4 魔王様だって意地を張りたい
倒れた玄老師の元へと急いでアンクルは駆けつける。
「みゆちゃん! 大丈夫か!?」
「本名で呼ぶのは……やめてくだされ……」
「もういいから、安静にしていてくれ」
玄老師の弱った言葉にもういいとアンクルは告げる。
息はまだあるようで何よりであった。
ちなみに、魔導玄老師の本名はみゆであり、たまにアンクルが口走ってしまうのだ。
その空気の中で構わずと離れたところから店長は言葉を出す。
「ごめんなさいね。あなたたちに恨みはないけど、こうでもしないと帰れないから。という訳で魔王様よ、次は」
店長は悪気の全くない言葉を出した。
怒りはあったが、そこまで大きいものはない。
玄老師を離れたところに丁寧に運び、アンクルは店長を見据える。
「いいだろう。ここで我も下がる道はない。相手をする」
その言葉と共にアンクルは紫色に輝く手で自らの周囲を払う。
紫色の光はアンクルの肩から下を覆うと、直後にアンクルはその光を払う。
光が取り除かれると、アンクルは鎧と大剣をまとっていた。
この鎧はあらゆる物理攻撃と魔法攻撃を無効とする。
さらに、大剣は切った人間に対して一日中重みで動きを鈍らせる効果のあるもの。
そして、こうアンクルは告げた。
「モンスターの楽園はそこまで来ている。ならば、お前をこの刃で下すのみ」
アンクルは剣を店長へと向けて言葉を告げる。
その直後、店長はすぐに距離を詰めてきていた。
アンクルと距離が離れていたにもかかわらず。
「やあっ」
「ぐほあ!」
声とともに放った店長のパンチ、それはアンクルの腹に命中した。
この鎧を受けてダメージを受けたことがないことから、自身の声にも予想外の色に染まっている。
腹を抑えてアンクルは膝を折ってしまった。
「あらあら、大層な鎧もなんだか効くみたいね」
「く……この鎧に物理攻撃が効いたのは初めてだ、効かなかった攻撃は数余多であるのに……」
「あらあら、初めて奪っちゃた、私が? 初体験の感想は?」
「めっちゃびっくりです。いや! それよりも、これで終わりでないぞ!」
店長の質問に、ついアンクルは答えてしまう。
自身は戦闘続行を告げてすぐに立ち上がり、刀を構えた。
そして、大剣を店長目がけて片手で振った。
大剣の斬撃を店長は最小限の動きでかわす。
「そんな大きな刃を軽々触れるのは凄いわね。流石、魔王様」
「あ、ありがとうございます。って、敵にお礼を言ってどうするんだ! 俺は!?」
「芸人みたいなことしちゃってー」
「言うな! 魔王になっても芸人体質が抜けないんだよ!! 俺ってば!」
店長からの煽りのような言葉に、アンクルは言葉を返す。
自身の言う通り、威厳のある魔王として基本的に振るっているが、リアクションが変という根っこがどうにも抜け切れてない。
魔王になる前からこれは結構有名であったので、さりげなく悩みの種でもある。
アンクルの刀での横薙ぎの後、店長は少しの動きでかわす。
動きからも余裕が見てとれる。
「そういえばさ。刀持った子の技って避けれるの?」
「その技は……っと、言ってどうするというのだ?」
「こうするの」
アンクルは避けられないとの言葉をこらえると、言葉と共に店長は指先を伸ばして片手を後方に延ばす。
さらに次の技名を店長は放った。
「無尽の獄刀、手刀バージョン」
そう言って、店長は手刀を連続で放つ。
その手刀はヨグロの放った無尽の獄刀を手刀に置き換えたようなもの。
転属の手刀にアンクルは半分をかわせたが、残りは受けてしまう。
鎧の物理無効が働いてはいるも、それでもダメージは少しながらあった。
「そ、その技はヨグロの技! なぜそれを使えるのだ?」
「あらあら、ごめんなさいね。拳法を極めて、水影心という技を使えるようになってね。それは一度見た技なら魔法でない限り使えるし、その上に効かないのよ」
「なに? ならあのパンチも誰かから見てか?」
「漫画で見た技なのよ、拳圧と五発パンチの方は。見よう見まねでやってみたら、あっさり使えちゃって」
アンクルからの疑問に何の苦もない表情で店長は答える。
無茶なことを涼しい顔でやってのけるこの店長は想像以上に手ごわかった。
「く、なかなか手ごわい……」
「あらあら、ごめんなさい。避けるの大変そうね」
「だが、まだ負けてはいないぞ。魔王の力はこんなものでは」
「じゃ、もっとすごいの避けてみて、FPMP!」
アンクルの言葉に店長はついでと攻撃を仕掛ける。
その攻撃は同時に五発の拳が飛んできて、すべての命中が同じタイミングだと予知できた。
更にその拳はこちらが避けることのできない速さで、自身に五発の拳が命中してしまう。
「ぐほあ……」
拳に飛ばされたアンクルはのけぞりつつ飛ばされて、背中から着地する。
「どう? 降参するならこれ以上痛い目を見ないわ。でも、痛い目見てもいいのよ」
店長は降参を勧めようとした、拳の構えは解かずに。
あのFPMPは無尽の獄刀の倍のダメージがあり、今までの経験上このダメージの経験はなかった。
そのダメージがアンクルに重みとしてのしかかっている。
「まだだ……この程度で降参など……」
しかしと、アンクルは手を床に付ける。
手に力を込めて上半身を浮かせるも、一度手が滑って姿勢を崩してしまう。
それでもと再び手を床に付けて、立ち上がろうとした。
「倒れた仲間にも……俺のために道を託して果てた仲間に、そして、俺の見えないところで散っていった仲間のためにも」
更にと大剣を立つときの支えにもして、アンクルは今までの仲間のことを言葉に出した。
店長が知るはずもない、アンクル自身のために道を託した仲間たちのため。
それのために降参などできやしないのだ。
アンクルが立ち上がると紫のオーラが大剣から湧き上がる。
そのオーラは自身の後ろに大きな人型をかたどっていた。
「楽園の道は! 潰えてはいけないのだ!!」
アンクルが大剣を振るう。
同時に後ろの紫色の人型の影が紫色のオーラを散らす。
避けられなかった店長はそれを浴びることとなった。




