5 主人公補正の前ではいかなる殺人技でも死なない
紫色のオーラを浴びて、先ほどの構えのままで店長は頭を左右に振る。
「あら? あのオーラを避けようと思っても、体が固まったままだったわ。何かがまとわりついている感じ」
店長は状況に疑問を浮かべる。
この大剣には切った相手を鈍らせる効果があるが、それの発展した効果が金縛りとして出たのだろうか。
アンクルにも分からないが都合のいい誤算である。
「この力は今まで散った者の意思だ、楽園を作り上げるよう俺に託したものの……意志の重みだ」
その起きたことの理由を託したものの意思と決めて、アンクルは告げる。
正直言えば、こちらになぜ起きたかは分からない。
散っていった見方の意思も感じない気がする。
きっとこうだろうとの憶測とかっこいいからとの理由で金縛りが起きたと考える。
アンクルは大剣を振り上げて背後にもっていく。
それに応じて、背後の人型も自身の影のように動きをまねる。
人型のオーラも大剣のような影をオーラとして握っていた。
「やばいわね」
「不思議と大きな恨みはお前にはないが、これで終わりにする」
状況についての店長の言葉の後に、終わりの言葉を告げる。
振りかぶった大剣を真正面で叩き切る。
人型のオーラもまた同様に店長へと大剣のオーラを振り下ろしたのだ。
未だに動かない店長。
大剣のオーラが頭上に落とされた。
「あ、何とかなりそうだったわ」
その言葉と共に店長は大剣のオーラに拳で対抗する。
金属が互いにぶつかる音。
ひびが入る音が聞こえる。
「な? どうやって金縛りを解いた?」
「50%の本気と10%の気合で」
「何!? というか、残りの40%はなんだ!?」
「特になし、しいて言えば余裕かも知れないわ」
「嘘おぉ!? 勝ち目ない臭いですよね? これ?」
質問に店長が答えると、アンクルは驚きを声に出す。
「あらあら、あなた面白いわね。これからあっくんって呼びたくなっちゃうわ。広めたいほどに」
「色々とヤバイんで、それはやめてください」
「そんなこと言わないでほしいわ。あなたなかなか行ける感じだし」
「え? そうですか? そう言われると悪い感じしないな……」
店長からの色々な評価に不思議とアンクルは嫌な顔が出来なかった。
そして、ひびが自身の出したオーラに入っていることも知らず。
「今のあなたはどんなことしても死にそうにないオーラがあるの」
「……え゛!?」
店長の宣告、驚くアンクル。
その言葉は死刑宣告よりもひどいもののように聞こえてしまう。
「それこそ、私が何をやろうともね」
「……それはやばそうですよね」
「大丈夫。絶対に死ぬことはないから、あなたの体を信じなさい」
アンクルの確認の声に、店長は話す。
変な根拠を挙げて心配ないと言われても様々な意味で困ってしまう。
その直後に、アンクルの出した紫色のオーラが破片となって四散した。
勝機が薄くなっていることが分かってきた。
「やべえ! これ絶対降参した方がいい気もしてきた!」
「それでも男でしょ? さっきの言葉を撤回しないの」
「そ、そうだ。まだ引くわけには……」
「そうよ。今までのあなたの仲間のために、私のとっておきの技を耐えてみなさい」
「俺の仲間のためにサンドバックになるんですか!? やだー!!」
店長の説得にアンクルは拒否感を出す。
説得がサンドバックになることだ、いくら魔王でもそれは嫌だった。
にもかかわらず、店長は瞬時にアンクルの懐へと入る。
「ところで、アロガントと神威でどっちがいい?」
「あ、じゃあアロガントの方が大丈夫な気も……あ、なんで答えたんだ?」
「よろしい、じゃあアロガント行ってみましょう」
アンクルは不意に答えてしまうと、店長はその答え通りにした。
その後に店長は腹を突き出して、こちらは腹に当たった後に真上に飛ばされる。
真上に飛ばされアンクルを店長は追うように飛びあがり、更にもう一撃と腹の突き上げをこちらに当てる。
自身は追い打ちを受けて、さらに上に飛ばされる。
大剣はすでに手から離れていた。
床に着地した店長はもう一度追うようにアンクルへと飛びあがる。
こちらは何もできずに追いつかれた店長に背後から腕を掴まれた。
「え? 何を?」
「こうするの」
アンクルの疑問に店長の言葉。
直後、アンクルの腕を首の前に交差するように店長は持っていく。
さらにと店長は自身の膝の裏をアンクルの首と、片足に絡めた。
「んぐぅ……」
店長が絡めた手足をアンクルの後ろへと引っ張ると、アンクルのくぐもった声が上がる。
あまりの痛さに骨が折れたのかきしんだのかも分からなかった。
こちらは力にも自信があったのだが、その力さえも粘土を曲がられるかのように容易く抑えられる。
「そして……これでラスト!」
その言葉と共に店長はアンクルの背中と自信の背中を向かい合わせる。
次に店長はその状態でこちらの両肩を掴み、両足も足に絡めた。
落下を始めると、店長の背がアンクルの背を覆う。
落下の勢いは次第に勢いを増して、地面との距離も近づく。
アンクルは言葉の一つさえも抵抗の行動が出せなかった。
「アロガントスパーク!!」
店長が掴んだアンクルの肩と膝を床に叩きつけた。
周囲に轟音が鳴り響いて、かけらや塵をまき散らす。
自身で今まで一度も味わったことのない激痛が走った。
少しした後に絡みを解いて、店長は距離を置く。
「よし、時間も大丈夫ね。ここから帰る時間を換算しても……何とか就業時間内に終わらせたわ」
店長の独りごとにアンクルは何も返せなかった。
あれほどの攻撃を受けても何とか生きてはいたも、話す気力はなかった。
「あとはこの魔王様を神様に連れていけば、認めてくれるわよね。よし……一緒に連れて来られた店員もこれで帰れるわ」
店長は呟きつつ、アンクルの肩を掴む。
その中で、アンクルは心で言葉を出した。
(こんな訳も分からない人に魔王城がめちゃくちゃされるなんて……)
アンクルはこのやられた現状を呟く。
そして結論をこう心の言葉に出した。
(もし生きていたとしても……引きこもるしかないじゃないか!!)
それからアンクルは店長を呼んだ神様へと連れて来られた。
これには神様も驚いていたようだ。
何せ、召喚して一日もせずでボコボコにした魔王を連れてくるとは思わなかったためだ。
その後に魔王は部下全員をおとなしくするように誓うことになる。
魔王が暴れているような噂があればまた店長が来ると脅されていて、こうせざるを得なかったのだ。
これが魔王が引きこもって、モンスターがおとなしくなった経緯となる。
店長にも謝礼があったと聞くが、その内容まで聞く気力はなかった。




