一人でセレナを守ってきたというコニーの功績を、俺は高く評価している。


 セレナの実家で切りかかられた際も、コニーはセレナを守り切った。そして、タイセン国で誘拐されたときの判断も素晴らしいものだった。これらは、バルゴアの騎士たちの間でも、「よくやった」と褒め称えられている。


 俺は、顔を上げてセレナを見つめた。


「話は変わるが、もうそろそろセレナの護衛騎士を決めたいと思っている」


 これまでは、バルゴアの女性騎士たちがセレナに負担をかけないように、距離を取りつつ護衛にあたっていた。


 しかし、タイセン国と協力して毒の調査を始めると、予想外に危険なことに巻き込まれてしまう可能性がある。護衛がいることをはっきり周囲に見せておいたほうがいい。


 俺の言葉を待つセレナの表情は、どこか緊張しているように見えた。


「セレナの護衛騎士は、コニーがふさわしいと思う」


 パッと花開くような笑顔を向けられて、今はそんな場合ではないのにときめいてしまう。


「だが、今のコニーではまだ少し実力が足りない。なので、ひとまずバルゴアの女性騎士たちにセレナの護衛騎士になってもらい、コニーは見習いとして彼女たちから護衛の在り方を学んでもらおうと思う」

「はい」

「あと、コニーには来年に行われる騎士試験を受けてもらいたい」

「わかりました」


 どこかソワソワしているセレナは、コニーに会いに行きたいのだろう。


「セレナ、今の話をコニーに伝えておいてくれるか?」

「はい! リオ様、失礼します」


 部屋を出ていくセレナに笑顔で手を振ったあと、俺はエディを振り返った。


「バルゴアの役人がセレナに無礼を働いた件だが」

「ああ、モーリスだったっけ?」

「悪意はないが、隠し事をしているようだ」

「調べるか?」


 エディの問いに俺は頷く。


「そうしてくれ。調べる気はなかったんだが、アイリーン嬢の話を聞いて気が変わった。タゼア家に過剰な反応をした者は、調べたほうがいいだろう」

「わかった。騎士たちに指示を出しておく」

「頼んだ」


 エディと別れた俺は、父の執務室へと向かった。


 アイリーン嬢から受け取った手紙を父に渡した。内容は、俺宛ての手紙と同じようなものだった。


 予想通り、父は毒の協力調査に反対しなかった。そして、セレナの母や祖父に使われた毒の情報を、辺境伯の名で王家に要求してくれるらしい。


「だがな、リオ。こうなってくると、王家も何かしらの介入をしてくるぞ」

「というと?」


「あの毒の作り方を知る者は、危険すぎる上に巨万の富を得ることができてしまうからな。これからバルゴア領と王家とタイセン国は、協力関係でありつつ、お互いに毒を悪用しないように監視することになる」

「なるほど」

 父は俺を見て不思議そうな顔をした。


「リオは、こういう話は苦手だろう? 嫌にならないのか?」

「嫌ですよ」


 以前の俺なら、倒すべき敵が見つかるまで、父やバルゴアの役人たちに任せていた。


 なぜなら、人には得意なことと、そうではないことがある。考えることが得意な者が考えればいい。その代わり、戦闘は俺が引き受ける。それが正しい役割分担だと思っていた。


 今でもその考え方が間違っているとは思わない。でも……。

 俺は父を見据えた。


「目の前に命がけで守りたい人がいると、苦手なことでも、とりあえず頑張ってみようと思えます」


 セレナの笑顔を守れるのなら、なんだってできてしまう。


 ニッと笑った父は、無言でバシバシと俺の背中を叩いた。


「リオがそんなことを言う日が来るなんてな。おまえの成長は喜ばしいが、ひとまず毒のことはこちらに任せてほしい。今のおまえの最優先事項は、わかっているな?」


「もちろんです。俺が最優先にするのはセレナとの結婚式!」


 父が力強く頷いたので、俺もうなづき返す。これだけは絶対に譲れない。


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