033 利用価値? ②
「――その通りですが、半分正解で半分不正解ですニャ」
「え?」
ルイズレッドの言葉に対して、ロティは笑みを浮かべてそう告げた。その言葉に小首を傾げたルイズレッドは、ロティの目的が自分の監視と暗殺という予想を外れた事に目を細める。しかし、訝し気に向けられている視線に対して、ロティは肩を竦めながらルイズレッドに告げた。
「答える前に一つ良いかニャ?」
「何ですか」
「いつまでも裸体を晒してると風邪を引きますニャよ?」
「……」
指を差されたロティの言葉に視線を向けたルイズレッドは、自分が大浴場に居た事を頭から抜けていたようだ。そして大浴場に居るという事は、裸になっているのは当然の事で……ルイズレッドは自分がロティの前で裸体を晒している事を理解した。
普通の貴族令嬢であれば、裸体を晒す事に対して多少の羞恥心を持っている。ルイズレッドの年齢を考えれば、ロティがルイズレッドの状況を気遣ったと言っても過言ではないだろう。だがしかし、ルイズレッドは警戒態勢を解かず、ゆっくりと湯に肩を沈めて問い掛ける。
「……忠告は感謝します。ですが、貴女の目的がまだハッキリしてないです」
「私の事を存じてるのであれば、ここに居る目的も存じてると思ってたんだけどニャ。私の勘違いかニャ?」
「私は貴女じゃありません。それに貴女の事を知ってると言っても、ほんの一部しか知りませんよ。だから私は貴女を警戒しますし、貴女の動きを観察し続けてるんですよ」
「……(確かにこのお嬢様、凄いかもしれないニャ。私の指先から重心の位置、僅かな呼吸のリズムにすら反応してるニャ。あの目は危険ニャ、ライル様はこの才能を見抜いたって事なのかニャ?分からない事だらけニャ)」
ルイズレッドの視線が動いている様子は無い。しかし、ロティの僅かな動きを見逃す様子は無い。その気配を感じ取ったロティは、感心すると同時にルイズレッドがただの令嬢ではない事を警戒し始める。
「答えるつもりが無いのでしたら、とりあえず浴場から出てくれませんか?」
ゆっくりと話す必要がありそうですし、とルイズレッドは肩を竦める。その言葉に同意したロティは、大浴場から廊下に出てルイズレッドを待つ事にした。その間、ロティはルイズレッドに利用価値があるのかどうかを考え始めたのである。